ひねくれ者たちのポップ、NRBQ『At Yankee Stadium』
――では、ここからは村越さん。
村越「この流れ的にNRBQの『At Yankee Stadium』(77年)で行きましょうか。2004年に紙ジャケで出たとき以来のCD化です。2004年版の長門芳郎さんの解説もそのままついていて非常に参考になりますし、対訳もついてます」

熊谷「このジャケは実際にヤンキー・スタジアムで撮影しているんですか?」
村越「そうですね。実はここ(観客席)にメンバーがちょこんといるんですよ。ヤンキー・スタジアムでのライブ盤のように思わせて実はライブはしてない。だけど、NRBQはそこにいるというシャレです(笑)」

──このアルバムには、ふたつ意味があると思うんですよ。大規模なスタジアム・ライブをコケにするような反骨心と、ビートルズはシェイ・スタジアムでのライブ盤があるので自分たちはヤンキー・スタジアムにする、みたいな。売り上げ面ではビートルズには遠く及びませんでしたが、内容はすごくポップです(笑)。
村越「僕はこのアルバムがNRBQの入り口でしたね。友達から勧められて存在を知りました」


中本「77年リリースなのに、新しい感じもします」
村越「売れてはないけど時代を超えていく感度があって、だから常に再発見されていくんだと思います。カバーもめちゃめちゃやるけどオリジナルのいい曲もあるし。NRBQを初めて買われる方には絶対おすすめです」
熊谷「とりあえずライブ盤じゃないよ、と(笑)」
コステロやスプリングスティーンに並ぶグラハム・パーカー『Heat Treatment』
──続いては、グラハム・パーカーのセカンド『Heat Treatment』(76年)。

村越「パブロックの流れで僕は出会いました。彼自身は、パブロックというより、もっとR&B的。ザ・バンドに憧れたイギリス人の流れとかがある」
熊谷「このアルバム、プロデューサーがジョン・マット・ランジなんですね。僕は彼が作る音がすごく好きなんで、聴いた瞬間にそうじゃないかと思ったんです。カチッカチッとピースをはめていく感じのプロデュースで」

──グラハム・パーカーは70年代には日本ですごく人気があった人ですが、最近はあんまり聴かれてないですね。もっと再評価されてほしいです。
村越「ロッカーとしては、エルヴィス・コステロ、ブルース・スプリングスティーン、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースとかと同じカテゴリーに入るんですけどね」
チャラいけど野心家、ロバート・パーマー『Some People Can Do What They Like』
──最後はロバート・パーマーのサード『Some People Can Do What They Like』(76年)。

村越「ジャケットが、相変わらずチャラい」
中本「絶対おねえちゃんと一緒にいますよね(笑)」

村越「このジャケでは、野球拳的なことをトランプでやってるらしいんですよ(笑)。
でも中身は、AOR的な曲もちょっとありつつ、前回紹介したファースト(74年作『Sneakin’ Sally Through The Alley』)、セカンド(75年作『Pressure Drop』)の流れでリトル・フィートの面々が参加してますし、基本的にはリズム推しの曲が多くてかっこいいです」
──前回はロバート・パーマーのバンド時代(ヴィネガー・ジョー)も出たし、今回6タイトルが出て85年の『Riptide』まで彼のソロが全部揃うんですね。彼の歩みを追うと、スワンプ、ニューオーリンズ、リトル・フィート的なファンク、AOR、コンパス・ポイント・スタジオ、ニューウェイブ、パワー・ステーションと、〈いけてるやつ〉の狙い目の変遷がわかる気がします。2003年に心臓発作で亡くなってしまいましたけど、今も生きていてキャリア総括のライブとかをやったら凄かったでしょうね。
熊谷「でしょうね。ゲストがすごそう」