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正直な感情

 そして、ようやく完成したデビュー・アルバムが、この『Lost & Found』。ジョルジャ自身に作品のコンセプトを尋ねたところ、こう答えてくれた。

JORJA SMITH Lost & Found FAMM/The Orchard/HOSTESS(2018)

 「自分が書いた曲、自分に起こったことを書いた曲を集めた作品よ。私はいつも、実際に自分に起きたことしか曲にしない。去年、自分のマネージャーに〈アルバムを作りたいから、古い曲や新しい曲も含めて、収録したい曲のリストを作って〉と頼まれてリストを作ったんだけど、その作業こそ、自分の過去の体験の中で『Lost & Found』したような気分だったの。学生時代のことなども思い出して、思い出の中で迷子になった気分(Lost)、でも歌うことでいまの自分を見つける(Found)ことができた。そんなアルバムよ」。

 本作には、彼女の名前を一躍知らしめた“Blue Lights”はもちろん、“Teenage Fantasy”や“Where Did I Go?”など、すでにこれまでジョルジャの活動を追ってきたリスナーにはお馴染みの楽曲も収録されているほか、まさに〈いま〉の彼女の気持ちを映し出したような表題曲の“Lost & Found”や、ライヴなどでも披露してきた“Don't Watch Me Cry”“The One”といった楽曲が並ぶ。どの曲も、ジョルジャの歌詞と歌声はどこかブルージーでペシミスティックな部分もありながら、ノスタルジックな雰囲気に包まれてもいる。「いつも、ピアノやギターでメロディーを作りながら、同時にどんどん声に出していきながら曲を作っている。私の頭の中は常にいっぱいだから、それを適当に言葉に乗せていく。それが、だんだん明確なものになっていって、〈歌〉になっていく感じ。リリックに関してはあまり考えすぎないようにしていて、まずは考えず(Think)に、歌う(Sing)の。そうすると、自然に正直な感情が言葉に出てくるのよ」と、あくまでナチュラルな制作プロセスを明かしてくれた。

 今年、ジョルジャはケンドリック・ラマーがプロデュースを務めた『Black Panther The Album』にも“I Am”という楽曲で参加した。彗星の如きスピードと輝きでもってシーンでのキャリアを積み上げているジョルジャだが、「何かに急かされて活動してきたという感じはないし、こんなふうに物事が進むって、自分ではまったく期待していなかった。この2年間、自分が試されたというか、とにかく集中することが大事だと学んだわ」とのこと。

 8月には〈サマーソニック〉にて待望の初来日ステージも控えており、「お気に入りの映画の一つが、日本が舞台になっている『ロスト・イン・トランスレーション』なの。だから、日本に行ったらあの映画みたいなことをやってみたいわ」とキュートな願望も教えてくれた。彼女の登場が今後の音楽シーンにどんな影響をもたらすのか。ジョルジャのさらなる活躍が、いまから楽しみでしょうがない。