既存のフォーマットを嫌い、ニュー・タイプのインストを鳴らそうと立ち上がったシカゴの革命家が世間に受け入れられるまで、そう多くの時間は必要なかった。 静と動、過去と未来、陰と陽、調和と軋轢、繊細さと大胆さ、直線と曲線、喜びと悲しみ――相反するマテリアルをミックスし、〈ロックのその先〉を見せてくれたトータス。アルバム・デビューから20年強が過ぎてもなお、5人の実験精神は萎えることを知らない。音楽の新たな可能性を模索する旅はまだ始まったばかりだ……
DISCOGRAPHIC TORTOISE
トータスを知るための6枚
記念すべきこの初作からは、後にアンティバラスとの共演で開花するアフロビート志向はもとより、ジャマイカン・ダブやエチオ・ジャズの影響が強く感じられます。エレクトロニックな分厚い効果音でも評判を集めていく彼らですが、核には強靭な人力リズムがあることを痛感。
出世作にして、〈ポスト・ロック〉なる呼称を世界に広めた2作目です。〈複雑なポスト・プロダクション×エモい旋律×柔らかなノイズ〉というバンドのイメージがここで確立。カラフルなビートに彩られたフォーキーな楽曲スタイルは、ビビオのワープ移籍作などに引き継がれ……。
最高傑作との呼び声も高い3作目。全編でプロトゥールスを導入し、ピッチを変えたり、ウワ音をコピペしたり。MPB風やクラウトロック的な反復ビートが飛び出すほか、曲調は雑多ながら、総じてリラックスした雰囲気があり、ジャック・ジョンソンもお気に入りに挙げています。
この4作目ではアナログ回帰を目論み、ノイジーなディストーション・ギター、ハードなドラミングなど個々の演奏スキルをアピール。彼らにしては曲が短めで、耳触りはゴツゴツした感じです。ハードコア・パンクを出自としていることが、もっとも顕著に表れた一枚。
ヴォーカル・トラックを装備してファンを驚かせた5作目。オルタナ・カントリー的なムードがそこここに漂い、メロディアスでポップな仕上がりという意味では、新作『The Catastrophist』とも通じるでしょう。表題曲あたりはアンチコン系のヒップホップ好きにもオススメ。
トータス・サウンドの大きな特徴とも言えるヴィブラフォンとマリンバを排し、そのぶんボトムに注力。異型サンバやダンスホール・レゲエ風といった、いつになく粗削り&はっちゃけた彼らと出会え、特にダブステップに挑戦した“Northern Something”で汗だくです!