ウェザー・リポート黄金期1978年~1981年の未発表ライヴ音源が世界初CD化!
過去、ウェザー・リポートやジャコ・パストリアス関連のライヴアルバムやブートレグは数多く世に出回っているが、今回リリースされる4枚組の本作はそのマスターピースといっても過言ではないだろう。同バンドの黄金期と言われる1978年~81年に、日、米、英で行われたライヴ、しかもすべてが未発表音源で構成されている。過去作のライヴ盤「8:30」などは、録音後にオーバーダブが施されていることは周知と思うが、今回は、手を入れていない完璧なナマ演奏。ウェザー・リポートというバンドのジャズ史における価値を考えれば、これはかなり貴重な資料であり、音楽的遺産とも言える。
これらの音源は、ピーター・アースキンやツアーPAとして帯同していたブライアン・リズナーが個人的に録音していたものやコレクター所有の秘蔵品らしく、長きに亘りひっそりと保管、愛聴されていたようだ。近年、ウェザー・リポートのストーリーテラー的な役割を負う機会が多いピーター・アースキンだが、本作でもライナーノーツを担当しており、当時のバンドの状態や各曲の背景や演奏する意味合いなどを解説している。(これだけでもかなり読みごたえがあり、価値がある。)
一般的にライヴ盤は、レコード・CDというフォーマットゆえの時間的な制約があり、そのハイライトとなる楽曲で構成されることが多い。しかし今回はその4枚組という構成により、代表曲と言われる楽曲はもちろんのこと、通常は収録されないであろう各自のソロ・パフォーマンス(独奏)まで収録されている。こういった音源は一部youtubeなどで見ることはできるが、このような高音質で正式にリリースされるのは初めてではなかろうか。
この時期の同バンドはジャコ中心に語られてしまうことが多いが、本作はリーダーとしてのジョー・ザウィヌルの緻密さ、ウェイン・ショーターの奔放さなど、メンバーそれぞれの個性が表出しており、アルバムで聴きなれた楽曲も、そのライヴ・アレンジにより新鮮味を増している。不意に現れる完全なアドリブ、インタープレイと思われるフレーズも満載で、メンバー間の呼吸、会話、さらには駆け引きのようなものまで感じられる。CDに注意深く耳を傾け、それぞれのメンバーの表情などを想像してみるのも、ライヴ音源ならではの楽しみ方かもしれない。
とにかく、ライヴバンドしての高い演奏性=音の刹那を切り取り、対応、変化、構築させていくスキルが全編に渡り展開しており、演奏家として脂の乗った時期の“爆発力”を十分に堪能できる。ウェザー・リポート解散後、そしてジャコ、ザヴィヌル没後にそれらにまつわる音源や書籍など様々なものがリリースされているが、間違いなく本作はその中でもベストと言えるだろう。宝物を発掘したような気分だ。