ガラスを踏んで歩くような呼吸苦を表現
――2曲目の“Shard of Glass”は、“Liberate Your Grief”を書いてからほどなくして生まれた曲とのことですが。
Keija「リフで押す“Liberate Your Grief”の流れで作って、イントロができた時点で、これは2曲目だなと。ただサビがぜんぜんできなくて、10回以上作り直しましたね。もっとメロディアスな感じにしていたのですが、硬派なリフに合わなくて、最終的にいまの形にまとまりました」
――具体的に思い浮かべていた光景はあったんですか?
Keija「いえ、全体をイメージして書きましたね。最初はシングルで出す予定だったので、そのイメージで3曲のバランスだけ考えていたんです。1曲目はスピードが速い曲、2曲目はミドルテンポで、という流れを考えていました。
僕は曲を作るとき、僕然と色で考えるんです。〈これは赤い曲〉〈こっちは青〉というイメージで作るんですけど、“Shard of Glass”は青ですね。あと、Kenに〈この曲どう?〉〈このリフどうかな?〉という感じでアイデアをちょこちょこ送っているんですが、〈いいんちゃいます?〉みたいな意見をもらうと〈じゃあこれでいこう〉と」
Ken「いつも課題をもらっている感覚です。〈これをどう歌うのか?〉〈お前には歌えるのか?〉という感じで(笑)」
――Kenくんは“Shard of Glass”を聴いて、どんなイメージを持ったんですか?
Ken「僕のなかで、この曲のカラーは白やったんですよ。飛び跳ねる感じのリズムを聴いてパッと思い浮かんだのが、姉の癌が子宮から全身に回ったあとの肺のレントゲン写真を見せてもらったときのことでした。肺のなかに、バラバラに砕け散ったガラスの破片が広がって突き刺さっているような写真だったんです。僕も昔、肺気胸で死にかけたことがあって、息子も気管切開をして自発呼吸がままならない状態なので、あの写真を見たときに呼吸の苦しさは想像できました。あくまで僕の感覚ですが、呼吸できない感覚ってガラスを踏んで歩くようなものなんです。その〈生きているだけで苦しい〉という感覚を歌詞で表現しています」
――Keijaくんはどう感じました?
Keija「歌詞に関しては、当時のKenの生々しい感情が如実に現れている内容だと思います。痛々しさが伝わりますね。
音楽的には、歌ができたときはばっちりだなと思いました。けっこうやりとりをした記憶はありますが、スムーズでしたね。最初、複雑に乗せていた歌を〈もっとシンプルなほうがいいんじゃないか〉と言って、どんどんシンプルにして。ボーカルのラインは、昔から阿吽の呼吸でスムーズに決まりますね」
――この曲の歌詞に気になる単語が2つあるんですよ。〈Sky〉と、“The Sad Coffin”にも出てくる〈floating〉という言葉です。何か繋がりがあるんじゃないかと思いました。
Ken「この曲の歌詞を書いたときも、姉のことがかなり大きかったんです。重力のない世界に行って、魂だけ浮遊していることをイメージしています」
生と死、始まりと終わりを闇と捉えるか、光と捉えるか
――最後にできたのがタイトルトラックとのことですが、当初3曲入りシングルを想定していたところに1曲加えることになったので、違うタイプの曲を入れようという判断があったのでは?
Keija「はい。このEPを今年リリースすることが決まっていたので、それを見据えて書いた曲です。最後はメロディアスに締めたかったので、僕としてはSERPENTのテイストを入れたつもりです。
あとKenの状況を知っていたので、光が差し込むイメージを表現したいという思いもありました。ジャケットにある地平線から太陽の光が差し込む画のイメージをサビのメロディで描きましたね。いままであまり使わなかったコード進行になっていると思います」
――この曲を聴いて、Kenくんはどう感じました?
Ken「この曲を聴いたのは疲労がピークやったときで、とんでもなく速い曲が来たなと(笑)。頭のなかのペースと合致しないぐらい速かったので、そこに歌詞をぶつけるなら、僕のなかでぐちゃぐちゃになっていた世界を描こうと思いました。なので、この曲がいちばん妄想的と言いますか、暴力的でもあり、勢いでバーッと書いた歌詞なんです。歌に当てはめていったときに書き直そうかと思ったんですが、このEP自体に当時の勢いをそのまま乗せたかったので、手直しせずに書き進めました。
メロの部分の歌詞は、Keijaさんも意図していないものだと思います。希望を持てるように〈解放〉という言葉を使って亡くなった方々に捧げつつ、僕のぐちゃぐちゃになった現状を重ねて……。障害者だろうと貧乏人だろうと金持ちだろうと、みんな死んだら同じところに行くということは自分にとって救いなんです。そこには平等不平等もない、という思いを込めて書いた歌詞です」
――達観した考え方ですね。〈From darkness to the abyss〉という逃げ場のない一節には、Kenくんが相当落ち込んでいる状態だったことを感じました。
Ken「深淵のことを差していますからね。生と死、始まりと終わりはすべてのものにあるので、それを避けられない闇と捉えるのか、むしろ光と捉えるのか。考え方は人によって違うので、リスナーの聴き方次第かなと思います」
――実際にレコーディングで歌った手応えはどうでしたか?
Ken「時間がない制作だったので、多少ミスしてもそのまま勢いで押し切りたいという気持ちでした。そういう意味では、いいものを作れたんじゃないかなと。作り込んだというより、全面的に勢いとリアルさが出たという部分で納得できる作品になりましたね」
Keija「今回はありのままのリアルすぎる内容なので、思い入れや精神面がいつもと違いますね。重たいと感じる人もいるかもしれませんが」
Ken「不思議な話ですが、完成した『LIVING IN DESPAIR』の音源を家で流していると、普段ほとんど動けない息子が反応するんですよ。寝返りもほぼ打てない状態なんですけど、音がする方向を向こうとするんです。何か伝わるものがあるのかなと」
Keija「魂がこもっている作品ですから、魂レベルで感じるんでしょうね」
――Kenくんがすべてを曝け出しているという意味でも、これまでとはまったく違う作品ですよね。
Ken「僕が持つ闇が全開になっていると思います。僕より辛い人もいっぱいいると思うので、自分を励ます意味でも作詞を通じてネガティブなところからポジティブなところに持っていく作業をしました」
――よくぞ完成させてくれました。自分の気持ちを吐き出せる場があった、ということでもありますよね。
Ken「リアルタイムで歌詞を書いて手直しせず、そのまま歌を乗せることができましたからね。ある出来事が起こって、時間が経ってからそれについて書くこととはぜんぜん違うと思います」
Keija「本当の意味での慟哭、まさに魂の叫びですね」