(左から)Keija、Ken

伝説的メロディックデスメタルバンド、SERPENTの中心メンバーだったKen(ボーカル)とKeija(ドラムス/キーボード、現Veiled in Scarlet)。2人による新たなメロディックデスメタルプロジェクトがGrave to the Hopeだ。2020年のデビューアルバム『PROVIDENCE』から5年半、彼らが待望の2作目となるEP『LIVING IN DESPAIR』をついに完成させた。KOUTA(THOUSAND EYES)がギターソロでゲスト参加し、美しくも激しいサウンドを繰り広げる今作だが、その背景には壮絶な苦難や喪失の物語があったという。ライター土屋京輔が2人に話をじっくり聞いた。

Grave to the Hope 『LIVING IN DESPAIR』 Walküre(2020)

 

姉の死と息子の障害に直面したKenの現実

――5年半ぶりの作品になりますが、前作以降Grave to the Hopeは何をしていたのでしょう?

Keija「そう聞かれると思って自分のXを見返していました(笑)。3年前に〈今年は何かやります〉とポストしていたんです。そのとき、Kenとミーティングしてフルアルバムを出そうと話していたんですよ。で、僕は曲を作りはじめるんですが、Kenの身の周りが辛い状況になって作業が進まず、その状態が3年続いたんです」

Ken「厄年に入った瞬間、次々と周りの人が亡くなり、仲のよかった姉が入院して10日で急に亡くなることも起きました。ペットも亡くなり、さらに去年の6月に息子が生まれたんですが、滑脳症だったんです。医療的ケアが必要な状態で生まれたので、気管切開と胃瘻とシャント手術をして、重度心身障害の息子を育てていくことになりました。それで身動きがまったくとれなくなってしまい、いまに至るという……」

――壮絶な期間だったんですね。

Ken「なんで僕なんだろう? なんで僕の息子なんだろう?という思いはあります……。人生って個性とドラマがあるものなんだな、とも思いました。今作の制作タイミングと重なったことは悪いといえば悪いんですが、いい部分もあったんです。というのも意欲的に歌詞を書けたので、人生の記録としてこの作品を残せたんですよ」

――新作の歌詞を眺めたとき、何か転機になる事件が起こったのではと思ったので、合点がいきました。

Ken「さすがですね。SERPENT時代を含め、これまでのキャリアからかけ離れた僕にとっての現実、僕だけの現実が描けたと思います」

――パーソナルな作品なんですね。KeijaくんはKenくんの様子を間近に見ていて、どんな気持ちだったんですか?

Keija「そんな状況においてもKenにとって音楽は大事なものだと知っていたので、Grave to the Hopeで歌うことでマイナスな感情も浄化できるんじゃないかと思っていました。だから、前向きにやれると捉えていましたね」

――曲作りにはどの時点で取りかかったんですか?

Keija「3年前のミーティング以降です。最初にできたのは“The Sad Coffin”でした。この曲ができたタイミングでKenのお姉さんが亡くなって、ドンピシャのタイミングで曲を送ってしまったことにもショックを受けました」

Ken「亡くなった当日にあのバラードが送られてきたので、運命を感じました。僕の生きた証、僕の人生を刻める曲がいいタイミングで来た、と前向きに捉えましたね」

――この“The Sad Coffin”自体は、どんな曲を作ろうと考えていたんですか?

Keija「曲を作りはじめた当初は燃え尽き症候群のような状況だったんです。前作の後にVeiled in ScarletでSERPENTの楽曲をリレコーディングしたアルバム『Reincarnation』の制作ですべて出しきった感もあって、いいアイデアが思い浮かばなかったんですよ。でも、最初にイントロとサビができてKenに送ったら〈めっちゃいいじゃないですか!〉と反応が返ってきたので、とりあえず形にするところから始めました」