I GOT THE ZOO ON
~『Animal Ambition』にひしめく野獣たち~
3曲で抜擢されているGユニットの若頭は、スカッド・アップ~ヤング・マネーを渡り歩いた喧嘩屋。50の盟友たるシャ・マニーXLに拾われて完成を見たこの初ソロ作では、サグいニューオーリンズ作法をズルズルに剥き出し。マスターPばりの咆哮も頼もしいぜ。
フロウにイーストコースト作法を取り込んだ西のラッパーというと、50とは因縁浅からぬゲームの名が思い浮かぶところだが、そのバイ・コースタルなノリを最前線で発散しているのはTDE軍団になるのか。50の“Flip On You”にこの学童Qが招集されたのも納得だ。
メンフィスの野獣によるヒット作。このヒット作を後見したのが現在エピックでエグゼクティヴA&Rの要職を担うシャ・マニーXLだと知れば、彼と50のリンクも頷けるところだろう。先行カット“Don’t Worry ’Bout It”では重たい拳を交わしてビートに鈍痛を残す。
久々のロックス名義EPも記憶に新しいジェイダキスは“Irregular Heartbeat”に客演。GとDの戦友会ムード(?)を象徴するが如く、こちらのミックステープではロイド・バンクスを招いていた。ちなみに、かつての交戦時に彼が50を口撃した曲のタイトルは“Animal”!
10年以上に渡って50御用達の看板を保持するジェイク・ワンは、シンプルかつ重々しいループで不埒な雄弁を支え続ける一人。当然今回も“Hustler”などのビートを担当している。なお、この名盤で相棒を務めたフリーウェイはGユニットのフィリー支部にいたことも。
以前のエイペックスのように、新進のビート職人も躊躇なく抜擢するのが50らしさ。新作では、キックオフから2連続でシングルを担当したチャーリー・ブラウン・ビーツに注目したい。彼の仕事ぶりはこのノリ皿やフレンチ・モンタナらのミックステープで確認を。
デビュー時から前作所収の“OK, You’re Right”に至るまで、50節とドレー仕事の魔法的な相性はいつも格別だ。新作ではトレイ・ソングズの歌う“Smoke”にて、大ぶりなシンセを纏ったドレー節を轟いてくる。もう誰も『Detox』のことは気にしてないようだが……。
新作とは直接関係ないものの、50の最新客演曲となるのがここに収録の“El Sobreviviente”。ダディ・ヤンキーやウィシン&ヤンデルとの合体、ラテン・グラミー出演といった経歴からもわかる通り、広範に広がった50人気の背景にはレゲトン勢との繋がりも重要だ。