今こそ〈いい音のクラブ〉が必要だ!
前述した日本の伝統的な文化とも言えるジャズ喫茶は、そのオーディオシステムとマスターのこだわりについて、それだけで単行本がいくつもあります。こだわりのヴィンテージから最新のオーディオシステムまで、その店の提供する〈いい音〉は保証されているのです。ほぼすべてのジャズ喫茶には、レコード、CD、SACD、どれかのブルーノート名盤があります。
そして重要なのは、ブルーノート名盤といえば、これぞクラブDJのためのレコードなのです! 選曲とそのクラブで〈いい音〉が体験できるかが勝負です(笑)。ヒップホップが世界中で流行り出した頃、つまり70年代後半からは、クラブのPAシステムも進化して、そのクラブでかけるためだけのレコードのカッティングも流行り、ディスコブームもあり、〈いい音のクラブ〉で音楽とダンスが体験できる空間は、今よりも身近にありました。その場のお客さんに合わせた選曲が大事なのは言うまでもありませんが、そのクラブのスピーカーの音質が気持ちいいチューニングでないといけないのです。
この誌面を借りて世間に言っておきたいのは、〈いい音のクラブ〉! これが今は少ないのです。知り合いのオーガナイザー、ブッキング担当者、DJ、みんなが言います。今はほとんどの店がデジタルコンソールですから、(昔はそこまでできませんでしたが)スペック的にスピーカーの調整があっという間にできます。
〈SACDの復権〉イベントで試みる〈いい音〉のイコライジング
ボク自身はプロの録音/マスタリングエンジニアであり、オーディオマニア、オーディオ評論家の言っている意味がわからない時期が長かったのですが、最近、その文章が昔から大好きな(意見は絶対に合わないと思っていた)吉祥寺のジャズ喫茶の名店MEGの元店主でジャズ評論家の寺島靖国氏、友人でオーディオ評論家の山本浩司氏と、ある音のいいクラブで〈SACDの復権〉イベントを始めました。

実はその時、〈BLUE NOTE SA-CD HYBRID SELECTION〉から2024年9月発売の5枚をMidasのアナログコンソールでビシッとイコライジングして(写真)、しかもモノラルにして客入れ時のBGMにかけたのです。それは、まさに〈好きな音楽をより良い音で聞く〉ことであり、耳の肥えた来場者の評判もとても良かったのでした。
このイベントのお客さんは若者も多く、また同様のイベントを希望する方がほとんどでしたので、第3回でもモノラルにして客入れ時のBGMにかけようと思います。6月26日に代官山の晴れたら空に豆まいてにて、作曲家・日向敏文さんの『The Dark Night Rhapsodies』の発売を記念したトーク&リスニングセッションがあり、ボクが客入れ時のDJをやるのですが、リー・モーガン『The Sidewinder』をSACDで少し大きめな音でかけようと思います。
〈いい音〉のクラブで〈いい音楽〉をかけるのは楽しいのです。ボクは録音と並行して、80年代はよくライブのPA(FOH)やアーティストのツアーもやっていました。最初にやることはモニターのチューニングです。録音スタジオでもミュージシャンやクライアントのOKをもらうには、そこのモニターからプレイバックされる音が良くできないと仕事は来ません。僭越ながら、スピーカーのセッティングやクラブの音響調整は得意な仕事です。現在、映画館やクラブの音響設備はデジタルでシステムが組まれていることが多く、15分もあれば改善することができます。
さて、時は2025年、円安の影響もあり、外国人旅行者数が日本人海外旅行者数を上回るなど、インバウンドは急速に増加しています。中にはTOWER VINYLのようなレコード店やオーディオショップを下調べした上で回っている観光客もいるようです。なので、例えば、鴨川のほとりに体験型の現代版ジャズ喫茶(超音のいいクラブ)を作りたいですね。ボクが責任をもって〈いい音〉を作る音響のアドバイスはできますから。