ポップミュージックの歴史が積み重なり、若者も当時を知る人も、過去の豊かなカタログを再訪する機会が多くなった昨今。CDやアナログの再発盤も頻繁にリリースされている一方、YouTubeや音楽ストリーミング/サブスクリプションサービスの一般化で、過去の音楽を聴くのは容易になりました。
そんな現在の音楽の礎になったものを再考するため、Mikikiは企画〈名盤アニバーサリー〉をスタートさせます。10~60周年となる様々なアルバムや曲、シーンについての論考を毎回お届けします。初回は、1985年11月1日にリリースされたレベッカ『REBECCA IV 〜Maybe Tomorrow〜』をスージー鈴木さんに論じてもらいました。 *Mikiki編集部
後追いで確認した1985年に起きたこと
ちょうど40年前=1985年に起きた、ある大きな変化に気付いたのは、翌1986年春のことだった。
私が大学浪人をしていた1985年。私自身には、そんな意識はないのだが、結構がんばって受験勉強していたのだろう。この年の音楽シーンの記憶が極めて薄いのだ。それどころか、大阪に住んでいたのに、同年の阪神タイガース優勝の記憶も、どこかおぼろげである。
だから1986年の春、大学受験が終わったあとに、1985年に起きていたあれこれを後追いで確認していくこととなる。
〈レベッカというバンドが、いつのまにか大人気になっているらしい〉。
売れに売れた『REBECCA IV』とその反動
手元にあるのは『REBECCA IV 〜Maybe Tomorrow〜』のLP。ボロボロになったジャケットには〈レンタルレコード〉というシールが貼られている。1986年4月、大学入学後すぐという怖ろしく金がなかった頃だったからか、中古レコード屋でレンタルレコードくずれの格安盤を買ったのだろう。レベッカという現象を急いで確認するために。
ジャケット表面には、アルバム発売日の3日後に22歳になるNOKKOの姿がドーンと大きく置かれている。残り4人の男性メンバーは影も形もない。NOKKOの愛くるしく小悪魔的なビジュアルで押してやろう、売ってやろうという戦略がよく分かるデザインだ。
その戦略は間違ってはいなかった。NOKKOのルックス、ビジュアル、金属的なハイトーンボーカル、そして激し過ぎるステージアクションが大評判となり、売上枚数54.2万枚(オリコン)、週間ランキング1位と『REBECCA IV』は売れに売れた。
反動もあったように思う。NOKKOに加えて渡辺美里など、当時のしてきたキュートなルックスのシンガーによる音楽を〈あんなのはロックじゃない(アイドルじゃないか)〉と断ずる言説を、マニアックなロック雑誌でしばしば見かけたのだ。〈ルックスがキュートだったらロックじゃない〉――今から考えれば、何と狭量な意見だろうか(このあたり詳しくは拙著「恋するラジオ」-ブックマン社-を参照のこと)。