Page 2 / 3 1ページ目から読む

ロックンロール60周年

 ビル・ヘイリーの“Rock Around The Clock”が全米No.1ヒットとなった1955年を〈ロックンロール元年〉と位置付け、その還暦を祝うリリースが続いた2015年。メジャー各社の合同企画によるコンピ・シリーズ〈Let It Rock!〉は大きな話題になり、ストライプスが自分たちのお気に入りナンバーを選んだ『The Strypes Presents Let It Rock: Rock 'N' Roll 60th Anniversary』も若い世代にバディ・ホリーチャック・ベリーらの楽曲を届ける役割を果たしてくれました。もちろん、そのストライプスやヴィンテージ・トラブルらが、力強いオリジナル・アルバムでロックンロールの現在進行形を表現していたことも重要です。 *山西

ストライプの2015年作『Little Victories』収録曲“Scumbag City”

 

ヴィンテージ・トラブルの2015年作〈華麗なるトラブル〉収録曲“Doin' What You Were Doin' ”

 

 

日本のガールズ・バンド

 1月に女性バンドとしてはメジャー・デビューから最速となる日本武道館公演を成功させたSilent Sirenに象徴されるように、従来のいわゆる〈ロック・シーン〉とは違う方面からも〈カワイイ〉と〈カッコイイ〉を両立させるガールズ・バンドたちが飛躍を果たした2015年。彼女らの『サイレントサイレン』は華やかなポップ感覚のみならず、内省的な面もアンサンブルで表現した一枚だった。また、この方面の先駆者たるSCANDALのコピー・バンド・コンテストから飛び出したKANIKAPILAや、〈TIF〉出演歴もあるがんばれ! VictoryGacharic Spinらフレッシュな面々も相次いでメジャー・デビュー。スターダスト所属の現役モデル/女優で構成されるLe Lienもシングル“がんばりDoki”で全国デビューしており、〈バンド形態のアイドル〉も〈アイドル性の高いバンド〉も渾然となって楽しむ気風が受け手の側には生まれているように思えた。

Silent Sirenの2015年作『サイレントサイレン』収録曲“女子高戦争”

 

Le Lienの2015年のシングル“がんばりDoki”

 

 一方、秋にデビュー10周年を記念してリマスター・シリーズも登場したチャットモンチーや、そのレーベルの後輩・ねごともアルバムを発表。〈ガール〉が音楽性の核にある新顔としては、全員19歳の女子大生4人組、sympathyの『トランス状態』も。当人たちの意識にかかわらず、可愛らしさと格好良さの共存するバンドはまだまだ増えていきそうだ。 *土田

sympathyの2015年のミニ・アルバム『トランス状態』収録曲“さよなら王子様”

 

 

ラスタ・リヴァイヴァル

 メジャー・レイザーノットナイスに代表されるミュータント・ダンスホールの反動で、ジャマイカではこの数年かけてジワジワきていたバック・トゥ・ルーツな風潮がいよいよ爆発! 2000年代のラスタ・ブームを支えたタンヤ・スティーヴンスジュニア・ケリーら中堅が息を吹き返したほか、GACHAPANのプロデュースによる初EP『Hope & Love』を携えて日本縦断ツアーを敢行したジェシー・ロイヤルザッポウベレス・ハモンドも在籍したバンド)をネタ使いするなど70年代の空気を巧みにすくい上げて『Ancient Future』で高評価を得たプロトジェイなど、若手の活躍も目立ちました。その作風はメロディー(と言葉)に重きを置いているため、いわゆるシンガー・ソングライター作品が好きな方にもスッと馴染めるはず。単独音源の待たれるジャー9カバカ・ピラミッドをはじめ、どんどんフレッシュな歌い手が登場しているので、引き続きご注目を! *山西

ジェシー・ロイヤルの2015年のEP『Hope & Love』収録曲“Hope & Love”

 

プトロジェイの2015年作『Ancient Future』収録曲“Sudden Flight”

 

 

インディー・サイケ

 ここ3~4年の話でしょうか。インディー・シーンではエコーまみれのサイケ野郎が増殖傾向にあったのですが、アリエル・ピンクと共にそのムーヴメントを推進したテイム・インパラが3年ぶりに帰還したことで、2015年はますます目につくようになってきました。ムーン・デュオタマリンが最新作で日本デビューを果たしたのも、そうした流れを受けてのことだと思います。そんななか世間を騒がせたのは、トロ・イ・モワの『What For?』。界隈をフュージョン/AOR漬けにした張本人が、自身のプロデュースしたキース・ミードの『Sunday Dinner』も含め、急に後期ビートルズのような音へ方向転換したのですから、そりゃ、戸惑いの声も多く上がって当然ですかね? また、2014年にウィッチーズテンプルズのブレイクで勢い付いたUKのヘヴンリーは、フィーヴァー・ザ・ゴーストノッツといったUSアクトにも手を出すようになり、さらに10年ぶりにリイシュー専門のサブ・レーベルを復活させて、ネクタリンNo.9の95年作『Saint Jack』(Postcard/Forever Heavenly)などを発表。キッズへの啓蒙活動に乗り出したことも印象的でした。

トロ・イ・モワの2015年作『What For?』収録曲“Lilly”

 

ネクタリンNo.9の96年作『Saint Jack』のプロモーション映像

 

 余談ですが、この一年はインディー・サイケ周辺でもディアンジェロの名前を頻繁に目にしました。アリエル・ピンクとceroをひとつに結んだような『Midnight Snack』で人気急上昇のホームシェイクをはじめ、〈Dには勝てない〉みたいなコメントをする人がいたり、『Voodoo』をフェイヴァリット盤に挙げる人がいたり……。Dに羨望の眼差しを向ける彼らは、きっとミゲルに嫉妬したんじゃないかな?とか思っています。 *山西

ホームシェイクの2015年作『Midnight Snack』収録曲“Heat”

 

 

二次元アイドル

 2015年のアニメ音楽でいちばん熱かったのは間違いなくアイドルもの! 劇場版がヒットした「ラブライブ!」からはμ'sのベスト盤『μ's Best Album Best Live! collection II』がオリコン1位を獲得し、〈NHK紅白歌合戦〉への出演も決定。新田恵海三森すずこ内田彩南條愛乃飯田里穂ら声優陣がアルバムを発表するなど、個々の活動にも繋げて盛り上げました。

 また、10周年を迎えた〈アイドルマスター〉シリーズからは、「アイドルマスター シンデレラガールズ」の楽曲をまとめた『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 00 ST@RTER BEST』を皮切りに関連作が続々と登場。さらに、メインキャストを務めるi☆Risと共にブレイクした「プリパラ」、ミト牛尾憲輔agraph)らを新たに作家陣に迎えた「アイカツ」、MONACA勢が楽曲面で支える「Wake Up, Girls!」など注目作が目白押しでした。μ'sはファイナル・ライヴを控える一方、その妹分ユニット=Aqoursはすでに始動しており、2016年もこの勢いは続く!? *北野