CL “SPICY”


天野「4曲目はCLの“SPICY”。CLことイ・チェリンは、2016年に解散したアイドル・グループ、2NE1の元リーダーですね。この“SPICY”は、彼女が10月5日(金)にリリースするソロ・デビュー・アルバム『ALPHA』からのファースト・シングルです」

田中「CLの緩急自在なフロウに痺れる、超パワフルなラップ・ソングになっていますね! 〈彼女はソースを手に入れた/それは激スパイシー/もっとも高く飛ぶアジア人を見ていな〉と、セルフ・ボースティングをしているラインがめちゃくちゃかっこい。やたらとハイパーでアグレッシヴなトラップ調のこの曲、バウアー(Baauer)がプロデューサーに名を連ねています」

天野「なるほど。どうりでバッキバキのサウンドだと思いました。あと、冒頭のナレーションを担当しているのは、なんとジョン・マルコヴィッチ。ミュージック・ビデオでは、なぜか銅像にされています(笑)。CLの今後の快進撃が楽しみになる、女王の見事なカムバではないでしょうか」

 

Shenseea “Be Good”

天野「ジャマイカのキングストン出身で96年生まれ、現在24歳のシェンシーアは、ダンスホールの期待の星です。いまダンスホール・シーンはおもしろいアーティストがたくさん出てきているのですが、なかでもシェンシーアにはぜひ注目してほしいですね」

田中ヴァイブズ・カーテルショーン・ポールといった先輩たちからフックアップされ、クリスティーナ・アギレラタイガスワエ・リーやヤング・サグらアメリカのポップ/ラップ・シーンのスターたちとも共演してきたそうですね。しかも、先日開催されたカニエ・ウェスト『Donda』のリスニング・パーティーの3回目に出演。アルバムでは、“Pure Souls”と“Ok Ok pt 2”の2曲に参加しているのだとか」

天野「そうなんですよ。意外で驚きました。ちなみに、『Donda』にはブジュ・バントンも参加していますし、レゲエ要素がちょっと入っているんですよね。それはさておき、シェンシーアについてです。彼女の新曲“Be Good”はゆったりとしたテンポのモダンなダンスホール・ナンバーで、プロデューサーはラシャン(Rvssian)、MRI、タノ(Tano)の3人。ラシャンはアメリカのラッパーにもビートを提供している、有名なジャマイカ人プロデューサーですね。“Be Good”にはラップやR&Bの要素も感じますが、パトワ語で攻めまくるシェンシーのディージェイイングがパワフルでかっこいい。シェンシーには、ぜひアルバムを作ってほしいです」

 

Griff “One Night”

天野「今週のラスト・ナンバーは、グリフの“One Night”。グリフには以前から注目していたのですが、意外にも〈PSN〉初登場です。英ワトフォード出身のシンガー・ソングライター/プロデューサーで、今年のブリット・アワードで〈Rising Star Award〉を受賞するなど、かなり期待されている新鋭です。6月にリリースされたミックステープ『One Foot In Front Of The Other』は全英アルバム・チャートで4位になりました」

田中「『One Foot In Front Of The Other』は、ベッドルーム・ポップ的な親密さ漂うソングライティングと洗練されたプロダクションをバランスよく融合させた傑作でしたね。この“One Night”は同作の延長線上でありつつ、さらに開けた印象を受けました」

天野「ビートがパワフルで、これまで以上にポップかつダンサブルな要素を強めていますよね。〈one night〉と繰り返すコーラスもキャッチーだし、踊れる! 夜、ふとした瞬間に心を翳らせる孤独感を歌ったというリリックは、コロナ禍のいま、リスナーの共感を呼ぶのではないでしょうか。この曲を聴いて、グリフの今後がますます楽しみになりました! 次世代ポップスターまちがいなしでしょう」