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ポスト・クラシカル、アンビエント、ドローン……『Átta』と併せて聴きたい9枚

JFDR 『Museum』 Houndstooth/BIG NOTHING(2023)

パスカル・ピノンの片割れで、オーラヴル・アルナルズとの共作でも知られるシンガーの3作目。ストリングスやアイスランドの伝統楽器で幻想的な音を奏でつつ、あくまで独特の艶を持つ歌が中心にある。ポスト・ビョークな存在感を湛えた一枚だ。

 

AMIINA 『Fantômas』 Mengi(2016)

かつてシガー・ロスのライヴ・メンバーでもあったクァルテットが、1913年のサイレント映画に添える生伴奏スコアとして制作した楽曲集。犯罪映画ゆえか、不穏な音色が背筋をゾワゾワさせてくる。ノワール・タッチのモダン・クラシカル逸品だ。

 

PHILIP SELWAY 『Strange Dance』 Bella Union/BIG NOTHING(2023)

作品ごとに先鋭性を増していくレディオヘッドのドラマーによるソロ3作目は、オーケストレーションとエレクトロニクスを重ねて、これまででもっとも本隊っぽい仕上がりに。チェンバー・ファンクと言うべき“Picking Up Pieces”が白眉の出来だ。

 

HAMMOCK 『Love In The Void』 Hammock Music(2023)

キャリア20年に近づく米ナッシュヴィル出身のポスト・ロック・デュオによる12作目。ほぼアンビエントと化していた近作とは異なり、シューゲイザー~ロック回帰の趣が強い。聴き手を陶酔させ、やがて昇天へと導く轟音と旋律の72分。

 

LUCINDA CHUA 『YIAN』 4AD(2023)

中国をルーツに持ち、現在はロンドンを拠点とするチェリスト兼シンガーが4ADよりデビュー。この初作では、弦楽器と鍵盤が織り成す幽玄なサウンドを纏いながら、複雑な出自ゆえのさすらいの感覚をドローン・フォークとして美しく昇華している。

 

HYD 『CLEARING』 PC Music(2022)

ソロ名義での2020年作『Shiver』にAG・クックを招いた縁もあってか、PCミュージック肝煎りのシンガーによる初作にはヨンシーが参加。“Oil + Honey”でのデュエットは、ハイパーポップ然とした作品において、恋人との休息のごとき安らぎの瞬間だ。

 

Yaffle 『After the chaos』 Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2023)

J-Popシーンで活躍するプロデューサーがドイツの名門より発表した優美なポスト・クラシカル作。アイスランドで制作を進め、同国の音楽家を招いている点でも『Átta』と並べて聴けよう。西田修大を世界に紹介したというのもポイントのひとつ。

 

TIM HECKER 『No Highs』 Kranky(2023)

カナダの電子音楽家がコリン・ステットソンらと制作した最新作。ときおりフリー・ジャズ的な展開を見せるドローンのもたらす緊張感が尋常ではない。チルやカームのためではなく、世界の混沌や荒々しさを直視するためのアンビエント。

 

LANKUM 『False Lankum』 Rough Trade(2023)

ダブリンを拠点とするフォーク・バンドの4作目は、英マーキュリー賞の候補作にも選出された。トラディショナルな楽器で伝承歌を採り上げつつ、ドローンやノイズがそこに鮮やかな陰影を形成。悠久なる土地の記憶を現代に浮かび上がらせている。