心に響く歌声とギターのコラボレーション スクリーン・ミュージックの新境地へ
中世・ルネサンスから現代の音楽まで幅広く歌いこなすメゾソプラノの波多野睦美と、海を越えて多彩なレパートリーで活躍するギタリストの大萩康司が、スクリーン・ミュージックのアルバムを発表した。アレンジはベーシストの角田隆太(ものんくる)。三人の表現者によるコラボで、丁寧につくられた作品には深い響きがある。
一曲目の《ククルクク・パロマ》。静謐なイントロのギターにゆだねるスペイン語の歌声は、リチュラルのようにささやく。《What is a youth》ロミオとジュリエットのテーマ曲は、ルネサンスやバロック音楽に影響を受けたヴォーン・ウィリアムズ調のアレンジで古楽世界に先祖がえり。表題曲の《コーリング・ユー》は、ストリングスと歌のかけひきのスリリングな序破急。ジャズとクラシックのあいだにあるフォークロアの声も聴こえてくる。「今回のアルバムでは、キーは低めにしました。地声に近いところをなるべく使いたくて、でもカルメンもありましたので結局アルバム全体では2オクターブくらいで歌いました」(波多野)
《アイルランドの女》はゲール語で挑戦。「古いアイルランド語がわかる先生を大使館の方々に頼んで探してもらいました。やっと御一方見つかり、レストランで発音の集中レッスン!」(波多野)
楽譜は、編曲者の角田隆太によって細やかに書かれたものを忠実に再現。「ポリリズムになっていたり、曲によってはジャズのスウィングだったり、わからない部分は隆太さんに訊きました。いかにアレンジをギターで生かせるかということが大きかったです。楽譜に記された表現には〈都会的なつめたさを含む〉なんてのもありました!」(大萩)「あたしたち九州もんはどうする?と大萩さんと語り合ったりも(笑)。楽譜にさらりと書いてある言葉が“ サティのようである!”と思った!」(波多野)「隆太さんのアレンジはすごく幅広くて、クラシックからポピュラーまで、ギターソロも格好良く、揺らし方まで書いてあって、それでいて自然。信頼して、書かれたことを表現すればいいのだなと思い、集中しました」(大萩)
ギターソロ《11月のある日》《愛のロマンス》《カヴァティーナ》を聴いて納得する。大萩は趣味でギターを弾いていた母上の影響で小学生の時ギターに出会い《愛のロマンス》を弾いた。
波多野は、「『禁じられた遊び』は両親が初めてのデートで観た映画だったので、リクエストしました」。思い出のエピソードにもつながるスクリーン・ソング集は、大切な人への贈り物にしたくなる一枚だ。
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発売記念 ミニライヴ&CDサイン会
○10/28(日)15:00~ 渋谷店 7Fイベントスペース
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