(左から)パスピエ・露崎義邦、Yasei Collective・中西道彦

 

Mikikiブログ〈ヤセイの洋楽ハンティング〉でお馴染みのYasei Collectiveが、自身のレーベル=Thursday Clubからの初作品となるニュー・シングル“radiotooth”をリリース! Mikikiではこれを記念し、ヤセイブログのスピンオフ企画として各メンバーをフィーチャーした短期集中対談連載〈ヤセイの同業ハンティング〉をスタートしています。メンバーそれぞれがいまバンドマンとして&同じ楽器を演奏するミュージシャン(同業者)として尊敬する人たちを招き、あんなことやこんなことをディープに掘り下げていく全4回!

とうとう最終回となる第4弾は、Yasei Collectiveの中西道彦と、間もなく東京・日本武道館公演を控えるパスピエの露崎義邦によるベーシスト対談です! L'Arc~en~Cielやジャミロクワイなど共通する音楽的なルーツの話からパスピエの顔出しにまつわる理由まで、今回も長編となりました。饒舌な中西と冷静で着実な語り口の露崎による、熱きベーシスト・トークをお楽しみください!

〈ヤセイの同業ハンティング〉
★Vol.1 別所和洋(Yasei Collecitive)×芹澤優真(SPECIAL OTHERS)はこちら
★Vol.2 松下マサナオ(Yasei Collective)×伊藤大助(クラムボン)はこちら
★Vol.3 斎藤拓郎(Yasei Collecitive)×木幡太郎(avengers in sci-fi)はこちら

Yasei Collective radiotooth Thursday Club(2015)

 

多感な時期に聴いた音楽はいつになっても抜けない

――まずはお2人の出会いと、中西さんが露崎さんに対談相手として声をかけた理由を訊かせてください。

中西道彦(Yasei Collective)「初めてちゃんと話したのは今年の頭くらいだよね」

露崎義邦(パスピエ)「初めて会ったのは2年くらい前になるんですけど、新宿のMARZで。対バンをしたのが最初で、リハの段階で〈なんだこのバンドは!〉という衝撃を受けました。本番もフロアでがっつり観させてもらって。フロアでいちばん盛り上がってたのは僕なんじゃないかってくらい(笑)」

中西「ホントに!?」

露崎「ホントに。そこから(ヤセイの)動画を漁ったりして」

中西「嬉しいっす」

露崎「で、その時に観た動画でいちばん刺さったのが、“Goto”……ゴートゥー? ゴトウ?」

中西「ゴトウ!」

露崎「〈ゴトウ〉でいいんですね、どっちなんだろうと思って(笑)」

中西「ヘンなタイトルで……うちのタイトルは全曲ヘンなんだけど(笑)。一応これは人の名前で、よく行くライヴハウスの名物店長みたいな、ゴトウさんという人をイメージして」

露崎「そうなんですか。あと、ニーボディと青山で共演された時のライヴも観させてもらったり。それで今年の頭にお互いのバンドのリズム・セクション同士4人で、ちょっとお酒も呑みつつ新年会セッションみたいなことをやったんです。それ以来仲良くさせてもらってる感じですね」

中西「ですね、はい。(露崎は)年齢はちょっと下ですけど、いまグイグイきていておもしろそうだなと思って、直感で対談させてもらおうと思ったんです」

露崎「ありがとうございます」

――中西さんはパスピエに対してどんな印象を持っていますか?

中西「なんていうんですかね、すごくポップな音楽なんですけど、その裏の裏を見ると難解な部分があるんですよ。〈もっとそこ、簡単にできるんじゃない?〉というところをあえてやらない、みたいな印象があります」

露崎「ヤセイさんもまあ相当難解なことを……」

中西「うちは難解なことを、そのままやる(笑)」

露崎「(ヤセイは)すごく難解で、クセのある4人が音を出し合っている印象だったんですけど。いろいろ動画を観ていくと、ヴォコーダーを使っているとはいえ〈歌もの〉という意識が結構あるのかなと思っていて」

中西「そうなんですよ。インスト・バンドとして括られてはいるんですけど、(インストということは)あまり気にしていない」

露崎「そうですよね。(インストと歌ものの)割合も半々くらいですかね」

中西「そうですね。つゆさんが好きな“Goto”はヴォーカル、ヴォコーダーは入ってないけど、シングルになる曲は結構ヴォーカルをフィーチャーしていて」

――今回の“radiotooth”もそうですよね。バンド自身はあまりインストであることを意識はしていないと。

中西「僕はその意識はないですね」

露崎「曲作りの段階でインストか歌ものかを決めるんですか?」

中西「ほぼ。歌ものの曲はほぼ全部(斎藤)拓郎が書いていて……俺が書く曲もたまにある」

――改めて、お2人それぞれのプレイヤーとしてのルーツをお伺いしたいのですが。

中西「俺はレッチリですね」

露崎「レッチリなんですか! 僕がいちばん影響受けたのはジャミロクワイなんです」

中西「俺もジャミロはすごい聴いていたんだけど、それより前の高校時代に、NHKでやっていた〈サタデー・ナイト・ライヴ総集編〉みたいな番組でレッチリを観て。90年くらいの、彼らがいちばん尖ってた頃の映像で、〈なんだこの人たちは!〉と」

レッド・ホット・チリ・ペッパーズの90年のライヴ映像

 

露崎「フリーが青頭だった(髪の毛が青かった)頃ですかね?」

中西「青……くなかったかな。とりあえず裸だった」

一同「ハハハハハ(笑)」

中西「それで人の背丈くらいの高さでジャンプしてた(笑)」

露崎「ハハハハ(笑)。初めからベースだったんですか?」

中西「俺は3、4歳くらいからピアノをやっていて、ベースを始めたのは高校生くらいの頃」

露崎「レッチリが衝撃でエレべ(エレキ・ベース)を始めて」

中西「そうそうそう」

露崎「ヤセイを組んでから、シンべ(シンセ・ベース)とエレべを両方使うようになったんですか?」

中西「シンべを使うようになったのはいまのバンドを組んでからですね。ある日衝動買いしたちっこいキーボードをリハに持っていって、ブーッて鳴らしたら、〈これ結構いいんじゃない?〉と」

露崎「このバンドにシンべを入れたい、というのではなく、試しに持っていったら……みたいな」

中西「そう。目的を持って何かをするというよりかは、ワーッとあれこれこれ試していくなかで残ったものがヤセイ(の音になる)って感じだから」

露崎「エレべとシンべの使い分けはどういった匙加減でやられているんですか?」

中西「うーん……そうね、難しいんだけど、シンべは基本的にオマージュとして考えていて。例えばジャミロも、“Little L”とか『A Funk Odyssey』(2001年)あたりになると、ほとんど打ち込みみたいになるでしょ。あれを聴いてすごいなと思って。カッコイイと思ったらやりたくなるの。で、やってみただけ(笑)。俺もジャミロはめちゃめちゃコピーしていて、1枚目(93年作『Emergency On Planet Earth』)から3枚目(96年作『Travelling Without Moving』)までは全部コピーした。初代ベーシストのスチュワート・ゼンダーのプレイがカッコ良くて、そのままやりたくなっちゃうんですよね(笑)」

ジャミロクワイの93年作『Emergency On Planet Earth』収録曲“Emergency On Planet Earth”

 

露崎「ハハハ(笑)。雑食的に、いいなと思ったら採り入れるんですか」

中西「すごい雑食だと思う」

――露崎さんもジャミロクワイがルーツということは、やっぱりロックというよりはファンク、ソウルのほうが……。

露崎「そうですね。もともとはL'Arc~en~Cielがきっかけでベースを始めたんですけど、そこからいろいろ聴き漁っていくうちに洋楽へ行って、高校に入ったくらいの頃にジャミロだったり、アース・ウィンド&ファイアやシックといったファンク系のものを聴くようになったんです。やっぱりその頃に聴いていた音楽がバックボーンとしてあるのかなあという気はします」

アース・ウィンド&ファイアの81年作『Raise!』収録曲“Let's Groove”

 

中西「多感な時期に聴いた音楽はいつになっても抜けないよね。年齢は違うけど、ベースを始めた頃に聴いていたものが近い。俺もレッチリの前はラルクを聴いていたし」

――tetsu※の影響力もありますか。

※L'Arc~en~Cielのベーシストでリーダー。現在はtetsuya名義で活動

中西「高校の文化祭でやらなきゃいけないんですよ(笑)」

――やらなきゃいけないって(笑)。

中西「tetsuさんはすごいと思う。いまだにすごいもん。tetsuさんのベース・ラインはあんまりペンタトニックじゃなくて、すごくダイアトニックに忠実で、聴くたびに〈そこ行きたいよね〉と思う。あとグリス※のやり方なんかもいまだに影響を受けているし」

※グリッサンド。弦を押さえたまま指を他のフレットへ滑らせるテクニック

露崎「プロデューサーの岡野(ハジメ)※さんの存在も大きいんですかね」

※L'Arc~en~Cielの作品プロデュースを長きに渡って務めているプロデューサーで、ベーシストでもある。他にもエレファントカシマシやPOLYSICS、MUCCら数多くのアーティストのプロデュースを担当

中西「たぶんそうだと思う。でも最初から上手かったんだろうね。“Blurry Eyes”(ラルクの94年のシングル)の時から上手かったもん」 

露崎「その時代から聴いてらっしゃるんですね」

中西「でもそれは後追いだけどね」

――いまパスピエをやっているうえで、先ほどおっしゃったようなファンクなどのルーツはフレージングなどに影響していますか?

露崎「そうですね。レコーディングをやっていて、そういった(ソウル/ファンクの)ビートになると、エンジニアさんやメンバーから〈そっちは得意そうだね〉と言われたりしますね。まあいろいろな音楽を聴こうという姿勢はもちろんあるんですけど、根本にあるのはそこかなという気はしています」

――今年はいわゆる日本のロック・バンドのなかにも、ダフト・パンク『Random Access Memories』以降というか、ファンクの流れが入ってきたこともあってベーシストに焦点が当たっているイメージがあります。

露崎「確かにそうですね」

中西「ベーシストがそもそもちょっと脚光を浴びているような気がしないでもないんです、最近。どうですか?」

露崎「ここ最近はそうですね。KenKenさんやハマ(・オカモト)くんなどベース・ヒーロー的な方がいろいろと活躍してらっしゃいますし」

――パスピエのベーシストとして意識していることは?

露崎「やっぱり僕らは歌ものをやっているので、そこはいちばん大事にしている部分ではありますね。個人的にはファンクとかダンス・ミュージックが根本にあるし、自分の持っているものを活かすことも大事なんですけど、それ以上にパスピエのカラーにどれだけ染まれるかというところを考えてやっていますね」

中西「でも結構そっち(ファンク)に寄ってない? 俺はそれがカッコイイなと思うんだけど」

露崎「ホントですか?」

中西「わりと横ノリ系が多いというか。しかもそれをバンドっぽくやっているのが2015年的な視点から見てすごくいいなと思って」

パスピエの2015年作『娑婆ラバ』収録曲“裏の裏”

 

露崎「バンド感というのは意識していますよね。ある種、バンドでは再現不可能なんじゃないかというところを再現しているというか」

中西「(ヤセイの場合だと)人ができないことをまずやろうっていう、それがモチヴェーションになっている部分が少なからずある。やりたいと思ったこと(プレイ)を、そのままやれるように。うちの拓郎がソフトで〈なんだこれ〉みたいなフレーズを打ち込んだデモを持ってくるんですけど、それをわりとそのまま再現したりしていて」

露崎「作曲者からの、他のパートへの提示はあるんですか?」

中西「それがもしダサかったら完全にぶった切るんだけど、〈これいいじゃん〉ってなると(どんなに難しくても)やる(笑)。妥協してそれっぽくやることはない」

 

ベーシストとして、メンバーに〈いいね〉と言ってもらえることの意義

中西「自分のなかでシンセ・ベースとエレキ・ベースの使い分けというのがもうわからなくなっていて。ヤセイとは別にZa FeeDoというバンドをやっているんだけど、どちらかしか持って行ったらダメと言われたらシンセ・ベース持って行くというくらい、エレキ・ベースを弾きたいという気持ちがあまりなくなっちゃって(笑)」

Za FeeDo“UBU”

 

露崎「ミュージシャンとしての出発点がピアノだから、持ち替えがすごくシームレスなんですかね」

中西「やっぱり鍵盤を弾くなら弾くで、あまり半端なことはしたくなくて。同じスタイル……という人はなかなかいないと思うんですけど。でも最近ちょっと増えてきてる、シンセ・ベースの人が」

露崎「確かにそうかもしれないですね」

中西「チッ!と思って見てる(笑)」

露崎「ハハハ(笑)」

中西「そういう人への当てつけでもあるんだけど。これはたぶん普通のベーシストには弾けないから。〈なんだこれ〉って感じになっちゃうと思う」

露崎「エレキ・ベーシストが弾いている鍵盤プレイというのではなく、両方ちゃんと弾ける人という印象がすごくありますね」

中西「最終的にはどっちでもいいんだけどね(笑)」

――それこそMikikiのヤセイブログでは中西さんはティム・ルフェーヴルを紹介していましたが、速弾きのような派手なプレイではなく、サウンドの独創性のほうを大事にしているのでしょうか。

中西「それはそうですね。でもティムは本当にベーシストなんですよ、エレキ・ベーシスト。まあウッド(・ベース)も弾くけど。あの人のエレキ・ベースの音はもう〈ティム〉というか。あれにはすごく影響を受けているんですけど、僕にはどう弾いてもあの音は出ない。でも、どう弾いても出ないという時はシンべとリング・モジュレーター※があると安心なんです。あのへんのNYの人たちはリング・モジュレーターをすごく使ってるんですよ。本人も言っていたけど、LAなどでのギグで使うと、ヘンな音がするからみんな〈なにその音?〉みたいなになるんだって。でも日本ではSUGIZOさんあたりが普通にずっと前から使っていたり、意外と使ってる人はいるんですよ」

※シンセサイザーやギターで使われる、ざっくり言うと音を金属的な質感に変えるエフェクター

SUGIZOの2011年ソロ・ツアーのライヴ映像

 

――露崎さんは、音作りの面で常にこだわっている部分は?

露崎「そうですね、こだわりとしてはやっぱり、エレキ・ベースの良さのいちばんオーソドックスな部分をいかに最大限に発揮できるかを考えていますね。まあフィルターなどを使ったりはするんですけど……他のメンバーにいいねと言ってもらえることの喜びが大きいので」

中西「すげえわかる、それ」

露崎「まあベーシストあるあるかもしれないですね」

中西「やっぱそうなんだね。ベーシストはどうしてもそうなっちゃう」

露崎「他のプレイヤー、メンバーが演奏していて気持ち良い、歌いやすいと言ってもらえるのは嬉しいことなんで」

中西「最終的にいちばんそういう状態が落ち着くような気がする、ベーシストは」

露崎「ベーシスト的にもカッコイイですよね、パートの本来の意味というか」

――もちろん自分がこういう音を鳴らしたいというのももちろんあるけれども、最終的にはバンドとして、曲としていちばん良い形になった時がいちばんと。

露崎「自分のアプローチも失くさないようにしつつ、ただそこに執着しないようにはしていますね。こだわりがありすぎると全体が見られなくなることもありますし。そうならないために、〈これは違うね〉と(他のメンバーから)言われたら良い意味ですぐ折れる。他のパートやヴォーカルに対するベースのヴィジョンが以前より見えるようになってきたのかなとは思います」

中西「俺も、一応ヴォコーダーを歌ものと踏まえると、ヴォコーダーのレンジや位置を鑑みてベースはこう弾いたほうがいいんじゃないかとか考えますね」

露崎「ヴォコーダーになってくると難しいですね」

中西「普通の歌と違うからね。俺、本当は歌ものがめちゃめちゃ得意なんですよ。でもヴォコーダーを歌ものとして演奏するというのは結構大変。でも俺は歌ものとして演奏している部分がデカイ」

露崎「生の歌ものバンドとヤセイとではフレーズなどを変えるんですか?」

中西「自分ではまったく意識していない。常に何も考えないようにしてますね、感覚で出すようにしてる。でも(ヤセイでは)やっていくうちに、どんどん曲のアレンジが変わることがよくあるんですよ。そういうのってある? 例えばライヴ・セットになった時とか。ヤセイは結構変えちゃうんだよね」

露崎「あ、そうなんですね。ライヴ・エディットというか」

中西「うーん、ライヴ対応ってわけでもないんだけど」

露崎「でもうちのバンドも、ウワモノ楽器はだいぶ重なっていたりするので」

中西「あ、確かにそうだね。(ライヴで)どこをどう弾くか、みたいな?」

露崎「ありますね。例えば鍵盤のパートがなくなったぶん、ベースは音を足したり引いたり、みたいなことが多少ありますね」

――ヤセイはライヴだとインプロヴィゼーションの要素が入ってくるんですか?

中西「インプロが入ってくる部分ももちろんあるんですけど、やってるうちにどんどん変わっていっちゃう」

――単純にアレンジとしてこっちのほうがいいんじゃない?みたいな。

中西「そうですね。曲が出来上がった時はこれがベストだと思っていても、自分のなかでのベストはどんどん変わっていくので」

露崎「それ、例えばツアー中でも変わっていっちゃうんですか?」

中西「ツアー中に結構変わるんだ。ツアーの1本目は演奏がちょっとブワッとしてる。で、ツアー終わるとギューッて感じになる。同じ曲をやっていても、インプロの要素が入っていない曲でも、ツアーの1本目と30本目とでは全然違う……んじゃないかなと。少なくともやっているほうはそう感じてる」

露崎「30本やると結構変わりますよね、絶対。僕らはそこまでの本数のツアーはやったことないんですが」

――先ほどリング・モジュレーターの話が出ましたけど、中西さんのエフェクト使いはかなり凝っていておもしろいものが多いなあと思います。

中西「俺、生ベースをどう何を弾くというよりかは、こう言ってはあれですけどサンプリング的な感じで考えていて。だから俺はプレべ(プレシジョン・ベース)を使ってるんだと思います。プレべって指を離した時に独特の音がするじゃないですか。あの音がただ欲しいというサンプリング的な意味で使ってる。あとオクターヴァーをめちゃめちゃ使うのも、オクターヴァーを踏むと、ヒップホップのサンプリングで聴けるような録った音をちょっとピッチ落として使ってる感じが出るので、そういう音が欲しくて使っていたり、シンセ・ベースも同じようにどこかで聴いたようなシンセ・ベースのパートが欲しかったり、パワーが欲しい時に使う。リング・モジュレーターもそういった感じで」

――自分のなかでの〈これ〉というのを再現するためというか。

中西「ヒップホップがすごい好きで、そればかり聴いてる時期もあったぐらいだから」

露崎「さっき言っていた、かつて聴いていたものへのオマージュだったりもするわけですか」

中西「そうですね、それはすごいありますね」

露崎「“SUNDAY”の真ん中でリフを弾いてるところがあるじゃないですか。あれはオクターヴァーですか? すごくおもしろい音がしてるなと思っていたんです」

Yasei Collectiveの2011年のシングル"SUNDAY"

 

中西「あれは何を使ってたっけ……リング・モジュレーターをちょっとかけたり、オクターヴァーもかけてる。基本的に俺はそんなにフィルターを使わなくて、オクターヴァーとリング・モジュレーター、あとディレイ。でもリング・モジュレーターも最近全然使わなくなった。足元にはディレイ2個と、オクターヴァーが3個と、歪み(系のエフェクター)がいま1個かな」

露崎「オクターヴァーが3個もあるんですね(笑)」

中西「ね(笑)、すごいよね」

露崎「使い分けてるってことですよね?」

中西「使い分けてる。あの茶色いのが好きすぎて、家に5個くらいある」

一同「ハハハハハ(笑)」

中西「あれは和音を入れたりとかすると、ちょっと音が濁る。俺はマッドリブがすごい好きなんだけど、彼はレコードから(音を)取って、安いサンプラーを使ってピッチをガンガン落として、ヘンな歪みっぽいというかグシャッとしたエラー感のある音を作っていた。そういうのを聴いていたからあまり綺麗にかかるエフェクターが好きじゃなくて。そういう意味では、つゆさんの、そのお高い感じの……」

マッドリブがブルー・ノート楽曲を取り上げた2003年にリミックス集『Shades Of Blue』収録曲“Slim's Return”

 

一同「ハハハハ(笑)」

露崎「良さげなやつ(笑)」

中西「良さげなやつは、あまり好きじゃなくて。俺のシンべもNovationのそんなに高くないやつ。同時に鳴らした別のシンセを重ねているんだけど、Novationのベース・ステーションはいつも使っている」

露崎「これベース・ステーションなんですね」

中西「そうそう。ベース・ステーションはいいんですよ、すごく軽薄な音がして(笑)」

露崎「それを、ダブルで録ってると。すごく太い音だから、きっとリッチなやつを使ってるのかなと思っていました」

中西「いやいやいや、それはもう使い方。俺が使ってるベース・ステーションは、TB-303というシーケンサーの音が出せるように、というコンセプトのもとで出来たという、その始まりからしてオマージュなんですよね。俺もスティーヴィー・ワンダーが弾くようなリッチで太いシンべも好きなんだけど、言い方は悪いけど80s~90sのチャカ・カーンやフィル・コリンズあたりのチャラチャラした時期あるじゃないですか(笑)、自分が生まれた時期というのもあってかその時代の音がしっくりきちゃうんですよね。そういう感覚を排除しちゃいけないと最近思っていて。スティーヴィーの『Innervisions』(73年)でのブーン!みたいな音もカッコイイし、チャカ・カーンの『Naughty』(80年)ってアルバム、知ってる?」

露崎「はい」

チャカ・カーンの80年作『Naughty』収録曲“Move Me No Mountain”

 

中西「『Naughty』は全部生演奏で録られたアルバムで、超名盤だと思うんだけど、その後はチャカチャカとすごい打ち込みのサウンドになっちゃって……どうしちゃったの、みたいな(笑)。だけど、どちらがしっくりくるかと考えると、どうしても80sの誘惑、あの軽薄さの誘惑のほうで。それを自分のなかで何とかしようと、憧れだけではなく自分のルーツをちゃんと踏まえてやらなきゃいけないなと思った時に、あの音がすごくハマる。でも、いろいろ理由付けするとそうなったというだけで、まあ、あまり何も考えてないです(笑)――ところで、フェンダーを使ってるんだよね」

露崎「そうですね」

中西「Sunburstのジャズべ(ジャズ・ベース)は使うのを止めたの? 使ってるんだっけ?」

露崎「あれは使ってますね」

中西「また別のやつ?」

露崎「使っていたやつをレリック※したんです。リペア(修理屋)さんにボロボロにしてくださいって言って」

※使い込んだような傷や剥げた塗装を再現すること

中西「そうなんだ」

露崎「昔からSunburstだけは使わないと思っていたんですよ、見た目的な意味で」

中西「渋すぎるから、みたいな?」

露崎「いちばん使ってる人が多いかなと思って。何の気なしに(ベースを)いろいろ触っていた時に、〈この1本いいな〉と思ったのがSunburstだったんです。やっぱり音でしょ、と。で、今年の春くらいに見た目的に何かやりたいなと思いはじめて、それでボロボロに(笑)」

 

~互いのバンドのミュージック・ビデオを鑑賞しながらトーク・セッション~

Yasei Collective “radiotooth”

中西「このハイハットのパターンは(デモでは)全部打ち込みで入っていて。〈なんだこれ!〉となったけど、〈全部(人力で)やる!〉って」

露崎「普段からデモの段階でだいぶ楽曲として完成されているんですか?」

中西「うん。拓郎が書いてくる曲はそういうものが多いですね。俺のそのシンセ・ベースは結構デモに忠実な感じで、最初に聴いた時は〈なんだこれ〉となったけど、でもやってみようって。あと、拓郎があんまりギターらしいギターじゃないから、俺がギターっぽい役割をやることも結構あるかな」

露崎「間奏で入っているエレべはフレットレスですか?」

中西「あれはセミアコ・ベース。MVで使ってるやつのまんま」

露崎「特にエフェクトをかけてるわけではなく?」

中西「あれはリング・モジュレーターをかけてる」

露崎「ここはアドリブ・ソロ的な感じだったんですか」

中西「タタタ~ン♪ってところは決まってる。ライヴになるともうちょっと手数は増えるけど」

露崎「(3分5秒頃)ここから〈ああヤセイだな〉って(笑)」

中西「この詰め込み芸みたいな(笑)。俺がいちばんオイシイなと思ったのは、最後のブレイクのデューン!ってところ」

露崎「あそこ太いですよね」

中西「もう全部やったうえであそこがいちばんオイシイ(笑)。本当、あれだけのために鍵盤がいっぱい付いてるシンセが欲しい」

露崎「ああ、なるほど(笑)」

中西「もっと上からピューーン!って」

一同「ハハハハハ(笑)」

――詰め込み芸ということもおっしゃっていましたけど、ヤセイは自然とああなっていくんですか? それとも意図があってやっているんでしょうか?

中西「意図的でしょうね。どうしても釈然としない感じになった時に詰め込まないと……。普通のバンドだったら、例えば同期を増やしたり、ギターを重ねたりといろいろやり方があるかもしれませんが、ヤセイの場合、より圧が欲しい場合は単純に音数をどんどん増やしていく」

――ただ重ねるのではなくてパターンを変えて増やしていくと。

中西「一度にできないとヤセイはだめなんですよ。何かを重ねるという考えが最初からなくて」

露崎「それはライヴでの再現性を考えてですか?」

中西「再現性という話でもない。だからエンジニアの人はいつも苦労して1本で録ったやつをグワーッと広げてくれているんです。本当に意固地になってますね、そこは。何とかして1回で」

露崎「レコーディングはどうやって進めているんですか?」

中西「セッティングして一気に(録る)」

露崎「全員で一気に?」

中西「そう。ヴォコーダーだけはドラムの音が入っちゃうから後録りなんだけど」

露崎「一緒のブースでやるんですか?」

中西「一緒」

露崎「え~! そうなんだ……」

中西「この曲はリアンプしなかったから、ベースはラインでそのまま録っちゃった。外の部屋にギター・アンプとキーボード・アンプを離して、一気に」

露崎「やっぱりバンド感やライヴ感が伝わってきますね」

中西「なかなかそうやって録るのは難しいんだけど」

露崎「そうですよね」

中西「録った音源にいろいろと乗っけたくなるじゃん。でもやらない。それをやるんだったら最初から(音を)詰め込むという」

露崎「テイクは結構重ねるんですか」

中西「これは1テイクか2テイク」

露崎「すげ~(笑)」

中西「(そういう録り方が)いいのか悪いのかわからないですけどね。そんな感じでずっとやってるから、それに慣れちゃった。それで上手くいかない時は自分の実力以上のことをやろうとしているということだから、どっちにしろできない。それでレコーディングしても不自然な感じになってしまうだけだから、録る前にいかに練習しておくかという(笑)」

露崎「映像のディレクターさんは、これまでいろいろな人にお願いしているんですか?」

中西「最近の2曲(“radiotooth”“Tonight”)は山野内(慎)くんという監督で。彼は本当に演奏シーンが中心で、“Tonight”の時は寸劇じみたものがあったけど、これ(“radiotooth”)はもうストイックに演奏のみ。そのストイックさが伝わればいいかなと思って」

露崎「スタジオ・ライヴみたいなものですよね」



パスピエ “つくり囃子 ”

中西「これ、学校?」

露崎「廃校になったところを使っていて」

中西「出てくるメンバーは全部本人(笑)?」

露崎「そうです(笑)」

中西「顔出ないよね~(笑)」

露崎「これまでは陰り具合とかで顔を隠していたんですけど、お面で隠すというのは初めてで。仮面という武器を手に入れたことによって、いっそう出さなくなりましたね(笑)」

中西「Bメロのシンセの音には共感するんだよね、(ヤセイと)似てる気がして。このジャン!ジャン!なんてバンドっぽいじゃん。上手いこと中間にいるというか。それは意識してるでしょ?」

露崎「そうですね、そこはやっぱり」

中西「この全体的なアイデアは大胡田(なつき、ヴォーカル)さんが出したりするの?」

露崎「映像の監督自体はずっと同じ方(松本剛)にやってもらっていて、監督と大胡田とのやりとりもありつつ。まあこういった振り付けとかは大胡田のアイデアですね」

中西「おもしろいですね、独特で」

露崎「いままでやったことのなかった作風になったかなと。あと成田ハネダ(キーボード)のショルキー(ショルダー・キーボード)が(笑)」

中西「俺もいつショルキーにしようかなと。いま悩んでるんです(笑)」

露崎「ショルキー願望はあるんですか(笑)?」

中西「めっちゃある。でもベースも持ってるから……」

露崎「ハハハ(笑)。一回(ベースを)置かないといけないですね」

中西「ドラムはうちのドラマー(松下マサナオ)と同じものを使ってるんだよね。BONNEY DRUM」

露崎「マサナオさんに紹介していただいたんですよね」

中西「どうですか、ライヴで音は聴こえてますか」

露崎「気に入って使ってますよ。ゴキゲンで」

中西「フフフ(笑)、ありがたい。やっぱりシンセのフレーズがそれぞれ独特なんだよな。(成田は)ちゃんとクラシックをやっていた人だもんね」

露崎「やっぱり聴いてわかるものですか」

中西「わかるわかる。〈そこ弾く?〉みたいな(笑)。ちょっと異様に聴こえるところもある。大胡田さんの声もあまり聴いたことがないような声じゃん、だから最初に聴くと、〈ん?〉ってなるよ。それで目が行っちゃう。俺、『演出家出演』(2013年)を白盤でもらって初めてパスピエを聴いたんだけど、一時期車の中でずーっとそればっかり聴いてたもん」

露崎「ありがとうございます。あのアルバムはすごくライヴ感を意識していましたね」

中西「いまは違う感じ?」

露崎「そうですね。でもあの作品を作れたから、前作の『幕の内ISM』(2014年)や今年リリースした最新作『娑婆ラバ』にもレコーディング現場でのライヴ感みたいなものを出せたかなとは思います」

――“つくり囃子”はサイケというかプログレというか、それぐらいの感じがありますよね。

露崎「そうですね」

中西「(イントロを口ずさむ)ヤセイでもやんないですよ、あれ(笑)」

露崎「潔いですよね(笑)」

中西「すごくいいと思う。ああいった要素はうちらの“radiotooth”にも同じ意味合いのものがあると思うんですよ。びっくりさせるような」

――これで掴むというのはありますよね。それこそ武道館のようなデカイ会場で聴きたい※。

※パスピエは12月22日(火)に東京・日本武道館で単独公演〈GOKURAKU〉を開催

中西「ガッツリやってください」

露崎「ガッツリと、デカめに」

中西「デカめに。すごいですね……(しみじみ)」

一同「ハハハハ(笑)」

 

ニヤっとするところがないとおもしろくない

――ヤセイも人力でできるの?という難しいフレーズを再現することがひとつのモチヴェーションとしてありつつ、今回の“radiotooth”のタイミングでより幅広い層にアピールしようという気持ちはあるんですよね。

中西「それは常にありますね。聴いてもらわないとどうしようもないというか。絶対に(こういう音楽が)好きな人はいると思うんですよ。ウワ!ってなって、二ヤっとしちゃう人がもっといるはずなので、そういう人たちに届けたいですよね。いまのところ、僕らのファンはコアにいろいろな音楽を聴いている人たちが多いので。でもね、そういう人たちだけじゃなくなってくれるといいですよね」

露崎「そういうコア層を掴んで、そこから広がって大きくなっていくのは理想ですよね。自分たちがひたすらやりたいこと、カッコイイと思うことを突き詰めて、さらに広がっていくというのは」

中西「いまは昔ほどマニアックなことをやっているわけではないので。まあ演奏が難しいかどうかというのはさておき、(サウンド自体が)マニアックな感じでは……でもわかんないな。マニアックなのかもしれない(笑)。どうですか、これ? マニアックですか?」

――えーと……どうだろうな(笑)。最初に中西さんがパスピエの印象としておっしゃっていた、パッと聴きはポップだけど、よく聴くと難しいことをしているという感覚に、“radiotooth”は近い気がします。ヴォコーダーを使っているからポップにも聴こえるし、でも演奏はあきらかに超複雑っていう。

中西「まあ、いまはそういう時期なんでしょうね。これからもどんどんバンドとしての形は変わっていくだろうし」

露崎「僕のヤセイに対する印象はパスピエとはむしろ逆で、一聴するとすごく複雑で硬派なことをやっているなと思うんですけど、よく聴くと中心にはポップさがしっかりとある」

中西「それはあるかもしれない。作曲者(斉藤拓郎)がハイスタとかが大好きなんですよ。高校の時にメロディック・パンクを聴いていたという彼の原体験があるから、拓郎の作る音はそういった抜け感のあるものが多い。〈そうきたか!〉というものが多いので、彼のデモを聴くのは楽しいんですよ」

Hi-STANDARDの99年作『MAKING THE ROAD』収録曲“Stay Gold”

 

――やっぱり原体験の部分がいまでも。

中西「すごくあるんじゃないかなと思いますね」

――お2人もtetsuから引き継がれた要素がいまでも……。

中西・露崎「あるかもしれないですね!」 

――ちなみに、いまお互い以外でベーシストとして気になる人はいますか?

露崎「そうだな……UNISON SQUARE GARDENの田淵(智也)さん、cinema staffの三島(想平)君とか。共通しているのが、作曲者でありベーシストということですね。2バンドとも対バンさせていただいたんですが、間近で聴くと歌を支える説得力みたいなものがあって、それはやっぱり作曲者だからこそ出せる部分なのかなと思ったんです。そういった部分が勉強になりましたし、注目しています」

cinema staffの新作『SOLUTION E.P.』収録曲“deadman”

 

中西「俺はベースに……あまり興味がなくなっちゃってるんですよね。ベースよりもドラムが好きで、ドラムばっかり聴いてるんです」

――ご自身もベーシストという意識はあまりない?

中西「もうあまりないでしょうね。ベースはいちばん手っ取り早く表現ができるから使ってるような感じ。シンべもエレベも、エフェクターもそうだし」

――ご自身と同じような感覚でやっているなと思うプレイヤーはいますか?

中西「難しい……(笑)! まあちょっと話が変わるんですけど、俺はシンセ・ベースとエレキ・ベースの両方をブンブン弾いている自分がちょっとカッコイイなと思っていたんですよ。で、ある日、30年前のYMOの映像を観たら、細野(晴臣)さんが当時から同じことをやっていて(笑)。それには相当凹みましたね」

露崎「確かに(笑)」

中西「やっていることが同じとはいえ、YMOが提示したことをそのままやっているわけではなく、こんなやり方もあるというのをヤセイとして見せたい」

――ポップなんだけど、こんなやり方もありますよと。

中西「ポップ・ミュージックって再生産というか、聴く人の頭にあるそれまでのパーツを上手く使って、いかに速くイメージを構築させられるかが肝だと思う。そのスピードが速ければ速いほど多くの人にウケる。パスピエは、そのパーツのひとつを逆さまにしてやっている感じが常にある。パッと耳に入ってくるんだけど、よく聴くと〈あれ?〉って。成田(ハネダ)さんのシンセのフレーズがどこか〈(良い意味で)気持ち悪っ!〉となるのが気持ちいいんですよね。そういうニヤっとするところがないとおもしろくないと思うんですよね」

露崎「ちょっと話が戻るんですが、マニアックなところで訊くと、さっき言っていたオクターヴァー3種類というのは、どこのやつなんですか?」

中西「全部BOSS。1個はヘンな音が出るように改造してもらって。オクターヴァーの後に歪みを噛ませるセッティングをよく使うんだけど、それを1個でその音が出るように」

露崎「ああ、歪み内蔵みたいな」

中西「歪み内蔵。いるんですよ、そういう改造ができる魔術師みたいな人が」

露崎「あと2種類はバッキング用とソロ用みたいな?」

中西「全然決めてない。それぞれ全然違う音が出る。これはブー、これはビー、これは普通のオクターヴァー、みたいな。普通の人が聴いてもあまりわからない(笑)。でも、自 分としては違うんだよね。俺がプレべをあんなにいなたい音で使っているのも、そういう音が好きというのもあるんですけど、エレキ・ベースの時は〈どこかで 聴いたことのあるエレキ・ベース〉というイメージを聴いている人の頭の中にすぐに形作ってほしいからで。なるべくシンセ・ベースと棲み分けをしたいというか。普通のエレキ・ベーシストとはエレキ・ベースに求めるところが違う。スムースで一定のベース・ラインとか音圧が欲しいならシンベを使うから。どこかゴツゴツしていて人間臭い、不安定な部分というものをエレキ・ベースに求めている」

露崎「シンベが弾けたら使いたいんですけどね。単純にピアノができない」

――パスピエはまったくシンべを使っていないんでしたっけ?

露崎「成田がシンべのようなものを入れることはあります。たまに彼が下を弾いて、僕が上のリフをやっている曲があったりしますね」

中西「それ以上は行かないでほしいな」

露崎「ハハハハハハ(笑)」

中西「そろそろね、特許取ろうかなと思ってるから。細野さんに〈いいですか……〉と訊きに行こうかなと思って(笑)。でも俺が初めてやっていることじゃないから悲しい。ミトさんもやっているし。最終的に編み出したのは、(シンベとエレベを)一緒に弾く(笑)」

露崎「ああそっか、やってましたね」

中西「今度はそれをどんどんやりたい。ちょっとシーケンスのようで、いいんですよ。ヤセイはシーケンサーを使えないので、これでシーケンサーっぽく」

露崎「シンべもアンプで鳴らしているんですか?」

中西「そうそう」

露崎「アンプは2個並べている?」

中西「ベース・アンプは1個で」

露崎「両方鳴らす時は、1個のベース・アンプから両方出ていると」

Yasei Collectiveの2014年作『so far so good』ツアー・ファイナルのダイジェスト映像

 

中西「最後に、パスピエが顔を出さないという点を突っ込みたいんだけど、それはやっぱりメンバーのなかで意思統一されているんでしょ?」

露崎「まあそうですね、基本的に出さない方向でやっていますね」

中西「それは最初からそう?」

露崎「最初は、“電波ジャック”という曲(2011年作『わたし開花したわ』収録)のMVをどうしようか話していた時に、その頃はバンド用に大胡田がイラストを描くことはなかったんですけど、おもしろいから描いてみようということになって、彼女が描いた700~800枚の絵をMVとして使ったんです。それがおもしろかったので、アーティスト写真も彼女のイラストにして。その流れで、バンドのヴォーカリスト自身が描いているという説得力もありますし、それは残していくのがいいんじゃないかなと」

中西「全体的にあの色で統一されてるよね」

露崎「そうですね」

中西「昔の絵を見ているような」

露崎「いわゆる公式のアーティスト写真は、メンバーの顔がそんなにわからないようにしているんですけど、それ以外のところでメンバー5人のイラストを大胡田が描いてくれたりして。基本的にそっち(イラスト)のイメージを崩さないほうがいいかなと思っているんです」

中西「顔はアーティストにとってすごく大事な部分だと思うんだよね、表情とか。そこをあえて出さないと、人間がやっているにもかかわらず、ダフト・パンクみたいにすごく無機質になる。そういうところがすごくいいなと思って。イメージを押しつけないというか。それはヤセイにも通じるところがあって、ヤセイはヴォコーダーで歌詞がよくわからないから、ある程度聴く人に勝手に歌詞を付けてもらっていい。“radiotooth”のサビ、ACIDMANの大木(伸夫)さんに〈ボブ・ディラーン♪〉って聴こえたって言われました」

一同「ハハハハハ(笑)」

中西「それは聴く人に任せたいと思います」

露崎「聴き手に想像してもらう余白みたいなものですよね」

中西「そうそう。すごく大事なこと。ヤセイは煽り文句とかでいつも悩むんですけど、なるべく固有の名前を出さないようにしている。それも同じような意図で、音楽そのものを伝えたいから」

露崎「楽曲に対してもそうだし、歌詞もモロにそうですよね」

――パスピエはまさに聴き手がイマジネーションを広げやすい存在ですよね。

露崎「顏を隠しているぶん音源でのイマジネーションは広げやすいかもしれませんね。でもライヴでは普通に顔を出しているので、何というか、ライヴに来た時の得した感もあるかもしれませんね」

――感情が直接的に伝わる場があるのも、それはそれでいいですよね。

露崎「もともと顔を隠すことを念頭に置いて始まったバンドではないので、ライヴではフリーにしてしまってもいいかなと」

中西「徹底しすぎちゃうとそれがコンセプトになっちゃうもんね。なるべくコンセプトは客に任せたほうが……」

露崎「そこも余白、ですよね」

中西「……それを訊きたかったので、良かったです(笑)」

露崎「こちらもいろいろ秘密を聞くことができたので(笑)」

中西「長々とありがとうございました」

露崎「ありがとうございました」

 

Yasei Collectiveニュー・シングル“radiotooth” リリース・パーティー

日程:2016年1月30日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:16:30/17:00
チケット:前売3,000円/当日4,000円
ライヴ:Yasei Collective/FULLAROMOR
DJ:社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、仰木亮彦(在日ファンク)
オープニング・アクト:沖メイ(Za FeeDo)
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