ヘヴィでグルーヴィーなロックンロールを完成させたセカンドアルバム『Teatro d’ira - Vol. I』

そんな『Il ballo della vita』で地元でナンバーワンを獲得したほか、ヨーロッパ各地のチャートで好成績を残したバンドは、国内外を広くツアー。その後ロンドンに長期滞在しながら構想を練り、インスピレーションを受けて、十二分に時間をかけて完成させたのが、現時点での最新作であるセカンド『Teatro d’ira - Vol. I』だ。

MÅNESKIN 『Teatro d’ira - Vol. I』 Sony/RCA/ソニー(2021)

海外では〈ユーロビジョン〉開催の2カ月前に送り出した同作。3年分の経験値が飛躍的にアップした演奏力に表れ、ダミアーノだけでなくヴィクトリア・デ・アンジェリス(ベース)、トーマス・ラッジ(ギター)、イーサン・トルキオ(ドラムス)、各メンバーのプレイヤーとしての個性が強まってもいる。が、それ以上に(或いは〈それゆえに〉と言うべきか?)大きな前作との違いはやはり、〈ユーロビジョン〉のエントリー曲“ZITTI E BUONI(ジッティ・エ・ブオーニ)”に代表される、レッド・ツェッペリンほか70年代のロックバンドの影響を汲んだよりヘヴィな(ヘヴィネスと華を両立させた)サウンド表現だった。

『Teatro d’ira - Vol. I』収録曲“ZITTI E BUONI”

ほかにもガレージロック(日本盤には、収録曲のひとつ“I WANNA BE YOUR SLAVE”にガレージの祖イギー・ポップがボーカルを添えたニューバージョンも収められている)やグランジに接近する一方で、たっぷりとギターソロをフィーチャーした王道のパワーバラード(“VENT’ANNI(ヴェンタンニ)”)にも挑戦。彼ららしいグルーヴ感に、ダミアーノのマシンガンボーカルを受け止められるだけの音の厚みが備わっただけでなく、歌詞でも随所で反骨心をむき出しにしており、アティテュードを含めて完全にポップからロックンロールへと印象を塗り替えた感がある。

『Teatro d’ira - Vol. I』収録曲“I WANNA BE YOUR SLAVE”“VENT’ANNI”

 

世界の注目を受け、ロックを救う4人はどんな一歩を踏み出す?

あれから1年半、まさかのイタリアからロックを救うべく現れた4人への期待感は、彼らが収めた破格の成功からありありと読み取れるわけだが、5月にリリースしたシングル“SUPERMODEL”では、メインストリームの極みと言うべきマックス・マーティンやジャスティン・トランターとの共作も体験。これも予想の範囲内の展開ではあるものの、コラボレーションについても色々と考えるところもあったはずだ。果たして世界の注目を一身に集めながら、どんな一歩を新たに踏み出すのか。どう転ぶにせよ、遠からぬ将来届くはずのサードアルバムは間違いなく、キャリア最重要のステップになるだろう。

2022年のシングル“SUPERMODEL”

 


RELEASE INFORMATION

MÅNESKIN 『Teatro d’ira - Vol. I』 RCA/ソニー(2021)

『テアトロ・ディーラVol. I(来日記念盤)』ジャケット

『テアトロ・ディーラVol. I(来日記念盤)』封入特典ラバーバンド

■テアトロ・ディーラ VOL. I(来日記念盤)
リリース日:2022年8月3日
品番:SICP-6470~71
価格:3,000円(税込)
完全生産限定盤/日本盤オリジナルジャケット写真仕様/ボーナストラック5曲収録/解説・歌詞対訳付き/特製ラバーバンド封入

TRACKLIST
1. ZITTI E BUONI
2. CORALINE
3. LIVIDI SUI GOMITI
4. I WANNA BE YOUR SLAVE
5. IN NOME DEL PADRE
6. FOR YOUR LOVE
7. LA PAURA DEL BUIO
8. VENT’ANNI

日本盤ボーナストラック
9. I WANNA BE YOUR SLAVE (Måneskin & Iggy Pop)
10. FOR YOUR LOVE (LIVE @ROXY Los Angeles)
11. I WANNA BE YOUR SLAVE (LIVE @ROXY Los Angeles)
12. MAMMAMIA (LIVE @ROXY Los Angeles)
13. Beggin’ (LIVE @ROXY Los Angeles)

 

MÅNESKIN 『Chosen』 RCA/ソニー(2017)

リリース日:2022年8月3日
品番:SICP-6468
価格:1,800円(税込)
解説・歌詞対訳付き

TRACKLIST
1. Chosen
2. Recovery
3. Vengo dalla Luna
4. Beggin’
5. Let’s Get It Started
6. Somebody Told Me
7. You Need Me, I Don’t Need You

 

MÅNESKIN 『Il ballo della vita』 RCA/ソニー(2018)

品番:SICP-6469
価格:2,000円(税込)
解説・歌詞対訳付き

TRACKLIST
1. New Song
2. Torna a casa
3. L’altra dimensione
4. Sh*t Blvd
5. Fear For Nobody
6. Le parole lontane
7. Immortale (feat. Vegas Jones)
8. Lasciami stare
9. Are You Ready?
10. Close To The Top
11. Niente da dire
12. Morirò da re

 

LIVE INFORMATION
単独公演

2022年8月18日(木)東京・豊洲 PIT ※SOLD OUT
https://www.creativeman.co.jp/event/maneskin-ssextra/

SUMMER SONIC 2022
※マネスキンの出演は2022年8月20日(土)東京会場、2022年8月21日(日)大阪会場 
https://www.summersonic.com/

 


PROFILE: MÅNESKIN
マネスキンはダミアーノ・デイヴィッド(ボーカル)、ヴィクトリア・デ・アンジェリス(ベース)、トーマス・ラッジ(ギター)、イーサン・トルキオ(ドラムス)からなるイタリアはローマ出身、Z世代の4人組バンド。デンマーク語で〈月光〉を意味するバンド名は、デンマーク人とのハーフであるヴィクトリアがメンバーに頼まれていくつか提案した単語のなかで、一瞬のうちに彼らを魅了したのが〈マネスキン〉だったという。メンバーは小学校低学年からの知り合いで、一緒に音楽をやるようになったのは2015年から。結成当時はコルソ通りやコリ・ポルトゥエンシ地区といったローマの歴史的中心地の路上で通りすがる人々に向けてストリートライブを行い、パフォーマンスを磨いてきた。影響を受けたアーティストはブルーノ・マーズからアークティック・モンキーズを経て、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ハリー・スタイルズまでと幅広い。そのサウンドはロック、ラップ、ヒップホップ、レゲエ、ファンクの要素を多彩に織り交ぜたもので、フロントマン=ダミアーノのソウルフルな声によってまとめられていることが特徴。また、華やかなロックスター然としたステージ衣装も目を引く。2017年に発表の7曲入りデビューEP『Chosen』は、オリジナル曲以外にフォー・シーズンズ“Beggin’”、キラーズ“Somebody Told Me”、ブラック・アイド・ピーズ“Let’s Get It Started”、エド・シーラン“You Need Me, I Don’t Need You”などが収録され、彼らならではの魅惑的なアレンジが施されたカバーにも注目が集まった。母国イタリアでは2018年にリリースの初のスタジオアルバム『Il ballo della vita』がイタリアのアルバムチャートで初登場1位、トータル再生数は1億7,000万回以上を数え、アルバムはダブルプラチナを獲得。さらに、ヨーロッパツアーの全80公演中66公演が完売し、計14万人以上を動員した。2021年3月には現時点での代表曲“ZITTI E BUONI
”“I WANNA BE YOUR SLAVE”を収録したセカンドアルバム『Teatro d’ila - Vol. I』を発表。これまでに1億1,300万回以上再生され、2作連続となるイタリアのアルバムチャートで初登場1位、またアナログ盤のベストセラーチャートでも1位を獲得している。同作は、前作よりもバンドとしての一体感が増し、圧倒的な熱量を包括した作品となっている。セカンドアルバムのリリースと同時期の2021年3月にイタリアでもっとも権威ある音楽祭〈サンレモ音楽祭〉に参戦し、メンバーが作詞・作曲を手掛けた“Zitti e buoni”で優勝を果たす。また、5月には、アバ、セリーヌ・ディオンを生んだヨーロッパ最大の音楽の祭典〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021〉(5月22日決勝大会)でも同曲を披露し、見事優勝。毎年約2億人が試聴すると言われる〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト〉でイタリアのアーティストが優勝するのは31年ぶりの快挙となった。“ZITTI E BUONI”は優勝後わずか1日でSpotifyで400万回近くストリーミングされるなど、イタリアの楽曲として史上最多の再生回数を記録。その勢いはイタリアだけに留まらずヨーロッパ各国、アメリカ、そして日本にも広がり、世界中の音楽シーンを席巻する。さらに英語詞で独特のリズムがクセになる“I Wanna Be Your Slave”、デビューEP『Chosen』収録の“Beggin‘”も世界的ヒット曲となった。特にTikTok上の動画投稿がひとつのきっかけとなりヒットした“Beggin‘”は、SpotifyのグローバルTOP 50チャート(2021年7月6日付)でオリヴィア・ロドリゴ、エド・シーラン、リズ・ナズ・X、ドージャ・キャット、デュア・リパなど錚々たるアーティストがTOP 10に名を連ねるなか、堂々の1位を獲得。現在(2022年4月)までに全世界で10億回を超える再生回数を記録している。UKオフィシャルシングルチャート(2021年6月25日付)では、“I WANNA BE YOUR SLAVE”“Beggin’”が2曲同時にTOP 10にランクイン。これはイタリアのアーティストとしては初となり、〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト〉の優勝者でもあるアバやセリーヌ・ディオンでも成し遂げられなかった快挙を果たす(以降、6週連続2曲同時TOP 10入りを記録)。また、“I WANNA BE YOUR SLAVE”でロック界のレジェンド、イギー・ポップと共演するなど、新たな話題を提供。2021年10月にはグローバルブレイク後初となるシングル“MAMMAMIA”をリリース。バンドを取り巻く環境が大き く変更する最中で制作された同曲は、彼ららしいストレートなロックナンバーに仕上がっており、どこか皮肉めいた歌詞が現在の彼らを象徴。衝撃的な内容のMVも大きな話題を呼んだ。2021年10月13日に『Teatro d’ila - Vol. I』の日本盤CDをリリース。また、同時期に初となる全米プロモーションツアーを行い、数多くのメディアに出演し、全米に大きなインパクトを残した。さらにローリング・ストーンズのラスベガス公演のオープニングアクトにも抜擢された。ローリング・ストーンズのオープニングアクトといえば、常に注目の若手が起用されることが多く、これまでにもプリンス、ヴァン・ヘイレン、ボン・ジョヴィ、ガンズ・アンド・ローゼズ、レニー・クラヴィッツ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなど、名だたるアーティストが出演しており、彼らがオープニングアクトに起用されたということは、ある意味、いまもっとも注目すべきバンドであることが立証されたとも言える。全米プロモーションツアーの後、ヨーロッパ最大級の音楽授賞式〈2021 MTV EMA〉に出演。〈最優秀ロック賞〉〈最優秀グループ賞〉〈最優秀イタリアングループ賞〉の3部門にノミネートされ、〈最優秀ロック賞〉を受賞。イタリア出身のアーティストとして初めてグローバルなカテゴリとなる同賞を受賞し、コールドプレイ、フー・ファイターズ、イマジン・ドラゴンズ、キングズ・オブ・レオン、キラーズといった同部門にノミネートされた錚々たるメンバーから同賞を勝ち取るという快挙を達成。受賞スピーチでは「まず、ファンのみなさん、そして僕たちを応援してくれたみなさんありがとう! 大好きです! 僕たちの音楽では成功しないと普段言っていた人々は、どうやら間違っていたようだね」と語り、自分たちに批判的だった人々を皮肉まじりに表現する相変わらずのスタイルが話題に。またアメリカ最大の音楽祭の一つである〈アメリカン・ミュージック・アワーズ(AMAS)〉にも出演、ベストトレンディングソング部門にノミネートされた“Beggin’”をパフォーマンスした。残念ながら受賞とはならなかったが、圧巻のパフォーマンスを披露した。2022年に入り、全会場のチケットがわずか2時間でソールドアウトした2月からのヨーロッパツアー(15か国、全17公演)は、新型コロナウイルス感染症拡大のため延期となる。しかし、全米を含めたツアースケジュールを再発表。〈ラウド・キッズ・ツアー〉と名付けられたこのツアーは、10月31日のシアトル公演でキックオフされ、NY、サンフランシスコ、アトランタ、ワシントンDCといったソールドアウトの都市や、追加公演の決まったLAを回る。その後、2023年には、ソールドアウトとなったヨーロッパツアーに出発。英ロンドンのO2アリーナ、仏パリのアコー・アリーナ、独ベルリンのメルセデス・ベンツ・アリーナといったアイコニックな会場で公演をすることになっている。さらに、世界各国のフェスに続々出演が決定。先んじて4月には、世界最大のフェスの一つでもある〈コーチェラ・フェスティバル〉に初出演。オリジナル曲はもちろん、ブリトニー・スピアーズ、ストゥージズといったアーティストの曲の彼らならではカバーも披露し、バンドの音楽性の広さも見せつけた。ライブの最後には、ロシアによるウクライナ侵攻への反戦メッセージソング“Gasoline(仮)”を披露。同曲のパフォーマンス前にダミアーノが「Free Ukraine, fuxk Putin」と叫び、「独裁者が消え失せれば、平和が訪れる。君たちは機械じゃなく心ある人間だ。傷つけ合うのでなく共に助け合おう」と、チャップリンの「独裁者」を引用したMCを披露。この模様は全世界に同時生配信されていたため、会場のオーディエンスだけでなく、視聴者の間にさらなる反ロシアのムーブメントを起こすこととなった。5月には2022年初となるシングル“スーパーモデルSUPERMODEL”をリリース。ヒットメーカーのマックス・マーティンとの共作である同曲は、クールなロックサウンドにどこかシニカルな世界観が漂う、彼らの真骨頂ともいえるナンバーに仕上がっている。同曲のリリースを記念し、同月に母国イタリアで開催された〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022〉のファイナルで、このシングルをライブで初披露。彼らがグローバルチャートの1位へと大躍進するきっかけとなった、同コンテストでの優勝から1年を経ての出演は、まさに凱旋公演だった。また、バズ・ラーマン監督によるエルヴィス・プレスリーの伝記映画「エルヴィス」(7月1日日本公開)に、エルヴィスの“If I Can Dream”のカバーを提供。さらに〈ビルボード・ミュージック・アワード〉で〈ロックソング〉と〈ロックアーティスト〉の最優秀賞にダブルノミネートされ、フォーブス誌の〈ヨーロッパの30歳未満の30人〉にも選出された。新たなロックスターが不在の昨今、ロック復活の狼煙を上げてますます全世界的に勢力を増し、いくつものセンセーションを巻き起こしながら、マネスキンがこの時代指折りにエキサイティングなバンドとして今夏初来日する。ぜひ、この歴史的瞬間を見逃さないでほしい。