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INTERVIEW | 三浦一馬(映画「ピアソラ 永遠のリベルタンゴ」広報大使)
僕をバンドネオンの世界と結びつけたピアソラにまた一歩近づきたい!

 アストル・ピアソラという人物が一本の映画に取り上げられること自体、嬉しい出来事でした。ピアソラ・ブームはヨー・ヨー・マやギドン・クレーメルらによって広まったわけですが、《リベルタンゴ》をはじめ有名曲は、未だに一般の方々にも関心を持ち続けられています。そんなピアソラのパーソナルな部分を、知られざる証言から核心へと、ピアソラの人物像に迫っていくドキュメンタリーは、とても興味深い映画でした。

 初めて聞くエピソードもありました。例えば各種伝記本で触れられる際にほんの一行で収まってしまう記述も、深くクローズアップされていて、ああこんなことだったのかと気づかされます。写真のほか、ピアソラの電話での肉声や、こういう話は絶対身内からしか出てこないよね、という遺族による証言などが登場します。その意味でピアソラ史、ピアソラ研究の資料としても非常に貴重な作品でしょう。

 僕をバンドネオンの世界と結びつけたのがピアソラの音楽です。どんどんのめり込んでしまう不思議な魅力は、未だに僕を捕えて離しません。ピアソラの音楽と出合ってから20年ほど経ちますが、ときにミステリアス、何か中毒性のある音楽という気がしてなりません。常日頃からピアソラは、音楽の中で一番大事なキーワード、フィールドです。一番多く弾いてきたピアソラ作品ですから、そのピアソラをさらに深く深く突き詰めていきたいという思いがずっとありました。

 最新CD『リベルタンゴ』を作るにあたって、普段の何倍も様々な資料から曲が作られた経緯を探り、ピアソラ本人の遺したたくさんの音源を精査しながら、プロジェクトを突き詰めていきました。僕の中で偶然にも〈深いピアソラ・イヤー〉だったわけです。そのタイミングで僕自身がピアソラに、また一歩近づけていればいいなと……。僕にとって神様みたいな存在ですから、一生涯、ピアソラにアプローチし続けることになるでしょう。 *interview & text:佐藤由美