エイリアンの世界を生んだ、スイス人アーティスト、ギーガーのドキュメンタリーと新作が9月公開!

 またエイリアンの姿がみられる!

 ネットではYouTubeにながれる予告編をみながらさまざまなツッコミがなされている。でも、わたしにとってはエイリアンがでてくればいいのである。

 新作の音楽を担当しているのはジェド・カーゼル。1976年オーストラリア生まれで、映画の音楽を手掛けるとともに、ブルース・ロック系ミュージシャンであるという。スコアは、オーケストラを中心としつつも、電子的な音でより神秘的なひびきをつくりだし、ときに第1作『エイリアン』のテーマを再現する。映画をみたあとでどれだけ記憶され、それが脳内で再現されるかはわからない。わからないけれども、その“感触”は、これまでのエイリアン・シリーズと共通するものをそれなりに持っている。ときに、映像がなくても、これはどういうシーンかがわかる。お決まり。クリシェ。でも、だからこそおもしろい。どんなふうに人はおなじ反応をしてしまうのか。いきなり、短い時間でどうクレッシェンドするのか。そのサウンドの、オーケストレーションの細部はどうか。

 『エイリアン』シリーズは、リドリー・スコットが1作目をつくり、21世紀になって『プロメテウス』で同監督が戻ってくるまで、2・3・4ともべつの監督でべつの作曲家によるものだった。

 1929年生まれのジェリー・ゴールドスミスから、「2」のジェイムズ・ホーナー、「3」のエリオット・ゴールデンサルは1950年代、「4」のジョン・フリッゼルは1960年代の生まれ。そして『プロメテウス』はマイク・ストライテンフェルトと一気に1970年代生まれになる。そう、『プロメテウス』でもゴールドスミスの断片はあらわれていた――――。

 『エイリアン:コヴェナント』にも卵が登場する。卵は十字形に割れる。H・R・ギーガーのもともとのデザインでは割れ方はそうではなかった。ハリウッドの意向からこのかたちになった。このことを知ったのは、ほぼ同時期公開されるドキュメンタリー『H・R・ギーガーの世界』で自身が語っているからだ。

 ギーガーは2014年に、階段から落ちて73歳の生涯を終えるのだが、その自宅の階段が、まさにこの映画のなかにあらわれる。映画は2013年におこなわれたスイスはリンツ、ドナウ川に面したレントス美術館での展覧会での準備とオープニングを中心にして、もちろん過去の珍しい映像もたくさんでてくるし、このアーティストに関心がある者には興味津々、目が離せない。

 ギーガーのつくりだすものはいったい何なのか。なぜあのようなものなのか。ギーガー自身はどんな人物なのか。その答えがここにある――――などとは言わない。いや、ある。あるのだ。あるのだが、それを鵜呑みにする人はいるはずだし、それはそれでいいのだけれど、逆に、この映像、ことばによって、人という深み、人のイマジネーション、イメージの深み、ということにあらためておもいをむけることにもなるのではないか。

 キュレイターはこんなふうに語る――「ギーガーが作り出すクリーチャーには善の要素はまったく見られません。しかし彼には別の面が見えていて、光と闇が共存する世界をイメージできているのです」

 好き嫌いにかかわらず、20世紀後半に造形されたエイリアンは、まだその命脈を保ち、恐怖を、気持ち悪さを、魅惑を放ちつづける。

 


CINEMA INFORMATION

DARK STAR  H・R・ギーガーの世界
監督:ベリンダ・サリン
音楽:ペーター・シェーラー
出演:H・R・ギーガー/カルメン・マリア・ギーガー/マルコ・ヴィツィヒ/スタニスラフ・グロフ/サンドラ・ベレッタ/ハンス・H・カンツ/トム・ガブリエル・フィッシャー/ほか
配給:日活、boid(2014年 スイス 99分)
◎9/2(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、9/9(土)より東京都写真美術館 ほか全国順次公開!
gigerdarkstar.com

 

(C) 2017 Twentieth Century Fox

エイリアン:コヴェナント
監督:リドリー・スコット
出演:マイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン他
音楽:ジェド・カーゼル配給:20世紀フォックス 「R15」
◎9/15(金)全国ロードショー

 


TOWER RECORDS INFORMATION

H・R・ギーガー財団公認 H・R・ギーガー ポスター&アート展
○9/9(土)~10/1(日)Tower Record Shibuya SpaceHACHIKAI
H・R・ギーガーの貴重な展示品+HR GIGER MUSEUMのオフィシャルグッズも販売!