時代を越えてニュー・タイトルが続々と登場してくるソウルの世界。たとえ現実が地獄であろうと、音の中は天国! ってことで、今回は2021年の収穫を総決算しておきましょう。さまざまなリイシューや発掘盤など膨大なリリースの宝の山から、いまこそ聴いておきたい珠玉のアルバムとは!?
旧年中はお世話になりました。ってことで、恒例のソウル復刻&発掘の個人ベスト、2021年版です。アレサ・フランクリンの伝記映画「リスペクト」が話題になったこの年は、かつて本連載でも取り上げたラベルのサラ・ダッシュやギャップ・バンドのロニー・ウィルソン、ステイプル・シンガーズのパーヴィス、クール&ザ・ギャングのデニス・トーマス、シュープリームスのメアリー・ウィルソンといったレジェンドが逝去。ロイド・プライスやジョー・サイモン、マーヴェレッツのワンダ・ヤング、ジェイムズ・ピューリファイ、JB一家のダニー・レイやメルヴィン・パーカー、ファイヴ・ステアステップスのジェイムズ・バーク、元ブレインストームのデオン・エスタス、元スウィッチのトミー・デバージ、メルヴィン・ヴァン・ピーブルズら忘れ難い面々もこの世を去っています……。
そんな思いはさておき、いつ生まれた曲であろうと、その作品に初めて出会うリスナーにとってはそこがナウなリアルタイムなわけで、そう考えればやはり2021年も注目すべき復刻や発掘は多々ありました! *bounce編集部
2021年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/林 剛

伝記映画/ドラマ、ライヴ・ドキュメンタリーの公開でアレサ・イヤーとなった2021年。映画「リスペクト」の公開に合わせて発表されたこの4CDボックスは、黄金のアトランティック期(再発が遅れていた同社後期の曲も!)を中心に、ゴスペルを吹き込んだ初期のJVB、ジャズやブルースを歌ったコロムビア、クロスオーバー化したアリスタ、そして晩年の音源まで、名曲で辿る女王のストーリーだ。別テイクやデモ、TVや式典における伝説の名演も収録。約5時間の長編ドラマを見終えた気分になる。

SOUTH SHORE COMMISSION 『South Shore Commission』 Wand/OCTAVE(1975)
セプター/ワンドの再発で胸躍った一枚。シカゴ出身のグループがフィラデルフィアとLAで録音した唯一のアルバムは、長らくCD化が待ち望まれていた。インスタント・ファンクが演奏したバニー・シグラー制作の豪奢なフィリー・ダンサー“Free Man”がガラージ・クラシックとして知られ、これを含めたシグマ・スタジオ録音曲がアップ、スロウともに際立つ。が、ディック・グリフィ制作のスロウでデビュー前のキャリー・ルーカスが歌うのも興味深い。シングル版や別テイクなどのボーナス音源も充実。

HODGES,JAMES,SMITH & CRAWFORD 『Early Years and Unheard Pearls 1970-1973』 Kent(2021)
メンバーの姓を冠した女性トリオで、たまにキャロリン・クロフォードが加わることもあったグループの初期録音集。元モータウンのミッキー・スティーヴンソンが主宰したピープルやMピンゴでのシングル、ラヴ・ン・スタッフ名義でプライドに吹き込んだリオン・ウェア作のアーシーな曲が並び、大量の未発表音源の中には表題に反して70年代中期頃の録音と思しきモダンな曲もある。ロニー・マクネア制作の“I'm In Love”など、同時期のシュープリームスやシスターズ・ラヴに負けず劣らずの快演揃いだ。

NAT TURNER REBELLION 『Laugh To Keep From Crying』 Philly Groove/Chrysalis Catalogue(2021)
〈ナット・ターナーの反乱〉を名乗ってブラック・パワーを誇示したグループがフィリー・グルーヴなどから出した曲を発掘音源も含めて収録した編集盤。デルフォニックス加入前のメイジャー・ハリスも歌った楽曲はフィリー・ソウル大流行前夜の熱気を孕んだ無骨なファンクやソウルで、フィリー・ダンサーの原型的なアップも登場。2019年に出された限定アナログの装丁や曲順を変更して一般流通となったこれは、7月に中心人物のジョセフ・ジェファーソンが他界したことで、彼の追悼作にもなった。

RON HENDERSON & CHOICE OF COLOUR 『Hooked On Your Love: Rare Tracks』 Pヴァイン(2021)
76年のチェルシー原盤作が人気を集めるグループの、70年代から80年代初頭の音源を整理し直した日本企画の編集盤。チョイス・オブ・カラー名義で72年に出した軽快なダンサー、ロン・ヘンダーソンのソロ名義で78年に発表したスウィートなスロウなどの既発シングルは流石に良く、初公開の音源も一部デモっぽい曲があるもののフィリー・ソウル風やモダンなミディアムなど完成度の高い曲が多い。掠れたバリトン系ヴォーカルも実に味わい深く、70年代ソウルの旨味が凝縮されている。

サセックスの国内再発では、オハイオ出身のヴォーカル・グループが72年に発表した唯一のアルバムが遂にCD化。エンチャントメントを手掛ける前のマイケル・ストークスが制作したデトロイト録音盤で、ファンキーで勇壮なサウンドや社会意識の高いメッセージも含め、サイケデリック・ソウルをやっていた同時期のテンプテーションズを意識していたのだろう。熱っぽいリードや重厚なハーモニーもテンプスに近いが、より躍動感がある。サセックス仲間のデニス・コフィと思われるギターも加勢する。

PASTOR T.L. BARRETT & THE YOUTH FOR CHRIST CHOIR 『I shall Wear A Crown』 Numero(2021)
ダニー・ハサウェイらに影響を与えた、シカゴはサウスサイドの牧師にして聖歌隊のリーダー。70年代に発表した作品は過去にも単体で復刻されていたが、スタックスやTK系列のゴスペル・レーベルから出されたアルバムも含めてニュメロがボックス化。近年、“Father Stretch My Hands”がカニエ・ウェスト、“Like A Ship”がリオン・ブリッジズにリメイクされるなどして再評価熱が高まる中での解説書付きの復刻は意義深い。モダンなシングル曲と教会でのサーモン実況を収めた編集盤も熱い。

ROBERT COTTER 『Missing You』 Tiger Lily/Wewantsounds/OCTAVE(1976)
税金対策レーベル発となる作品の復刻が目立つなか、76年にタイガー・リリーから発表されたこれも初CD化。マイルドな掠れ声で歌うNYロングアイランド出身のシンガーによるデビュー作で、2曲をシックの前身であるビッグ・アップル・バンドが演奏している。“Love Rite”と78年にノーマ・ジーン版が登場する“Saturday”がそれで、ナイル・ロジャースのギターやバーナード・エドワーズのベースはまだ個性が薄く、音自体もローカル然としているが、シックのブレイク前夜というだけで興味が湧く。

84年に極少プレスでオランダにて発表された際は〈NETWORK〉と表記されていたが、当初予定していたスペルに直して正規CD化。エムトゥーメイに参加したハワード・キングとレイモンド・ジャクソン、BB&Qバンドにいたケヴィン・ロビンソンらによるNYのスタジオ・プロジェクトで、デイム・ファンク以降に再評価されたようなブギー・ファンクが連発される。“Cover Girl”ではジョニー・ケンプが快唱。今回は8曲の未発表音源が加わり、キャミオなどに通じるソリッドなファンクをおかわりできる。

VARIOUS ARTISTS 『Satisfaction Guaranteed: The Sound Of Philadelphia Volume 2』 United Souls(2021)
名門フィラデルフィア・インターナショナル(PIR)の創立50年を記念する企画の一環としてUKでスタートしたボックス・シリーズ。PIR原盤のアルバムをオリジナルの品番順に8枚ずつCDで収め、当時を象徴する2曲から成る12インチや豪華解説本などを同梱したセットだ。最新版となるこの第2弾には、オージェイズやビリー・ポールらの名盤に加え、T・ライフが率いたスピリチュアル・コンセプトの73年作も収録された。異彩を放つフィリー流サイケ・ロックな同作は初CD化。これだけでも食指が動く。
2021年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれじゃ! 選・文/出嶌孝次

シュープリームスのモータウン入社からちょうど50周年だった2021年……ダイアナ・ロスが輝ける新作を出す一方、メアリー・ウィルソンはソロ作の配信リイシューに前後して急逝。そんなメアリーの『The Motown Anthology』が文句ナシの1位……と思ったら諸々の遅れで延期中のため、恒例のモータウン発掘コンピをピックアップしておきます。雑に配信だけされていた発掘音源も含むため完全なる初出曲はそう多くないものの、こういうアーカイヴは詳細がわかる形で残ってこそナンボです。

SLY STONE, THE VISCAYNES 『Yellow Moon: The Complete Recordings 1961-1962』 Ace(2021)
これまで『Precious Stone(In The Studio With Sly Stone 1963-1965)』(94年)と『Listen To The Voices(Sly Stone In The Studio 1965-70)』(2010年)に束ねられてきた、エイスのアレック・パラオによるスライ・ストーン史探求の最終章。スライが地元で組んでいたヴィスケインズやソロ音源などキャリア序章のドゥワップ~ロックンロールをコンパイルした一枚です。歌い手としてのクセも裏方としての敏腕ぶりも見えない時代ながら、無垢で無邪気なティーンエイジャーの煌めきに溢れています。

SHARON RIDLEY 『Stay A While With Me』 Sussex/OCTAVE(1971)
レーベル単位でいうとサセックスのリイシュー.シリーズ開始は大きなトピックで、クリエイティヴ・ソースやフェイス・ホープ&チャリティの世界初CD化も嬉しかったですが、後にタブーで残したガラージ・クラシック“Changin'”も名高いシャロン・リドリー初作の初CD化は個人的な目玉でした。ヴァン・マッコイの品格に溢れた名曲“Where Did You Learn To Make Love The Way You Do”が最高。同時代のアレサ・フランクリンを追いかけたレディー・ソウル佳作として聴くのもアリです。

CHUCK BROWN & THE SOUL SEARCHERS 『Funk Express』 Source/Raw Venture(1980)
サセックスの復刻シリーズでもソウル・サーチャーズ名義の2タイトルがリイシューされていたゴッドファーザー・オブ・ゴーゴーことチャック・ブラウン。こちらはそこから名義を変えて出した通算4作目のリマスター復刻盤で、冒頭のファンキーな“Come On And Boogie”から馬鹿馬鹿しくもパワフルな勢いがよく伝わるジャケそのまんまの音が飛び出してくるかのような素晴らしさ。ロウ・ヴェンチャーによるカタログ復刻も揃ってきてるので、いずれはチャックの功績もまとめたいところです。

T-Grooveの監修による世界のディスコ復刻シリーズも定番の名作から超カルトなもの、ツボを押さえたコンピまで注目作がいろいろ出ていて手が伸びました。そのなかでも世界初CD化となったこちらはソウル目線でも好内容のブツで、ソウル・シティ時代の『Searching For The Dolphins』(69年)や“Show And Tell”(74年)のヒットで知られるアル・ウィルソンがフィラデルフィアを詣でてMFSB/サルソウル・オーケストラと吹き込んだフィリー・ソウルの隠れ名盤です。安定の顔ジャケも良し。

KELLEE PATTERSON 『Turn On The Lights -Be Happy』 Shadybrook/OCTAVE(1977)
ブラック・ジャズでの人気作『Maiden Voyage』で著名な女性シンガー、ケリー・パターソンの2~4作目リイシューも密かに注目したいトピックでした。バリー・ホワイト“I'm Gonna Love You Just A Little More, Baby”などソウル・カヴァー満載の2作目『Kellee』もエレガントな4作目『All The Things You Are』も抜群ですが、最高なのは初CD化となったこちらの3作目。ラリー・ファーロウの仕掛けた明るく上品なグルーヴが快活なジャケによって魅力を増して響いてくるような爽快作です。

WILLIAM STUCKEY 『Love Of Mine』 Symplex/Athens Of The North(1979)
レアな復刻/発掘シーンもどんどん奥底に入り込んでいって玉石混淆な状況ではありますが、みんな大好きなAOTNが発見したこちらは鍵盤奏者のウイリアム・スタッキーがひっそりリリースされていた激レアかつ中身もナイスな好盤でした。79年という時代に右往左往した結果なのか、いろんな先達を連想させる華麗なディスコやファンクとサザン・ソウル作法が無骨に隣り合いつつ、いま聴けばモダン・ソウルの“The First Time”を筆頭にどれも純粋に良曲揃いです。

ナウ・アゲインのいい仕事2021。モノクロのジャケも秘宝感を高めているこちらの作品は、『Black Gold』(77年)で知られるジョージア州メイコンのバンド、マイティ・シェヴェルズが別名義で残していた77~79年の録音をコンパイルしたもの。瑞々しいダンス・ナンバー“That's The Way”をはじめ、洗練されたグルーヴィーなファンクもローカル産品ならではの泥臭さと純真を纏ったミッド~スロウも素晴らしいです。ケニー・ドープがエクステンドしたリミックスも収録。

STACY LATTISAW 『The Cotillion Years 1979-1985』 Robinsongs(2021)
12歳でデビューし、同年齢のジャネット・ジャクソンや同時代のホイットニー・ヒューストンを意識させられた部分もありつつ10年ほどで世俗音楽の世界から引退した早熟な天才少女。これはコティリオン時代7枚をまとめたボックスで、ジョニー・ギルとのデュエット盤も含みますが、ヴァン・マッコイ最後の仕事のひとつでもある初作『Young And In Love』(79年)が聴きものとなりましょう。箱モノはあるとなぜか欲しくなってしまうので、モータウン時代の3枚もまとめて出してほしいものです。

ATLANTIC STARR 『Always:The Warner-Reprise Recordings』 SoulMusic/Solid(2021)
80年代を下るほど普通のメジャー・ヒット作品がリイシュー市場であまり顧みられなくなるという状況は変わらずですが……こちらはファンク・バンドからブラコン時代に照準を合わせて変貌していった名グループの、ワーナー~リプリーズ時代の3タイトルをパックしたセット。バーバラ・ウェザーズの最終作で“Always”を生んだ『All In The Name Of Love』(87年)はもちろん、女性リード・シンガーがアルバムごとに変わった時期だけに、都会的なトレンドの変化も合わせて改めて楽しめました。
リイシューが明けてどんな気がする?

THE BRIEF ENCOUNTER 『Get Right Down: The Complete 70s Singles And More』 Pヴァイン(2022)
新年になりまして、いろんな意味でどう生きるべきか悩みどころではありますが、それでもリイシューの道は続いていくのです。……ってことで、まずはノースキャロライナの大所帯ヴォーカル&インストゥルメンタル・グループ、ブリーフ・エンカウンターの決定的な編集盤『Get Right Down: The Complete 70s Singles And More』(Pヴァイン)を大推薦。2枚のアルバムはもちろん最近ではLP復刻や7インチでのカットも大人気の無限ループ状態なですが、こちらは70年代にセヴンティ・セヴン/サウンド・プラスとキャピトルに残したシングルをすべて網羅し、さらには再結成して2010年に発表した2曲、ATONの7インチ化によって脚光を浴びた激レア曲までもがこの一枚で揃ってしまうという優れものになっています。これはマストで。


お次はGMG所有カタログの復刻企画シリーズ〈ATLANTA ORIGINAL SOUL COLLECTION〉から数タイトルを推薦します。まずはキング・ハンニバルの73年作『Truth』(Aware/OCTAVE)が世界初CD化。これはマイティ・ハンニバルことジェイムズ・ティモシー・ショウが改名して残したアルバムで、渋みに溢れるディープ・ファンク名盤という解釈で再評価を集めている一枚となります。もう一枚はジョージア・ローカルのヴォーカル・グループ、トラック・フォーが80年にリリースした『Retrospect』(Wonder/OCTAVE)の世界初CD化で、こちらも日本の一部ソウル・ファンの間ではお馴染みだった作品で、中身は何とも言えない香りのするジャケとはやや印象の異なるスウィートでストレートなソウルを聴かせてくれています。

さらにジャケのインパクトでいえば、セシル・ライドの80年作『Stone Free』(Aladdin/Pヴァイン)もおよそ15年ぐらいぶりにリイシューです。佇まいだけ見るととても80年代の産品とは思えませんが、いい感じにリズミックな80年代初頭らしいモダン・ソウルが楽しめる中身は保証付きです!

VARIOUS ARTISTS 『Tickets For Doomsday: Heavy Psychedelic Funk And Soul, Ballads & Dirges 1970-1975』 Now-Again(2021)
最後に、まだまだ続くイーゴン監修の発掘コンピ『Tickets For Doomsday: Heavy Psychedelic Funk And Soul, Ballads & Dirges 1970-1975』(Now-Again)を紹介しておきましょう。インドネシアやアイスランド産なども含む異常なディグの成果は震えがくるレヴェルで、サイケデリック・ロック好きにもオススメしたい好内容であります。 *出嶌孝次