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シティポップブームでも話題にならない極上の隠れ名曲

この機会なので『SINGLES』からもうひとつ、“Party Joke”というこれまた素晴らしい曲もレコメンドしておきましょう。こちらはファーストシングル“I CAN BE”のB面曲で、スタイル・カウンシルの“All Gone Away”をよりムーディーにしたようなボサノバ風のナンバー。

同時発売のデビューアルバム『シャリ・シャリズム』でも似たテイストの“リッスン”という曲がありますが、完成度は“Party Joke”の方が数段上でしょう。米米CLUB流ボサノバというとパッと思い付くのはこの2曲くらいなので(“ボッサボサノバ”というソーリー曲もあるけど全然ボサノバではない)、その点でも貴重ではあります。

そしてなによりこの異様なほど洒脱な、むしろシティポップとさえ言っていいほど洗練された曲をデビューシングルで披露していることに、米米CLUBのアンビバレントな懐の深さを感じずにはいれません。

そういえば昨今のシティポップブームでも全く話題になっていませんが、じつは米米CLUBにも“DEEP IN YOUR NICE BODY”という極上のアーバングルーヴがあるのです。これがもうモロに山下達郎の“SPARKLE”をオマージュしたサウンドで最高にカッコいい。ただし歌詞が最低(18禁)なので、まぁ話題にならないのも当然といえば当然なのですが……。

今回はわずかな情報だけを頼りに勝手な推測を働かせるという安定感のまるでない内容になりましたが、隠れすぎた名曲“ヴィーナス”と“Party Joke”がこれを機に少しでも注目されれば本望なのです。

 


PROFILE: 北爪啓之
1972年生まれ。1999年にタワーレコード入社、2020年に退社するまで洋楽バイヤーとして、主にリイシューやはじっこの方のロックを担当。2016年、渋谷店内にオープンしたショップインショップ〈パイドパイパーハウス〉の立ち上げ時から運営スタッフとして従事。またbounce誌ではレビュー執筆のほか、〈ロック!年の差なんて〉〈っくおん!〉などの長期連載に携わった。現在は地元の群馬と東京を行ったり来たりしつつ、音楽ライターとして活動している。NHKラジオ第一「ふんわり」木曜日の構成スタッフ。