1. MOSES SUMNEY “Title Of This Song”
冒頭曲で和み系のソウルフル・ヴォイスを響かせるのは、ガーナ育ちでLAを拠点に活動する黒人シンガー・ソングライターのモーゼス・サムニー。アコギやヒューマン・ビートボックスのループを伴奏にするなど独創的な手法が新鮮だ。ここでの牧歌的なサイケ・フォークはベックの近作にも通じるものが。
2. FUN. “Please Leave A Light On When You Go”
ジャック・アントノフ(ギター)がソロ・プロジェクトのブリーチャーズを始動させたことも記憶に新しいファンは、ファニーなワルツ・スタイルに挑戦。ピアノと弦楽器をバックに配していて、ドラマティックなのにこじんまりした雰囲気がヴィンテージのオルゴールみたい。
▼このたび日本盤化されたブリーチャーズのファースト・アルバム『Strange Desire』(RCA/ソニー)
3. TWEEDY “The Wolf Is On The Hill”
ウィルコのジェフがソロ・アルバムを作っていたら、いつの間にか息子も加わり、そこからほのぼの親子ユニットに発展したというトゥイーディ。スペンサー君(18歳)の渇いたドラム音はいかにもベックが好みそうだ。レイドバックしたギターとの相性も抜群。
▼トゥイーディのファースト・アルバム『Sukierae』(DBpm/Anti-/ソニー)
4. NORAH JONES “Just Noise”
ビリー・ジョー(グリーン・デイ)とのコラボ盤に続き、プスン・ブーツでの初作も発表するなど、精力的に活動しているここ1年のノラ。『Beck Song Reader』ではピアノをメインにしたバンド演奏を背に、彼女のオリジナル曲かと思えるほど違和感なくチャーミングな歌唱を披露。
▼プスン・ブーツの2014年作『No Fools, No Fun』(Blue Note)
5. LORD HURON “Last Night You Were A Dream”
LA在住のシンガー・ソングライター、ベン・シュナイダーによるソロ・プロジェクトが進化して現在は5人編成で活動中のロード・ヒューロン。フリート・フォクシーズを思わせるインディー・フォークが十八番の彼ららしく、レトロなアメリカーナを溌剌と爽やかに奏でてみせる。
▼ロード・ヒューロンの2012年作『Lonesome Dreams』(PIAS)
6. BOB FORREST “Saint Dude”
レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョシュも在籍したセロニアス・モンスターやバイシクル・シーフでフロントマンを務めていたボブ・フォレスト。安物ウィスキーの匂いが強烈に漂ってきそうな塩辛いヨレヨレ声に、ベック坊ちゃまも驚いたのではないだろうか。
7. JACK WHITE “I’m Down”
ナッシュヴィル移住後の活動も好調なジャック・ホワイトは、ギラギラと太陽の焼けつくような、アメリカ大陸の荒野を思わせるルーツィーなサウンドとユーモアを放ち、ホワイト・ストライプス風のギターを掻き鳴らす。ホンキー・トンクっぽい飄々としたムードは、近頃の彼の風貌とも合致!?
▼ジャック・ホワイトの2014年作『Lazaretto』(Third Man/Columbia)
8. BECK “Heaven’s Ladder”
唯一ベック本人が演奏した同曲は、サイケデリックでドリーミーで、表題通り天国へと続くような仕上がりに。レノン&マッカートニーからの影響を消化しながら、ベックらしいモダンなポップセンスが弾け飛ぶ。
9. JUANES “Don’t Act Like Your Heart Isn’t Hard”
『Beck Song Reader』中でもっとも異色&出色と言えるのが、コロンビア生まれのスーパースター、フアネスによるこのスペイン語ナンバーだ。ラテン特有の哀愁メロディーとアレンジは、もはやベック原作というのを忘れてしまうほど。これぞベックが密かに期待していたサプライズか。
▼フアネスの2013年作『Loco De Amor』(Universal Latino)
10. LAURA MARLING “Sorry”
若くして大物の風格を備えたUKのネオ・フォーク系シンガー。彼女にしてはずいぶんと軽やかな仕上がりだが、それがかえって原曲のおもしろさを引き出している。アコギ伴奏のみで〈ごめんね〉と繰り返す様はどこかすっとぼけた感じがするし、男性目線の曲を女性に歌われるのもくすぐったい。
▼ローラ・マーリングの2013年作『Once I Was An Eagle』(Virgin)