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――それが〈ringsをレーベルと呼ぶにはややしっくりこない〉という言葉の真意だったんですね。ではここから、ringsの第一弾作品にあたる2枚のアルバムのことをうかがっていきたいと思います。まずは、そのdublabの創始者であるフロスティとデイデラスによるユニット、アドヴェンチャー・タイムのアルバム『Of Beyond』について。

ADVENTURE TIME 『Of Beyond』 rings(2014)

「これも実は録音は1年以上前に終わっていて。ただ、そのときはリリースの相談を軽くされていたくらいで、cordeから出すかどうかもまだ決めていない状態でした。

〈いつ頃出せそう?〉みたいな話をしているタイミングで、今回東京で開催された〈Red Bull Music Academy〉のプレ・イヴェントである〈Weekender〉が昨年11月に都内の数か所で行われたんです。その一環で、dublab.jpのコーディネイトで渋谷WWWのイヴェント〈Beacon In The City〉を担当することになって、フロスティ以外にもう一人海外からアーティストを呼べるという話だったので、(フロスティとは大学時代からの付き合いである)デイデラスに来てもらって。2人はアドヴェンチャー・タイムとしても活動していたので、彼らのライヴを企画しました。

そのときのお客さんの反応を見たらすごくよくて、そこから本格的なリリースの話に繋がっていった感じですね」

――なるほど。ではアドヴェンチャー・タイムのサウンド面については、どのような特徴がありますか?

「2003年にプラグ・リサーチからリリースされたファースト・アルバム(『Dreams Of Water Themes』)がすごく好きだったんです。2人ともかなりのレコード好き人間で、レコードのサンプリングをもとに制作した、〈船で海を旅する〉ことをテーマに掲げた作品でした。それで今回のアルバムは宇宙に行くことをコンセプトにしていて、ジャケットに星座が使われていたり」

――タイトルが〈Of Beyond〉ですもんね。

「東京でのライヴではさすがに実現できなかったんですが、LAのショーではチープな宇宙服を着て、手作りの宇宙船のコックピットのなかで変な仮面を被ってパフォーマンスしていたんです(笑)。でもそれが、〈新しい音楽を探す旅〉のような部分にリンクしていて、そういったストーリーが『Of Beyond』にはあるんですよ」

アドヴェンチャー・タイム『Of Beyond』収録曲“Sea of Tranquility”のミュージック・ビデオ

――サンプリングのベースとなっているのが、いろんな国の音楽やレコードなのかな?とは聴きながら思っていたのですが、コンセプトの話を聞いて腑に落ちました。少し作品の話からは逸れてしまいますが、そもそも原さんはdublabとはどのような形で出会ったんですか?

「僕がsoup-diskをやっていた当時、まだdublabがLAで始まっていない98年か99年頃だったと記憶していますが、フロスティから突然連絡があったんです。〈君のレーベルの音源が面白いからこっちでいろいろ紹介してるんだけど、今度東京に行くから会わない?〉と。

それで彼はノーバディー(LAのプロデューサー/トラックメイカー/DJ)と一緒に来て、彼もdublabの一員なんですが、Onsaというレコード・ショップがまだ下北沢にあった時代にそこで2人でDJをやって。フロスティには、そのときに初めて会いました。そしたら彼が、その頃に僕がsoup-diskで出していたRIOW ARAIだったりSuzukiskiだったりをすごく聴いていて、本当にLAでも紹介していたんだという事実に驚いて。

そのときに〈今度ネット・ラジオを本格的にスタートするんだ〉という話を聞かされたような記憶があります」

――それがdublabだったと。

フロスティ(左から2番目)とdublab.jpのスタッフら

「彼はLAに戻ってから、日本の音楽シーンを紹介する文章をどこかのオンライン・マガジンに載せていて、そこには渋谷系だったり僕らのようなインディーについての情報が書かれていて、〈この人はすごく面白いな〉と。それがフロスティと知り合ったきっかけですね」

――フロスティは日本に興味があったんですね。彼は和モノのミックスCD(『SWEATY SURFER - 汗だくのサーファー - ジャパニーズグループサウンズとピンク映画音楽』)も出していますもんね。

「彼がすごいのは、いろんな場所で友達を作るのがうまいんです。世界各地のいたるところに知り合いがいる。そこからさまざまな音源を紹介してもらっているみたいですね」