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変化し続けること

 2025年の夏まで苦しみながらも〈Brat Tour〉で世界を回っていたチャーリーながら、やがて「嵐が丘」のためのレコーディングも実を結ぶことになる。2025年11月に発表した久しぶりのニュー・シングル“House”は、なんとヴェルヴェット・アンダーグラウンドの活動で知られたレジェンド、ジョン・ケイルとのコラボレーション。もともとトッド・ヘインズ監督のドキュメンタリー映画「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」(2021年)を鑑賞して触発されたチャーリーがコンタクトを取ったそうだが、ケイルの嗄れた朗読とチャーリーの軋んだ歌声が実験的なインダストリアル・ノイズの狭間で重なり合う攻めた仕上がりは、『Brat』の次を期待する向きの度肝を抜くものだったかもしれない。

 同曲をリード・トラックとする「嵐が丘」のサントラ『Wuthering Heights』は2026年2月にリリース。作品全体は本編のムードにも則ってストリングスを多用しつつトリップ・ホップやバロック・ポップと形容できるスタイルが重々しさや荘厳さをシアトリカルに演出したもので、いわゆるダンス・ポップ的なノリの良さは皆無。彼女自身が前にいた位置から動き続けて変化している様子を如実に示すものとなった。『Wuthering Heights』自体は全英1位/全米8位のヒットを記録。それに前後して先述の映画「the moment/ザ・モーメント」も公開され、そこでモキュメンタリー的なプロットを通じて描かれた真意と共に次なるチャーリー像の登場に大きな期待を繋ぐこととなったが、その時点で次の準備は万端だったというわけだ。

 冒頭で触れたようなトピックも十分な下地として、5月にはシングル“Rock Music”をリリース。そこで提示されたのは当然のようにロック・ミュージックそのものではなく、ロックについて歌うチャーリーらしいエッジーなポップ・チューンだった。プロデュースを手掛けたのは先述のフィン・キーンとA. G. クックという敏腕クリエイターたち。いずれもPCミュージック発の才能にしてチャーリーとは長い付き合いの名前で、今回のニュー・アルバム『Music, Fashion, Film』も基本は彼らの共同プロデュースによってガッチリと構築されている。ジャケをジョン・ケイル、マーク・ジェイコブス、マーティン・スコセッシという音楽・ファッション・映画の各分野における重鎮たちが飾っているのも興味深い(撮影は先述のザミリ監督)。

CHARLI xcx 『Music, Fashion, Film』 Atlantic/ワーナー(2026)

 セカンド・シングル“SS26”を聴かずとも想像できたように、〈ロック〉なギターを記号として用いつつもニューウェイヴ時代のシンセ・ポップを窺わせるサウンドのトータルな雰囲気は従来のチャーリー像から大きく逸れるものではない。さらにガーリーなパワー・ポップとなった“Wink Wink”(ある世代のリスナーならREBECCAのあの曲を思い出すはずだ)も楽しいフィーリング全開で、いまはそれに続く全貌を聴くのが楽しみでならない。少なくとも、また変貌を遂げた本作によって、チャーリーもまたマドンナやボウイのように変化し続けている存在だという事実を改めて証明することに成功したと言ってもいいだろう。

関連盤を紹介。
左から、映画「嵐が丘」のサントラとなるチャーリーxcxの2026年作『Wuthering Heights』、チャーリーxcxの2024年作『Brat』(共にAtlantic)、チャーリーの共作曲を含むイレニアムの2026年作『Odyssey』(Republic)、セレーナ・ゴメス&ベニー・ブランコの2025年作『I Said I Love You First』(Interscope)、ジョン・ケイルの2025年作『MiXology (volume 1)』(Double Six)、A. G. クックによる2026年のサントラ『The Moment』(A24)、マドンナのニュー・アルバム『CONFESSIONS II』(Warner/ワーナー)