ラシッド・ウランダン「Corps extrêmes―身体の極限で」
本作のコンセプト・構成を担当したウランダンの作品を、日本でごらんになった方も少なくないだろう。2018年には「TORDRE(ねじる)」、22年には現代サーカス集団、カンパニーXYと制作した「メビウス」が上演されている。「Corps extrêmes ―身体の極限で」はカンパニーXYと作り上げた方法論をより立体化した作品といえるかもしれない。「メビウス」で構築した上昇/落下というダイコトミー(二分法)は、さまざまなヴァリエーションとなって本作に散らばっている。
舞台中空に張られたロープの上をハイライナー(綱渡り)が歩む。ボルダリング用のクライミングウォールをクライマーが這いまわる。会場に緊張がみなぎる。サスペンス(宙吊り)とは重力への挑戦だ。ただし、ステージの上の主役は8人のアクロバットパフォーマーだ。彼/彼女らはジャンプし、リフトされ、宙に舞う。それらはもともとダンサーの職能だ。しかし、いずれの動きも思いきり拡大されている。人から人へと飛び移り、軽々と頭上を駆けてゆく。ときに弧を描き、あるいは垂直に落下する。ここでの人体は重さを半ば失った紙風船のようだ。こんな現実ばなれした光景が目の前で展開されれば、見るものは陶然とするほかない。ダンスのエレガンスとサーカスのアクロバティズムとは、想像以上に近いものらしい。
ハイラインとクライミングがサスペンスになりえるのは、いうまでもなく一瞬でも気をゆるめればそこに死が待っているからだ。肉体ははかない。その痛切な意識がショーを盛り上げる。一方で、肉体ははかなさとうらはらに自由を謳歌する。それはかけがえがなく、美しい。ため息をついた後で気がついてみれば、そのはかなさも美しさも結局はあなたのものなのだ。世界最高記録をもつハイライナー、ナタン・ポランの声が会場に響く。ロープの上の孤独、そして自由。これもまた人生の別名だ。しかし、〈ロープの上の自由〉とはなんと切ないイメージだろう。それでは人生がままならぬと認めているも同然ではないか。
だが、だからこそ人は踊るのかもしれない、宙に漂う紙風船の自由を夢見るように。
もちろん子供の遊びのたとえを使ったから両者に共通点があると強弁したいわけではない。だが、リゾーもウランダンもそうした遊びの中に息づく普遍的な知恵に確かにふれているように思える。ふたりともダンスの意味を問い、隣接領域との距離を測定すること自体を作品につなげている。同時に、どちらも作者の個人的な体験に根ざした作品を作っている。かつてコラボレーションを行った仲でもあるだけに、具体的な動きのイディオムにも似たところが見受けられる。しかし、個と集団の捉え方や多様性の表現などは面白いくらいに異なっている。
この2作から、現代のダンスの最前線のもようや、その可能性の振れ幅までもが伝わってくる。あわせてごらんいただければ幸いだ。
LIVE INFORMATION
クリスチャン・リゾー「D’après une histoire vraie―本当にあった話から」
■京都公演
2024年10月12日 (土) 京都芸術劇場 春秋座
開演:19:00
2024年10月13日 (日) 京都芸術劇場 春秋座
開演:19:00 ※アーティストによるポスト・パフォーマンス・トークあり
https://kyoto-ex.jp/shows/2024_christian-rizzo/
■埼玉公演
2024年10月19日(土)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:19:00
2024年10月20日(日)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:15:00 ※クリスチャン・リゾーによるポスト・パフォーマンス・トークあり
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/100846/
コンセプト・振付・舞台美術・衣裳デザイン:クリスチャン・リゾー
出演:ユネス・アブラクル/ファビアン・アルマキエヴィッチ/ヤイル・バレリ/マッシモ・フスコ/ペップ・ガリゲス/ケレム・ゲレベック/フィリペ・ロウレンソ/ロベルト・マルティネス
演奏:ディディエ・アンバクト&キングQ4(ドラム)
音楽:ディディエ・アンバクト&キングQ4
照明:キャティ・オリーブ
■主催
京都公演:KYOTO EXPERIMENT/ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル/京都芸術大学 舞台芸術研究センター
埼玉公演:彩の国さいたま芸術劇場(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団)/ダンスリフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
■助成
京都公演:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流
))/独立行政法人日本芸術文化振興会/笹川日仏財団
埼玉公演:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)/独立行政法人日本芸術文化振興会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
※本公演は、京都と埼玉で開催するダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル フェスティバルの一環として上演いたします。
ラシッド・ウランダン「Corps extrêmes―身体の極限で」
2024年10月26日(土)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:19:00
2024年10月27日(日)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:15:00 ※ラシッド・ウランダンによるポスト・パフォーマンス・トークあり
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/100849/
コンセプト・構成:ラシッド・ウランダン
出演:タミラ・ドゥ・ナイヤール/ベラール・サン・ヴィサント/リザンドロ・ギャロ/ジョエル・アズー/ヴァレリアン・ムティエール/マキシム・セゲール/シャルリー・エシオン/ニコロ・マルツォーリ/カミーユ・ドゥマス/アントワーヌ・クレティノン
映像出演:ネイサン・ポーリン、ニナ・カプレツ
音楽:ジャン=バティスト・ジュリアン
映像制作:ジャン=カミーユ・ゴイマール
照明:ステファン・グライヨ
衣裳:カミーユ・パナン
主催:彩の国さいたま芸術劇場(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団)/ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)/独立行政法人日本芸術文化振興会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
※本公演は、京都と埼玉で開催するダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル フェスティバルの一環として上演いたします。