
スラッシュ系リフで押し切る異色な“Liberate Your Grief”
――その次に書いた曲はどれですか?
Keija「1曲目の“Liberate Your Grief”ですね。これはKenの状況を意識せず、Grave to the Hopeらしい1stの流れを汲むメタルナンバーを書きました。1曲目にするつもりで書いた曲ですね。その勢いで2曲目の“Shard of Glass”も書きました」
――“Liberate Your Grief”は“The Sad Coffin”から時間を置かずに書けたんですか?
Keija「いえ、1年ぐらい空きましたね。精神的なショックもあって……。Veiled in Scarletをやろうと思っても、曲が出てこなかったこともありましたし。悲しい気分のときって曲が出てこないんですよね。やっぱり、テンションが上がっているときじゃないと出てこない。それが1年ぐらい続いて、それ以降はスムーズでした」
――曲が書けたきっかけはあったんですか?
Keija「ポンッとできたので、特にきっかけはなかったんです。1年空いてしまったあとにKenとミーティングしたんですが、そのときはまだお子さんの問題もなかったので〈今年こそやろう〉という話をしたんですよ。そこで火がついて、できたのが“Liberate Your Grief”なんです」
――Kenくんはこの曲を聴いて、どんな印象を抱きましたか?
Ken「最初に思ったのは、SERPENT時代から振り返ってもKeijaさんらしくない曲が来たなということでした。攻めている感じが強くて、テンポもめちゃくちゃ速いので珍しいなと。メロディよりリフが印象的で、僕もその勢いに乗って歌詞より歌のラインが先に浮かんできました」
Keija「たしかに僕もGraveっぽくないかなと思ったんです。あまりにもリフで押しすぎているので。でも、逆にそのほうがいいかなって考えに変わったんですよね。Veiled in Scarletとの差別化もできますし。僕はスラッシュメタルにも影響を受けているんですが、Veiled in Scarletではそれをあまり出していないので、Graveで出すことにしました。でも、泣かせるところはしっかり泣かせないとダメやなって思いがあるので、サビと大サビはメロディアスに仕上げでいます」
――4曲のなかでは異色な曲だと思いました。泣かせるところを全面に出してもいいところを、リフを押し出しているので。
Keija「あえてそうしたところはありますね。甘くならないようビターに抑えています。あと今回は、作りをシンプルにすることを意識しています。いままではサビを転調させて繰り返すとか、そういう展開があったんですが、よりシンプルにしていく考えが強かったですね」
――それは何か理由があって?
Keija「年をとるごとにシンプル・イズ・ベストやなって考えに変わったんです。1曲のなかで何回も繰り返して聴かせるより、パッと終わらせて1曲を何回も聴いてもらうほうがいい。1stの頃からその考えになっていましたね」
激動な人生の最期に魂が解放される
――Kenくんの歌詞は“The Sad Coffin”のときより冷静に書かれている印象です。
Ken「この歌詞を書いたのは世界も日本も不安定になりはじめた時期で、個人的な苦しみを経験したあとで生まれ変わるというか、〈生きる〉という枠のなかに戻っていくイメージが、このスラッシーな曲を聴いて湧いてきたんです」
――何か決め手になった出来事があったんですか?
Ken「身近なところでも揉めごとが多かった時期でしたね。僕は景気に左右される貿易関係の仕事をしているので、その打撃が大きかったこともありました。国の規制はどんどん厳しくなっていくし……」
――個人的にも世界情勢的にもネガティブなことが増えた時期だったと。
Ken「そうですね」
Keija「タイトルだけ聞くとポジティブな曲に感じますよね」
Ken「でも、この歌詞を書いた時期も連続して人が亡くなっていたんですよ。僕はいま三重に住んでいるんですが、こっちに来て仲良くなった方が“Liberate Your Grief”を作りはじめたタイミングで急に亡くなって。僕が通っていたご飯屋さんの方で、お仕事ももらっていた方が急に倒れて亡くなったり……。個人事業主どうし〈孤独な戦いやぞ〉って相談をよくしていた仲やったので、そのことも思い出して、悲しいやら憤りがあるやらで辛かったですね。母の弟も亡くなって、同級生も亡くなって……そういうことが続いていました」
Keija「今回、すべての歌詞にKenのリアルな経験が反映されているんです」
――年齢的にそういうことは増えますが……。
Ken「多すぎましたね。僕の周りから人が消えていく感覚が重なって、孤独感に苛まれました」
Keija「でもKenと接してて感じたのは、それとは裏腹な前向きさなんですよ。感情を音楽で表現しようという方向を向いていたので、そこは救いだと思いました」
――この曲も前向きな終わり方ですよね。
Ken「辛い先には解放があるのかなと。僕の周りで亡くなった人たちも激動の人生を送っていて、最期に魂が解放されるというか、そういう感覚であってくれれば、という願いを込めています。結局、絶望だけじゃ人は生きられないですからね。光がないと」
Keija「大きく言えば、それを表現したEPだと思います」
Ken「4曲以上ずらっと並んでいたら、重たすぎたかもしれません」