憧れのボーズを、暮らしの真ん中に置く
今ではスマートフォンを取り出し、アプリを開けば、またたく間に世界中の音楽にアクセスできる。イヤホンを耳に入れれば通勤の時間に、あるいはカフェなど屋外で過ごす時間に、自分だけのリスニング空間がつくれる。だが一方で、家に帰ってから部屋でゆっくりと音楽を聴く習慣は少し遠いものになっていないだろうか。
ボーズが発売した〈Bose Lifestyle Ultra Speaker〉は、その楽しさをもう一度、身近なものとして思い出させてくれるワイヤレススピーカーだ。価格は税込5万5000円。Wi-FiとBluetoothに対応し、スマートフォンの音楽を気軽に再生できる。しかも、ただ便利なだけではない。コンパクトな筐体から、部屋の空気を一変させるような、ボーズらしい豊かなサウンドを響かせる。
ボーズのLifestyleシリーズは1990年代に登場し、2000年代初頭にはDVD再生やホームシアター需要の高まりとともに、プレミアムな一体型ホームエンターテインメントシステムとして存在感を強めた。大がかりなオーディオ機器を並べなくても、映画や音楽を部屋いっぱいの音で楽しめることから、大いに人気を集めた。
久しぶりに本格的な再始動を遂げる今回のLifestyleシリーズは、そのコンセプトを現代の音楽生活に合わせてアップデートした。中でもこのUltra Speakerは、最も導入しやすい1台だ。同シリーズのサウンドバーやサブウーファーを組み合わせてホームシアターシステムに発展することもできるが、まずはこの小さなスピーカーをリビングや書斎、ベッドサイドに置いてみる。それだけで、スマホの中に閉じ込めていた音楽が生活空間の中に解き放たれる。
音楽ファンにとってうれしいのは、ワイヤレス再生だけでなく、3.5mmのアナログ入力を備えていることだ。たとえばアナログレコードプレーヤーやCDプレーヤーをケーブルでつなげば、様々な音源がこのスピーカーで楽しめる。ストリーミングで新しい音楽を探し、気に入った作品はレコードやCDでじっくり聴く。そんな聴き方をしている人にとって、Ultra Speakerはデジタルとアナログの橋渡し役にもなる。
Ultra Speakerのサウンドは、ボーズらしい低音の存在感も魅力だ。小型スピーカーは低音が軽くなりがちだが、本機はサイズから想像できないほど、ふくよかな鳴り方をする。ビートの芯がしっかりと立ち、ボーカルは前に出る。楽器の演奏もまた、部屋の中に輪郭を持って立ち上がる。音量を上げなくても〈音の密度〉が感じられるところに、ボーズの上手さがある。
デザインもまた、このスピーカーを部屋に置きたくなる理由だ。丸みを帯びたフォルムに、上質なファブリック製のグリルを組み合わせた。オーディオ機器でありながら家具やインテリアによく馴染む。ブラック、ホワイトスモークに加えて、限定カラーの〈ドリフトウッドサンド〉も用意される。このモデルは本体底面にホワイトオーク無垢材のベースを採用した。スピーカーを隠すのではなく、〈見せる置き方〉を探求してみたくなる。

2台のスピーカーを組み合わせればステレオ再生も楽しめる。まず1台で始め、気に入ったらもう1台を追加すればいい。あるいは複数台のLifestyleスピーカーを揃えて、マルチルーム再生のような使い方もできる。カフェなどの店舗に、心地よい音楽を満たす用途にも適していると思う。
あこがれのオーディオは、必ずしも大きなオーディオラックを揃え、複雑な配線を憶えるところから始めなくてもいい。お気に入りの棚に1台のスピーカーを置き、スマホから音楽を飛ばせる環境と、レコードやCDの再生機をつなぐだけで、いつもの部屋がより音楽に近い場所になる。Bose Lifestyle Ultra Speakerは、そんな軽やかな一歩を後押ししてくれる。

山本敦(やまもと・あつし)
オーディオ・ビジュアル専門誌の編集・記者職を経て2013年からフリーランスとして活動。ハイレゾやワイヤレスなど最新技術に対応するモバイル端末やコンシューマーオーディオの音質レビュー、使いこなしに関連する記事を中心に執筆。得意の外国語で海外有名ブランドの開発者インタヴューも数多くこなす。