この地球に、まだ四季はあるのか ヴィヴァルディ“四季”への応答――
都会人ヴィヴァルディが見た暴力的な自然
ヴィヴァルディの“四季”についての既成概念を覆す新解釈が舞踊の世界からやってきた。振付家アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル率いるダンス・カンパニーのローザスが、2024年に発表した「和声と創意の試み」である。
1983年にブリュッセルで活動を開始して以来、彼らはスティーヴ・ライヒやマイルス・デイヴィス、マーラーやヴェーベルン、最近ではチェリストのジャン=ギアン・ケラスが弾くバッハの無伴奏チェロ組曲を舞台化してきた。昨年秋に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したケースマイケルは、いまや音楽と舞踊を刺激的な視点で結びつける最も特別な存在のひとりとなっている。ケースマイケルがバロック・ヴァイオリンの名手アマンディーヌ・ベイエと“四季”の本質に迫り、音楽と身体の関係を構築しながら創作した本作。ベイエとリ・インコーニティの名盤“四季”が用いられている点にも注目したい。
ヴィヴァルディの“四季”を舞踊化するにあたり、ケースマイケルと共同振付のラドワン・ムリジガは現代の人類が直面する環境問題という視点を持ち込んでいる。
つかの間の春、長く続く酷暑の夏、短すぎる秋、厳しい冬……4つあるはずの季節がまるで2つしかなくなってきている――これは多くの人々が近年実感していることである。こうした気候不順や自然災害の増加の元凶が、人間たちの不道徳や不和にあるとみなす考え方は、じつは古くからある。
ケースマイケルは言う。
「興味深いのはヴィヴァルディが実際には自然とそれほど近くなかったということです。彼はヴェネツィアに住む都会の人間でした。そしてヴィヴァルディは“四季”をマントヴァで、つまり都会の外に滞在中に書いたのです。
この事実は自然と私たちの関係について考えさせます。私たちはその一部なのか、それとも外側から自然を見ているのか?
もしヴィヴァルディが実際に距離を置いて自然を見ていたとしたら……彼は四季について何を述べているのでしょうか? この音楽には風の表現が多く含まれています。“四季”には多くの嵐があります。彼はロマン主義の時代に典型的だった“美しい絵”を描くのではなく、代わりに“暴力的な自然”を描いているのです」
ヴィヴァルディの“四季”が、単なる牧歌的自然を描いているとする考え方は、ともすればこの曲を退屈にしてしまう危険をはらんでいる。この曲に添えられた詩句をよく読み、音楽に耳を傾けると、そこには、人間と自然の関係が調和できていない現代的な状況がみてとれるのではないか? そんな問いかけを秘めた今回のローザスの来日公演には、音楽好きこそ接しておきたい。
※文中のケースマイケルの発言はベルリン芸術祭メディアライブラリーの記事(2024年2月8日付)より引用。
INFORMATION
ローザス、アトラファイブ『和声と創意の試み』
2026年6月19日(金)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:19:30
2026年6月20日(土)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:14:00
2026年6月21日(日)彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演:14:00
■振付
アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル/ラドワン・ムリジガ
■共同創作・出演
ボシュチャン・アントニッチ/ナシーム・バダグ/ラヴ・クルンチェヴィッチ/ホセ・パウロ・ドス・サントス
■音楽
アントニオ・ヴィヴァルディ “四季”