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ホムカミ新作に影響を与えたフラジャイルな音楽を福富優樹の言葉を交えて紹介!

 Homecomingsの方向性は福富優樹が舵を取ることが多いが、なかでも『see you, frail angel. sea adore you.』は彼のヴィジョンを丹念に具現化したアルバムだ。ここでは、新作に影響を与えた作品を、福富の発言を交えながら紹介する。まず「寂しげで優しい音像にUSインディーのメロディーと歌声、エレクトロニカのクリック・ノイズ――好きなものだらけの作品」と称賛するウィートの『Hope And Adams』。マサチューセッツ出身のバンドによる2作目で、デイヴ・フリッドマンによる空間的な音作りも聴きものだ。USインディー勢では、新世代スロウコアを牽引するサイン・クラッシュズ・モータリストのリアム・マッケイによる別名義、バース・デイの『Boyhood』にも刺激を受けたという。

 「DTMだけで作るシューゲイザーとしてきっかけになった」と語る韓国のパラノールによる2作目『After The Magic』、2006年生まれで東京在住のトラックメイカーによるゼロ年代を思慕した電子音楽集にして「北出栞さんのzine『ferne』と共にアルバムの世界観のヒントをもらった」というTelematic Visions『bluespring』の2作は、ヒリヒリとした音像が新作と共通。シンガボール出身のユールによるニンジャ・チューン移籍作『softscars』は「やりたかったことを全部やられてしまった一枚」だそうだ。

 そして、「一生愛する名盤」というスーパーカーの『HIGHVISION』(とくるりの『THE WORLD IS MINE』)。クラブに接近した音作り以上に、これらが生まれた、文化が百花繚乱だった時代の記憶こそ、Homecomingsが受け継いできたものではないだろうか。 *田中亮太

左から、ウィートの99年作『Hope And Adams』(Sugar Free)、バース・デイの2022年作『Boyhood』(Hunkofplastic)、パラノールの2023年作『After The Magic』(Topshelf)、Telematic Visionsの2022年作『bluespring』(Sad Disco)、ユールの2023年作『softscars』(Ninja Tune)、スーパーカーの2002年作『HIGHVISION』(キューン)