インタビュー

フラメンコ歌手・石塚隆充が見据える、彼にしか演じ得ないカヴァー尽くしの新作『REVERSO』と次なる展開

(C)Akeshi Ohara
 

日本のトップ・カンタオールによる初のカヴァー・アルバム

 彼独特の節回し、凄絶な頂点に達するまでのいたく優しげな歌い方。日本のトップ・カンタオール(フラメンコ歌い)は、「僕にしかできないこと、僕にしかできないものをやる。すごく難しいんですが、それが自分に課せられた使命」と語る。“カンテ”歌いに専心して、20年余。幾度も往復してきたスペインから完全に拠点を日本へ移して、ちょうど10年。2009年ソロ・ファースト作『RELIQUIAレリキア』も、2013年のセカンド『REVOLUCIÓNレボルシオン』も、歌の熟成を待つかのごとくじっくり制作時間をかけた。

石塚隆充 REVERSO コアポート(2016)

 セルフ・プロデュース2作から一転、山田ノブマサ氏企画&録音による3作目『REVERSO』は、異色の全編カヴァー集。コアなフラメンコ曲も渾身のオリジナルも見当たらないが、よく知られた旋律に脈打つリズムや歌唱スタイルは、まぎれもなくフラメンコのそれだ。普段フラメンコとの接点を持たぬ音楽ファンが、少しでも興味を抱いてくれるきっかけになれば、と。年頭にハイレゾ配信スタートした内容を、新録1曲と差し替えてCD化。ギター弾き語りを軸に、多彩な領域のゲスト・プレイヤーの音を積み重ねていった。かつてのヒリつくような緊張感はなく、安定感とくつろぎが際立っているのは、なぜか?

 「あーわかります。なんか、スレスレの緊張感みたいな……そこらへんを意識せず、今回は自分のストックしたものから歌える曲をチョイスしていったので、挑戦しようっていう感じではなかったかも知れないですね。むしろこの曲を、どういうふうにフラメンコにアレンジしようとか、それだけを考えたし」

 10年をひとつのサイクルと捉え、タイトルを“レベルソ(リバース)”ではなく“レドンド(丸)”とする案も出たそうだ。ここ数年、異ジャンル奏者との共演を重ね視野を広げてきた彼の、次なる円環とは?

 「カヴァーって、チャレンジしてみたかった部分だったので、構想はまだいろいろあるんですが、自分のオリジナル曲を、もうちょっと追求していきたいですね。やっぱりそこは、すごく惹かれる。要は、何もないところから創り上げるわけですから。あとは、もうちょっと日本語のフラメンコをやれたら……」

 穏やかな口調とは裏腹に、何やら熱くうごめく確信があるようだ。ブレリア版《想いの届く日》、タンギージョとルンバが絶妙に交錯する《ミ・アモーレ》、古風なキューバン・ボレロに日本の歌曲、ロルカ採譜によるアンダルシア古謡、家族の思い出が詰まった《愛の讃歌》まで、確かに彼にしか演じ得ない展開のカヴァー尽くし。原曲がはらむ時空を軽々と飛び越えてしまえるのは、才能豊かな歌い手の特権なのだ。

 


LIVE INFORMATION

INIMITABLE:Takamitsu Ishizuka New Album "REVERSO" release party
○8/28(日) 会場:横浜・Paradise Cafe 
○9/6  (火) 会場:学芸大学・Cherokee Live Tavern 
○9/10(土) 会場:金沢・Jazz Bar RIVERSIDE
○9/10(土) 会場:金沢・Jazz Bar RIVERSIDE 
○9/11(日) 会場:浜松・Jazz Bar HERMIT DOLPHIN 
○9/12(月) 会場:名古屋・Jazz Live STAR★EYES ほか
www.takante.info

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