いまがいちばん最高さ
名前が出たので、「あなたにとってプリンスの存在とは?」とも訊いてみた。
「僕の先生の一人さ。高校生の頃から彼の音楽を聴いていた。素晴らしい手本であり、多くを教わった。『Let Love Rule』が出たあと、連絡をもらって会いに行った。それから徐々に友情が芽生え、やがて兄弟のような関係にまでなった。楽しい時間を過ごして、一緒にいっぱい笑った。会えないのが悲しいよ」。
今作に収録の“Let It Ride”は密室的なエレクトロ・ファンクで、まさに80年代のプリンスを想起させるナンバーだ。
「この曲は80年代、初期のクラブが流行っていた時代へのオマージュみたいな感じで作った。プリンスを意識して作ったわけではないけど、確かに彼は空間を活かしたリズム・オリエンテッドなトラックをよく作っていたね」。
ロックンロール曲のなかでは〈愛は私の宗教 愛は私の神〉と繰り返す“Love Is My Religion”が熱い。
「生きていくなかで、愛、神、人間、統一性、包括性についての想いがより強まった。僕がどう生きようとしているか、ってことだね。フットボール・スタジアムで人々が〈Love Is My Religion〉というフレーズを唱えている様子が頭に浮かび、アンセム・ソングにしようと思った。だからシンガロングや手拍子が入っている。みんなで拳を高く挙げて共に歌う曲だ」。
一方、リラックスしたポップ・ソウル“Honey”を聴けば、幸福感でいっぱいになる。こういったスウィートでロマンティックな曲からもレニーの純粋なままの想像力を感じ取ることができる。
「この曲は、ただ降りてきたんだ。蜂蜜のように甘くてトロっとしているところが気に入っている。甘くて、甘くて、甘くて、甘い。サウンド面でも特に気に入っている一曲だ」。
最後を飾る表題曲“Blue Electric Light”は、これもまた80年代のプリンスを想起させるサウンドだが、今作におけるメッセージばかりかレニーのすべてが凝縮されているようでもある壮大なバラードだ。
「これをアルバムのタイトルにするべきだと言ったのはクレイグなんだ。聴き返すうちにその理由がわかった。愛、神、精神、ポジティブ・ヴァイブレーション、セレブレーション。すべてがこの曲に詰まっていると思えたんだよ」。
本作のリリースと同タイミングで、還暦を迎えるレニー。「いま、どんな気分ですか?」と訊くと、彼はこう答えた。
「最高の気分だよ。心も精神も肉体もいまがいちばん状態がいい。この若々しさを手放すことなく続けていきたい。そうすれば人生はもっとよくなるはずだからね」 。
レニー・クラヴィッツの作品。
左から、89年作『Let Love Rule』、91年作『Mama Said』、93年作『Are You Gonna Go My Way』、95年作『Circus』、98年作『5』、2001年作『Lenny』、2004年作『Baptism』、2008年作『It Is Time For A Love Revolution』(すべてVirgin)、2011年作『Black And White America』(Roadrunner)、2014年作『Strut』(Roxie)