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共感し合う羊文学とのコラボ曲“OH HEY”

――共作でいうと、羊文学とのコラボレーション楽曲“OH HEY”が5月にリリースされています。実現した経緯について教えてください。

羊文学, LÜCY 『OH HEY』 F.C.L.S.(2022)

  • TOWER RECORDS MUSICで聴く

「お互いのInstagramをよく見ていたんです。音楽的にも共感し合える存在だったので、チャットでコラボレーションを提案しました。

その後、正式にプロジェクトとして動き出してからは、間に通訳も入れて、オンラインでのミーティングやテキストでのやりとりを重ねながら、作り上げたんです」

――コラボする前から、羊文学の音楽が好きだったんですか?

「はい、Spotifyでたまたま流れてきたのをきっかけに知り、塩塚モエカ(ボーカル)の温かい歌声に惹かれました。その後、歌詞の意味を知り、その力強いメッセージにも勇気づけられたんです」

――“OH HEY”の歌詞は塩塚さんとの共作ですが、どのような想いが込められているんですか?

「愛についてなのですが、これは恋愛に限らず、友人や家族に対しても感じられる類のものです。愛が深いと、自分が傷つくこともありますが、対象が家族の場合、別れるわけにはいかないですよね。彼らが何をしようとも向き合わないといけない。この感覚は友人や恋愛にも当てはまります」

――曲が完成するまでにどのくらいの時間がかかりましたか?

「メロディーと歌詞は私が既に書いていたので、そこまで長い期間ではないです。羊文学がアレンジを施して、歌詞の半分を日本語に書き換えるまでの工程に最も時間がかかっていると思います。結果的に迫力のあるロックサウンドに仕上がって感動しましたし、日本語詞も曲にとても合っていますよね」

――収録曲の“EYE(S)”のMVでは日本の俳優、松㟢翔平が主演/プロデュースを務めていますよね。将来的にはこのような国を越えたコラボレーションを増やしたいと思いますか?

「もちろんです。今回は初めてのことだったので、言葉の壁もあり、コミュニケーションで苦労した点は否めません。それでも、オンラインの作曲ツールを使うなど、最新のテクノロジーを導入することで実現したコラボレーションですし、そこには大きな可能性を感じました。あるいは、ツアーで海外を訪れた時に現地のアーティストと共作するのもいいかもしれませんね」

『LÜCY』収録曲“EYE(S)”

 

刺激とインスピレーションを得たヨーロッパツアー

――今年はヨーロッパツアーも実現しましたね。どの国を訪れたんですか?

「最初にリトアニアに行きました。自然が美しく、アーティスティックなグラフィティがたくさんあったのが印象的です。

その次に訪れたオランダでは本当の意味での〈自由〉を感じました。草の上で寝転がり、青空と雲を眺め、ピースフルな時間が過ごせましたし、誰も私のことを気にかけてなくて、それが心地よかったです。

その後、ベルギーに向かいました。教会の中で演奏し、浄化されるような気持ちになりました。食べ物がとても美味しく、屋外のレストランで食べていた時に、まるで中世にタイムスリップしたかのような不思議な気持ちになりました。とても楽しかったですし、想像力が刺激されましたね」

――このツアーが実現したきっかけは何ですか?

「スペインで開催されている〈プリマヴェーラ・サウンド〉です。オーディション枠があり、マネージャーが応募したことで、出演が決まりました。

それを契機に、リトアニアの台湾領事館が同国でのライブをブッキングしてくれたのですが、〈プリマヴェーラ〉との間に2週間のギャップがあったので、その間を埋める形で他のライブも決まっていきました」

――今回のツアーで、どのライブが最も印象的でしたか?

「やはり〈プリマヴェーラ・サウンド〉です。出演が決まるまで、この音楽フェスティバルについて知らなかったのですが、その規模の大きさと豪華なラインナップに驚かされました。

私が大好きなアーティストも多く、彼らのライブを観ることができることにも興奮しました。そして、観客がとても情熱的なんです」

――どのアーティストのパフォーマンスが印象に残りましたか?

デュア・リパ(Dua Lipa)は本当に素晴らしかったです。歌いながら踊っているのに息が上がっている様子がなく、何より歌が完璧なんです。人間離れしたパフォーマンス力に圧倒されました」

――今回のヨーロッパツアーでの経験は今後の創作の糧になりそうですか?

「多かれ少なかれ糧になっていると思います。何故なら、私はこれまで海外に行ったことがなかったんです。別の世界を目の当たりにして、私の中の何かが変わったのを感じました。

スマートフォンにはたくさんのメモが残っています。それらは電車に乗っている時など、ふとした瞬間、頭に浮かんだアイデアです」