フライロー、ケンドリック、メーガン……ECMと現代ヒップホップ
近年の例では、これまたヒップホップの非主流で常にジャズとの関わりを持ちながら独自の音楽を作り続けているプロデューサー、フライング・ロータスの『Until The Quiet Comes』(2012年)から“Heave(n)”。まさに天国的なチック・コリアのエレクトリックピアノのフレーズが舞っているが、これは『Return To Forever』から“Crystal Silence”のサンプリングだ。

G・イージーのヒット作『The Beautiful & Damned』(2017年)のメランコリックな“Summer In December”もチック・コリアネタで、しかも同じ曲だ。ゲイリー・バートンとチックのデュオ作『Crystal Silence』(73年)の表題曲の引用で、チックのピアノを全編にわたって使っている。プロデューサーは、ダカーリ(Dakari)とヘンリー・ダーヘル(Henry Daher)。

2022年最大の話題作のひとつだったケンドリック・ラマーの『Mr. Morale & The Big Steppers』。その中でも強烈な印象を残す“We Cry Together”は、ケンドリックと俳優のテイラー・ペイジが病んだカップルとなって、卑語まみれの怒声で言い争っている曲だ。ここで反復されているのがベーシスト、ゲイリー・ピーコックの作品『Shift In The Wind』(80年)から“Valentine”におけるアート・ランディのピアノである。ジ・アルケミストのほか、エミール・ヘイニー(Emile Haynie)、ビーコン(Bekon)、J.LBSによるプロダクションだ。

KENDRICK LAMAR 『Mr. Morale & The Big Steppers』 Top Dawg/Aftermath/Interscope/ユニバーサル(2022)
そしてなんと、メーガン・ザ・スタリオンの最新シングル“Cobra”も、チック・コリアネタなのだ。リターン・トゥ・フォーエヴァーが73年にライブで演奏した“After The Cosmic Rain”から、イントロにおけるチックのシンセソロがサンプリングされている。これは、かなり意外な(しかも録音作品からではない)サンプリングである。この曲のプロデューサーは、バンクロール・ガット・イット(Bankroll Got It)、ショーン・“ソース”・ジャレット(Shawn “Source” Jarrett)、デリック・ミラノ(Derrick Milano)の3人。

Nah I’m right, it’s the amazing Chick Corea. 🌎 pic.twitter.com/Uu4caLdAHM
— sir reché (@AYOGARI) November 3, 2023

