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ありのままの心情

 彼女自身と共にサウンド作りに協力したのは、長年の付き合いとなるAGクック(ビヨンセ、レディー・ガガ)。彼が全面的に関わっている影響はやはり甚大だが、その他にもサーカット(エイバ・マックス、ロゼ)、ハドソン・モホーク(アノーニ、ケシャ)、フィン・キーン(ハイド、ブリー・ランウェイ)、彼女の婚約者でもあるThe 1975のジョージ・ダニエルら、お馴染みのメンツが顔を揃えている。彼女の良き理解者たちであり、安易なヒット狙いの人選でないのは明らか。個人的には、アタック感がぶっ飛びまくりの“Von dutch”や“365”などのウルトラ・ハイパー感が最高に痛快なのだが、同時に内省的な深層心理の描写も、これまでなかったほど研ぎ澄まされている。良き協力者でもあった故ソフィーに捧げた“So I”、意地悪な女子をコキ下ろす“Mean girls”、自身を含めた女子としての面倒さ、付き合いの厄介さをぶちまけた“Girl, so confusing”、自身の32歳という年齢と出産を巡る焦りを綴った“I think about it all the time”など、胸の奥に仕舞い込まれていた本音が次々と明かされる。安易なエンパワ・アンセムでもなければ、くよくよした傷心ソングでもなく、ありのままの心情がボソッと呟くかのように……。ひしゃげたロボティックな加工ヴォイスとなり、それが却って真実味をもってリスナーの胸に刺さる。とことんクールで、突っ張っている芯の強い〈ブラット〉でありながら、時折こぼれるその本音に現代女子は共感を抱き、信頼を寄せるのだ。“Girl, so confusing”のリミックスにはあのロードがデュエットで参加。ロードにとっても、時代の声と久々に接点を結んだという気がする。本作のリミックス・アルバム『Brat and it’s completely different but also still brat』には、その他、アリアナ・グランデからキャロライン・ポラチェック、ビリー・アイリッシュからジュリアン・カサブランカスなど多数のヒップ系アーティストが集結。〈ブラット〉パワーをさらに押し広げていた。

 同じく〈ブラット〉のパワーをいっそう広く知らしめたのが、トロイ・シヴァンとのダブル・ヘッドライナーによる北米ツアー〈Sweat〉だろう。両者が交互に登場する本当の意味でのコラボ・ライヴは、もちろんテイラーの〈The Eras Tour〉ほどの規模ではないが、イギリス出身のチャーリーと、オーストラリア出身のトロイが、異国の地である北米で、一癖も二癖もある〈ブラット〉たちを目に見える形で大集合させたわけで、モニュメンタルなツアーだったのは間違いない。本作収録の“Talk Talk”で共演する2人は、約6年前のシングル“1999”(2018年)でも共演した仲。そこではブリトニー・スピアーズの“...Baby One More Time”を引き合いに出し、MVでスパイス・ガールズや「タイタニック」「マトリックス」などをパロディ化して驚かせたものだが、いまにして思えばいち早くY2Kを実践していたわけで、こうして2人が再共演しているのを眺めると、やはり時代が追いついたのではないかという気もする。そして最先端のポップ・カルチャーを切り拓いてきたチャーリーxcxのこと、すでに彼女の視線は次に向かっているに違いない。その前夜祭であり最終章としてポップ・カルチャー史上に燦然と輝く最重要アルバムが『Brat』なのだ。

チャーリーxcxの作品。
左から、2013年作『True Romance』(IAmSound)、2014年作『Sucker』(Atlantic)、2019年作『Charli』、2020年作『how i’m feeling now』、2022年作『CRASH』(すべてAsylum)

左から、1975の2022年作『Being Funny In A Foreign Language』(Dirty Hit)、ゲサフェルスタインの2024年作『Gamma』(Columbia)