全英2位に輝いてグラミーとブリット・アワードにノミネートもされた名作『A Hero’s Death』から2年、みたびダン・キャリーと組んだサード・アルバムはアイリッシュという自分たちのアイデンティティーを問う作品だという。自然界にいるべき鹿(故郷のアイルランドでは絶滅危惧種だそう)が住宅の廊下に佇む様子を描いたジャケはそんなテーマや彼ら自身を取り巻く状況の表れなのだろうが、中身も過去2作と比べてさらにグッと成熟した作りになり、淡々とした歌唱や陰鬱さに覆われた演奏の輪郭もバンドの心象や現在のモードを如実に表明するかのようだ。先行カット“Jackie Down The Line”にあったスミス/モリッシー感は“Big Shot”や“I Love You”などにも顕著で、出口のなさげな“Nabokov”で終わるのも最高。