ロシアの巨匠アレクセイ・ゲルマン渾身の遺作は破格の「べちょべちょ」!
巨匠というものは、年を経るごとに円熟味を増していくものだが、本作の監督アレクセイ・ゲルマンは、初期から円熟味のある傑作を作り、作品を経るごとにスケールから表現からすべてが加速度的にパワーアップし続けてきた。特に前作『フルスタリョフ、車を!』。かのマーティン・スコセッシをして 「とにかく凄いのだが、何が何だかわからない」と言わしめた、矢継ぎ早に画面に出入りする情報量とそのスピード、それら混沌を正確無比に統御する演出の密度。全てが破格な傑作だった。
そんなゲルマンの次回作がエンターテイメント志向の「SF」と聞かされ、「本当かよ!」と突っ込んだ人も多かったに違いない。
しかし、待てども待てども新作完成の話はでない。そうこうしているうちに2013年ゲルマンはこの世を去ってしまう。
幸運にも映画はほぼ完成されていた! 撮影に6年! 編集に5年! 最終工程をやはり監督である息子が引き継ぎ、遺作となった『神々のたそがれ』が世界に登場した!
ストルガツキーの『神様はつらい』が原作と確かに「SF」だった。エンターテイメント志向では、多分ない。地球から離れた殆んどロシアの中世のような星を舞台に、そこに暮らす者たちの愚行が177分に渡って映し出される。泥、糞尿、臓物、体液といった 「べちょべちょ」のオンパレードとともに。その「べちょべちょ」の物量たるや凄すぎて笑ってしまうレベルである。破格の「べちょべちょ」である。
無論、「べちょべちょ」な世界が、私たちの世界と鏡像であることは今更言うまでもないだろう。
なお、ブルーレイにのみ「べちょべちょ」の舞台裏を収めたドキュメンタリーを収録! こちらも必見!