15年と一口に言っても、他レーベルの15年間と比べてみれば、シェイディの活動履歴にその年月分の濃密さは感じにくいかもしれない。確かにここ数年は年にアルバム1~2枚程度のペースが守られているし、失敗できない規模にまでブランドが肥大化した結果、一発一発の重みにリリース傾向が片寄っているのは事実だろう。とはいえ15年は長い。〈ダディがおかしくなっちゃった~〉とか歌わされていたエミネムの愛娘ヘイリーも大学に進学するほどに歳月は流れ、状況も大きく変わったのだ。
スキットなどに〈ポール〉としてよく登場していたマネージャーのポール・ローゼンバーグと組み、エミネムがシェイディを興したのはそもそも99年のこと。当時の彼はドクター・ドレーに見い出されてアフターマスと契約したばかりだったが、以降のブレイクを受けてシェイディもプライヴェート・ブランド以上の展開を始めていく。最初の契約アクトはエム自身も属するデトロイトのD12。地元の仲間たちを傍らに置きつつ一度メジャー契約に躓いた50セントとリンクし、モータウン・ローカルのオービー・トライスやアトランタのスタット・クオーを引き入れて以降はアフターマス/Gユニットも合わせた3頭立てでシーンを席巻。エミネム自身も何度となくピークを更新した。が、2006年にD12のまとめ役たるプルーフが銃死するとシェイディもD12も徐々に停滞。このタイミングで契約した若手たちも数年の塩漬けを経て離脱するハメになり、レーベルの復調はエミネム自身のリカヴァリーまで先延ばしとなる。
そして現在。かつてバッド・ミーツ・イヴィルを組んでいたロイス・ダ・5’9”との関係修復を受け、ロイスの属するスローターハウス(ロイス、クルキッド・アイ、ジョー・バドゥン、ジョエル・オーティズ)と契約したことは、エミネムがラップ神モードに入る契機にもなっただろうし、イェラウルフの存在も新風を吹き込んでいる。50セントの離脱こそあったが、結果的に少数精鋭ながらもかつてなく〈ラップ〉そのものにこだわった集団として、レーベル・カラーをストイックに刷新したシェイディ。新たな全盛期はすぐそこまで来ているのかもしれない。
▼関連作品
左から、エミネムの99年作『The Slim Shady LP』(Web/Aftermath/Interscope)、プルーフの2005年作『Searching For Jerry Garcia』(Iron Fist)、イェラウルフの2010年作『Trunk Muzik 0-60』(Ghet-O-Vision/DGC)、プライムのファースト・アルバム『PRhyme』(PRhyme)、クルキッド・アイの2013年作『Apex Predator』(Treacherous C.O.B.)、ジョー・バドゥンの2013年作『No Love Lost』(Mood Muzik/eOne)、ジョエル・オーティズの2014年作『House Slippers』(Penalty)
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