ポスト・クラシカル、アンビエント、ドローン……『Átta』と併せて聴きたい9枚

パスカル・ピノンの片割れで、オーラヴル・アルナルズとの共作でも知られるシンガーの3作目。ストリングスやアイスランドの伝統楽器で幻想的な音を奏でつつ、あくまで独特の艶を持つ歌が中心にある。ポスト・ビョークな存在感を湛えた一枚だ。

かつてシガー・ロスのライヴ・メンバーでもあったクァルテットが、1913年のサイレント映画に添える生伴奏スコアとして制作した楽曲集。犯罪映画ゆえか、不穏な音色が背筋をゾワゾワさせてくる。ノワール・タッチのモダン・クラシカル逸品だ。

作品ごとに先鋭性を増していくレディオヘッドのドラマーによるソロ3作目は、オーケストレーションとエレクトロニクスを重ねて、これまででもっとも本隊っぽい仕上がりに。チェンバー・ファンクと言うべき“Picking Up Pieces”が白眉の出来だ。

キャリア20年に近づく米ナッシュヴィル出身のポスト・ロック・デュオによる12作目。ほぼアンビエントと化していた近作とは異なり、シューゲイザー~ロック回帰の趣が強い。聴き手を陶酔させ、やがて昇天へと導く轟音と旋律の72分。

中国をルーツに持ち、現在はロンドンを拠点とするチェリスト兼シンガーが4ADよりデビュー。この初作では、弦楽器と鍵盤が織り成す幽玄なサウンドを纏いながら、複雑な出自ゆえのさすらいの感覚をドローン・フォークとして美しく昇華している。

ソロ名義での2020年作『Shiver』にAG・クックを招いた縁もあってか、PCミュージック肝煎りのシンガーによる初作にはヨンシーが参加。“Oil + Honey”でのデュエットは、ハイパーポップ然とした作品において、恋人との休息のごとき安らぎの瞬間だ。

J-Popシーンで活躍するプロデューサーがドイツの名門より発表した優美なポスト・クラシカル作。アイスランドで制作を進め、同国の音楽家を招いている点でも『Átta』と並べて聴けよう。西田修大を世界に紹介したというのもポイントのひとつ。

カナダの電子音楽家がコリン・ステットソンらと制作した最新作。ときおりフリー・ジャズ的な展開を見せるドローンのもたらす緊張感が尋常ではない。チルやカームのためではなく、世界の混沌や荒々しさを直視するためのアンビエント。

ダブリンを拠点とするフォーク・バンドの4作目は、英マーキュリー賞の候補作にも選出された。トラディショナルな楽器で伝承歌を採り上げつつ、ドローンやノイズがそこに鮮やかな陰影を形成。悠久なる土地の記憶を現代に浮かび上がらせている。