ルフェビュールはフランスが生んだ天才ピアニストであり、同時にリパッティフランソワを育成した名教授でもあった。その演奏は音色が多彩で緩急強弱の対照が激しく、異常な閃きに満ち、同時に極めて洗練されている。これはBBC放送音源の初CD化で、ドビュッシーの曲集など他では聴けない彼女の演奏曲目も入っている。冒頭のラヴェルから躍動的なリズムが輝かしい生命力を放つが、一転して深い瞑想となるなど曲想変転の妙が大胆に描かれる。フォーレの夜想曲での想像力の豊かさ、舟歌での憧れへの飛翔も抜群。各声部が異なる音色で表現されたドビュッシーも、小品の一つ一つが生き物のように息づく。

【参考動画】イヴォンヌ・ルフェビュールによるドビュッシー作曲“版画”の演奏