
特殊ケースに分厚いブックレット
――そもそもCDやレコードがいっぱいある家庭で育ったんでしょうか? ご両親も音楽は好きだったと伺っていますが。
「うーん、そうは言っても、家にレコードがダンボール1箱分くらいあった、とかですね。昔はいっぱい持ってて、オーディオ類も充実してたようですが、自分が物心付いてからは、レコードを聴いてる所も見たことなかったです。
ただ、レンタルビデオショップとかはよく連れてって貰ってて、それこそm-floとかKICK THE CAN CREWとか中島美嘉とか、〈これ借りたい〉っていうのを頼んで借りて貰ってましたね」
――それはちなみにTSUTAYAですか?
「いや、TSUTAYAが近所に出来たのはもうちょっと後で、その頃は〈イタリ屋〉っていう……多分、神戸ローカルのチェーン店だと思うんですけど。そこで借りてたと思います」
――〈ヤ〉が〈屋〉になってるんですね(笑)。レンタルビデオ屋のローカルチェーンって、当時はありましたよね。
「そうですね、神戸には他にも〈ビデオ合衆国〉ってチェーンもありました。それで、レンタルしたCDをCD-Rに焼いて……。我ながら、ほんまに物持ち良いんで(笑)。当時のCD-Rがまだちょっと残ってるんですよ。
中学生か高1、音楽を始める前の時期にCDで聴いてたってなると、他にはRIP SLYMEとかNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDですね。あとBUDDHA BRANDも、その頃に買ったCDを手放さず持ってますね、これなんですけど。これはもう、装丁からブックレットまで込みで、全部良いですよね」

――『病める無限のブッダの世界 ~BEST OF THE BEST(金字塔)~』(2000年)。2枚組CDの、この厚みのあるタイプのケース、手に持つとズシッと来る感じがいいですよね。
「いいですよね、ブックレットも分厚かったりして。もうあまり見かけないですよね」
――(Mikiki天野)Kotetsuも参加してるトーフさんの『REFLECTION』の初回限定盤はポストカードが収納されてて、この厚みのケースでしたよね。
「ああ、確かに。特殊仕様のジュエルケースも、今はもう生産できないってパターンは多いみたいですね」
――CDの特殊なパッケージで、今見ても面白いものはいっぱいありますよね。
「確かに。それこそ最近凄いなと思ったのがこの、『デ・ジ・キャラット』の『でじこのサウンドパーティー』(2007年)っていうCD-BOXなんです。曲も凄く良いんですけど、何よりこのパッケージですね」

――5枚のCDが蛇腹のデジパックで収録されてるんですね! これは凄い。トーフさん、最近ずっと「デ・ジ・キャラット」推してますよね。
「『デ・ジ・キャラット』のほとんどの曲って、Key of Lifeの坂本裕介さんが手掛けてるんですよ。Key of Lifeは、カシオペアをサンプリングした“ASAYAKEの中で”って曲が有名なグループですね。そういう、ヒップホップも作れる人のポップスの仕事って所も、ちょっとシンパシーを感じるというか……(笑)」
――それもある種J-CLUB的というか、越境的な面白みがありますよね。ちゃんとヒップホップやクラブミュージック的な音作りをわかってる人が、お茶の間に向けてやってるっていう。

tofubeatsの心のベストCD
――中高時代は日本語ラップの王道を聴いてた感じだと思うんですが、そこからよりダンスミュージックにシフトしていく中で、印象的だったCDはありますか?
「この『Trax Records - Acid Classics』(2004年)というコンピはそうですね。高校生になって音楽活動を始めて、東京にも行くようになった時期ですけど、自分が作ったCD-Rをヴィレッジヴァンガードに置いて貰ってて、そのヴィレヴァンの店員さんから貰ったCDです」
――アシッドハウスといえばトーフさんの新作『NOBODY』の“EVERYONE CAN BE A DJ”や“Remained Wall”にも登場するTB-303のウネウネしたシンセベースですが、まさにその原点とも言えるような古典的な曲が収録されていますね。
「フューチャー(Phuture)の“Acid Trax”に始まり、シカゴ~アシッドハウスの有名な曲が網羅されてますね。自分の『FANTASY CLUB』(2017年)の元ネタのピエールズ・ファンタジー・クラブ(Pierre’s Pfantasy Club)の曲も入ってます。ハウスミュージックへの導入として、自分にとっては重要な一枚ですね」
――当時、こういう入門的なコンピレーションCDっていっぱいありましたよね。このジャンルで押さえておくべき名曲がまとめて入ってるっていう。
「当時は金銭的にもありがたかったですね。レコード屋にも行ってたけど、10代だとそんなにレコードを買えないですから。そういう点でも、こういうCDは僕らの世代的にはありがたかったんじゃないかと。自分は当時から、レアなレコードにこだわらず、CDで聴けるならそれでええやん、って感じでしたね」
――あと、CDは手軽に人に貸したりあげたりできますよね。
「それは結構、CDの良い所ですよね。自分もかなり人にあげてますし」

――他にもおすすめのCD、お気に入りのCDはありますか。
「よく〈心のベスト〉として紹介してますけど、中澤真由さんの『STEP INTO MY HEART』(2002年)ですね。のちにimmiという名義になるシンガーソングライターの方ですが、このCDはJ-POPの中でも本当に5本の指に入るくらい好きなアルバムで、10代の時から聴いてます。独特のアンニュイさで、とにかく良いとしか言えないんですけど、ジャケットの感じもオシャレですね。
他にも五島良子さんとか“I believe”っていう曲が有名なSAKURAさんとか。あとはやっぱり“かわいくなりたい”の古内東子さん」
――90年代J-POPの隠れた名盤で、CDでまだまだ入手しやすいもの、今聴いても素晴らしいものはいっぱいありますよね。

