マンチェスターで労働者階級の若者たちが結成し、およそ5年ほどの活動期間を通じて濃厚な名作たちと大きな余波を残していった4人組バンド。こちらはファースト・アルバムで、“This Charming Man”や“Hand In Glove”“What Difference Does It Make?”など、すでに完成されたモリッシーの唱法とジョニー・マーの軽やかなギターの個性は確立されている。近年もシカゴからフォロワーのブリジット・コールズ・ミー・ベイビーが登場するなど影響力はいまも絶大だが、〈スミス的〉としか呼べないほどの独自の雰囲気が現代でも有効なのが凄い。
2024年も現役バリバリのポール・ウェラーだが、そのチェンジング・マンたる由縁はジャム解散後にキーボーディストのミック・タルボットと結成したこのユニットから明確に立ち現れてきたものだ。こちらのファースト・フル・アルバムでは本来のモッドな感覚を活かしてソウルやジャズなどの多彩な音楽要素を取り入れ、カッコつけることのカッコ良さをスタイリッシュな音と佇まいでも表現している。洒脱なグルーヴが流れる“My Ever Changing Moods”やメロウな“You’re The Best Thing”を筆頭に、いま聴いてもスタイリッシュに響くはず。
60年代から夫婦デュオのアイク&ティナ・ターナーで一世を風靡するも、夫の支配から逃れて表舞台から消えていたシンガーが、5年のブランクを経て音楽史上最大のカムバックとされる大復活を演出した特大ヒット・アルバム。本国USではなく英国の若手制作陣が80年代ならではのクリアな音作りで主役のパワフルな不屈の歌心を支える。テリー・ブリテンの手掛けた代表曲“What’s Love Got To Do With It”をはじめ、オリジナルもデヴィッド・ボウイ“1984”などのカヴァーも隔てなく披露。全世界で1200万枚以上のセールスを記録した。
英リヴァプール発のニューウェイヴ・バンドが全英No.1を記録した初作。トレヴァー・ホーンがサンプリングやリン・ドラムなどを駆使した先進的なサウンドを仕掛け、日本でも著名な“Relax”から“Two Tribes”“The Power Of Love”まで3曲連続で全英1位を獲得した。“Born To Run”のカヴァーも収録。活動時は賛否両論だったがペット・ショップ・ボーイズやイレイジャーら後進が活躍できる素地を作った功績は大きい。なお、昨年の〈ユーロビジョン・ソング・コンテスト〉開幕式で36年ぶりにメンバーが揃って曲披露したのも話題になった。
81年末に音楽活動を休止した彼女が復帰するにあたってシンガー・ソングライターとしての方向性を確立したアルバムで、初めて本人が全曲の作詞・作曲を担当。編曲・プロデュースを山下達郎が手掛けるという体制での最初の作品となった。当時の目線でいえば“もう一度”“本気でオンリーユー(Let’s Get Married)”や“マージービートで唄わせて”などの人気曲を収録したオリコン首位獲得のカムバック・ヒット作品ということになろうが、現在の流れで言えばもちろん“PLASTIC LOVE”を収めた作品ということになる。そうでなくても隅々まで佳曲揃いだ。
MTVの普及もあって映画音楽の在り方も大きく変わったのがこの時代……別掲の「フットルース」と並んで主題歌やサントラもヒットしたこちらは、以降もシリーズ続編やリブートなどが制作された「ゴーストバスターズ」。ジェントルなお洒落アーティストだったレイ・パーカーJr.がいきなりコミカルに振り切れて披露した“Ghostbusters”は世界中で親しまれる大ヒットとなった。他にもトンプソン・ツインズの“In The Name Of Love”、ダイアン・ウォーレンのペンによるローラ・ブラニガンの“Hot Night”など豪華な曲に彩られた80年代の名場面を楽しみたい。
輝ける70年代を駆け抜けた4人がディスコ・サウンドへの傾倒期を終えて完成した、クイーンの80年代を代表するアルバムともいえるポップな名曲集。顔面が繋がって一体感を獲得するのはまだ先で、この時期はまだ個々に曲を作って持ち寄っている状態ながら、ジョン・ディーコン作のドラマティックな“I Want To Break Free”、フレディ・マーキュリー作の哀愁スロウ“It’s A Hard Life”ブライアン・メイ作のハード・ロック“Hammer To Fall”と、各々が完成度が高い。ロジャー・テイラー作の名曲“Radio Ga Ga”はレディ・ガガの名前の由来なのも有名か。
玉置浩二ら友人同士によって北海道は旭川にて結成され、現在も活動している実力派バンド。井上陽水が作詞した前年リリースの先行シングル“ワインレッドの心”がジワジワ人気を集めて最終的にはチャート首位を獲得するブレイクになり、こちらはそのヒットを受けて登場したセカンド・アルバム。夜の街っぽい歌謡曲テイストと本来のバンド・サウンドが巧みに共存し、集中力のある歌唱も流石だ。こちらも陽水が作詞した“真夜中すぎの恋”、その後も玉置の曲に詞を書くことが多い盟友・松井五郎が初参加した“マスカレード”といったシングル群も収録。
デヴィッド・バーンのライヴ映画「アメリカン・ユートピア」(2020年)の源流にもなった、バーン率いるバンドのジョナサン・デミ監督によるライヴ映画「ストップ・メイキング・センス」のサントラ……ということでつまりは彼ら屈指のライヴ・アルバムということになる。もともとのライヴは83年12月にハリウッド・パンテージ・シアターで行われたもので、アーティスティックにショウアップされたステージングは見えないものの音楽の備えた気や熱を確かに伝えるような興奮必至の仕上がりだ。今年に入って40周年記念デラックス盤やトリビュート盤も登場している。
80年代版ジャクソン5を狙ったボストン発の少年グループが、後見人だったモーリス・スターの元を離れてメジャー・デビューを飾った一作。リード・シンガーのラルフ・トレスヴァントが無邪気に歌い上げる“Cool It Now”をはじめ、ボビー・ブラウンがリード取ったレイ・パーカーJr.制作の“Mr. Telephone Man”、甘く儚い“Lost In Love”などオーセンティックなバブルガム・ソウル感と当時のブラコン風味を併せ持った佳曲が並ぶ。なお、彼らに去られたモーリスは同年に白人版ニュー・エディションとしてニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックを結成させた。