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Gretel Hänlyn


天野「英・西ロンドンの19歳のシンガーソングライター、グレーテル・ヘンリンことマディ・ヘンライン(Maddy Haenlein)。彼女は、ムラ・マサ(Mura Masa)のシングル“2gether”(2021年)のリードシンガーとして注目を集めました。独特のハスキーボイスが、若くして成熟と個性を感じさせますよね。16歳の頃はカート・コバーンの娘フランシスから影響を受けて、彼女のミドルネームを取って〈マディ・ビーン(Maddy Bean)〉として活動していたのだとか。ムラ・マサやジャドゥ・ハート(Jadu Heart)と制作した3曲のシングルは、そんな彼女のオルタナティブロック感がベッドルームポップなどと融合されていて最高。今年リリースされる予定だというデビューEPが楽しみです!」

 

Lime Garden


田中「次は英ブライトン出身の4人組、ライム・ガーデン。彼女たちについては、昨年6月にこの連載で“Sick & Tired”を紹介しましたね。UKインディーにおいてすごく影響力のあるメディア『So Young Magazine』が運営するレーベル〈So Young〉からのリリースということでも、注目を集めています。サウンド的には、90年代のオルタナ/ローファイや80年代のニューウェーブからの影響が色濃いギターロック。ただ、いずれの曲もサイケデリックなフックがあったり、メロディーはムーディーだったりと、バンド特有の魅力を感じさせます。個人的には、2021年のシングル“Pulp”で聴けた激ダンサブル路線がさらに発展されることを期待したいところ」

 

Lucy Blue


田中「アイルランドはダブリンを拠点に活動しているルーシー・ブルー。彼女は、憂いを帯びた歌声と穏やかなフォークギターの音を基調にしたメランコリックなポップソングを得意としています。先週リリースされたばかりのニューEPは『Suburban Hollywood』=〈郊外のハリウッド〉というタイトルで、ダブリン郊外のありふれた生活のなかにあるハリウッド的=キラキラとした瞬間を歌にしたのだそうです。今後、アイルランドの市井の人々にとっての〈魂〉となる歌を作り出す可能性を持ったシンガーソングライターだと思いますね」

 

Nia Archives


田中「ニア・アーカイヴズは、英リーズ出身のDJ/プロデューサー。彼女は、ジャングルシーンに現れた新世代だと言えるでしょう。UKのアンダーグラウンドなダンスシーンを紹介するプラットフォーム〈Keep Hush〉でのDJ動画を観る限り、DJとしてもとても優れているなという印象です。DJ中にめちゃくちゃ飛び跳ねて踊るのも素敵ですね(笑)。彼女自身のオリジナル曲は、ジャングルを基調にしつつ、そこにみずから歌うネオソウル的なメロディーやレゲエっぽいフロウを乗せたもので、ポップソングとしても受容できるものになっています。クラブシーンとポップフィールド、どちらからも支持を集めるおもしろい存在になるんじゃないかと、期待しています」

 

Nukuluk


田中昨年10月の〈PSN〉で紹介したヌクラクは、英サウスロンドン発のヒップホップバンドです。現在はドラマーやベーシスト、キーボーディストを含む5人組で、中心になっているのはボーカリストのシド(Syd)のようですが、映像もバンドみずからが手がけるなど、〈アーティストコレクティブ〉と呼んだほうが的確かもしれませんね。彼らの曲を聴くとモニカ(Monika)によるエキセントリックなラップが耳に残りますが、音楽的にはダブステップやビートミュージック以降のトリップホップという感じで、ダークでディープなサウンドが強烈。日本のyahyelや、んoonと併せて聴けそうなバンドですし、今後どういうふうにサウンドを進化させていくのかが楽しみです」