コラム

サックス奏者 松丸契が切り拓く新境地――石橋英子をゲストに迎えたセカンドアルバム『The Moon, Its Recollections Abstracted』が完成

サックス奏者・松丸契が切り拓く新境地――ゲストに石橋英子を迎えた2ndアルバムが完成

 先行配信されたシングル“Recollections Abstracted”を耳にして、ゆったりと移ろいゆく風景に記憶の影がまとわりついているようなサウンドに驚かされたが、アルバム本編はさらに予想を上回る内容へと仕上がっていた。

 本盤はサックス奏者/作曲家の松丸契によるセカンド・アルバムである。約2年前にリリースされた前作『Nothing Unspoken Under the Sun』では石井彰(ピアノ)、金澤英明(ベース)、石若駿(ドラムス)らBoys Trioと組んだカルテット編成を中心に、アコースティックで器楽的なジャズの延長線上にある魅力を放っていたが、今作では同じメンバーでありつつエレクトロニクスを大胆に取り入れ、エフェクトや多重録音も駆使するなど録音作品ならではの試みを数多く展開。さらにゲストとして石橋英子を迎えて歌モノも収録しており、ジャズという枠組みには収まりきらない新たな境地を切り拓いている。 

松丸契 『The Moon, Its Recollections Abstracted』 SOMETHIN’ COOL(2022)

 アルバムには2つのコンセプトが設けられている。1つは〈即興と作曲の対比と融合〉。例えば4曲目“didactic / unavailing”におけるドラムおよびサックスの即興性とピアノおよびベースの構築性の対比は特徴的だが、このコンセプトはアルバム全編を通じて様々なレヴェルで取り入れられているようで、中には正確無比に聴こえる幾何学的フレーズが即興的に演奏された箇所もあるという2曲目“Big Busy Lake, Bijireiku”のような楽曲もある。もう1つのコンセプトは〈具体化と抽象化〉だ。具体的に譜面に書き起こすことと抽象的な音として具現化すること――これは作曲/即興を別の側面から捉えることとも言えるかもしれない。

 全曲を松丸自身が手がけた初のアルバムでもある。起伏に富んだアルバム構成は、固有のテクスチュアを持つサックス・サウンドを紐帯としながら、ある種の物語のようにも進行する。それは情景喚起的にも響く。ただし、どの楽曲も譜面には還元できない抽象性の魅力を備えたサウンドであるだけに、聴き手が思い描くイメージや言葉の具体性は様々な方向へと開かれたものになるはずだ。

 


LIVE INFORMATION
アルバムリリースライヴ

2022年10月17日(月)東京・丸の内 コットンクラブ
1st show
開演:18:00
2nd show
開演:20:30
出演:松丸契(アルト・サックス/ソプラノ・サックス/エレクトロニクス)/石井彰(ピアノ/ローズ)/金澤英明(ベース)/石若駿(ドラムス/パーカッション)
スペシャル・ゲスト:石橋英子(ヴォーカル/フルート/エレクトロニクス)
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/kei-matsumaru/