コラム

ワーグナー“ニーベルングの指環”最高の名盤――レコード史初、四部作全曲をスタジオ録音した〈録音の世界遺産〉がSACDとLPで復刻

録音の〈世界遺産〉が英デッカ秘蔵のオリジナル・2トラック・ステレオマスターテープより初復刻!

GEORG SOLTI, VIENNA PHILHARMONIC ORCHESTRA 『ワーグナー:楽劇《ラインの黄金》』 Decca/ユニバーサル(2022)

 1958年から1965年にかけて英デッカが完成したレコード史上初のワーグナー“ニーベルングの指環”四部作全曲のスタジオ録音(初出LPは全19枚!)。このプロジェクトを担った指揮者、サー・ゲオルグ・ショルティ(1912~97)の生誕110周年・没後25周年を記念して、この“指環”全曲が英デッカ秘蔵のオリジナル・2トラック・ステレオマスターテープを24bit/192kHzの高解像度で新たにデジタル・トランスファーし、SACDとアナログLPで発売されることとなった。

 この“指環”全曲は名プロデューサー、ジョン・カルショーのもと、ショルティをはじめオーケストラに名門ウィーン・フィル、歌手陣にフラグスタート、ニルソン、ヴィントガッセン、ホッターら錚々たる顔ぶれが集い、録音もアナログ・ステレオの黄金期に行われたことで、半世紀以上経過した今なお“指環”最高の名盤として不動の評価を得ている。最初のCD化は1985年に行われ、その後、原録音に携わった技師のジェームズ・ロックがリマスターを監修した1997年版、そのロックの音源をフィリップ・シニーがリマスタリングした2012年版、また、英デッカから音源をライセンスしてSACD化した2009年のエソテリック盤、日本にLP時代より保管されていた予備のセイフティ・アナログ・マスターテープからSACD化した2018年のステレオサウンド盤などが出ていた。

 最も世代の古いオリジナル・2トラック・ステレオマスターテープ(38本、初出LP19枚のAB面分)は、保存状態が悪いとしてこれまでCD化には用いられなかったが、今回の2022年版リマスタリングでは、初めてこのテープを使用。酸化膜剥離などがあった状態の悪いテープは、55℃で10時間焼成することで修復に成功し、24bit/192kHzで新たにマスタリングを実施。従来のCD、SACDに比べ、細部まで鮮明で、ダイナミックなサウンドになったという。破格の内容と規模を誇る録音史上の世界遺産が、望みうる最高の状態で甦った訳で、四部作第1弾、11月発売の“ラインの黄金”は音楽ファン要注目と言えよう。