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キース・ジャレット『Munich 2016』 ECM50周年に聴く、ソロ・ピアノ最新盤

キース・ジャレット『Munich 2016』 ECM50周年に聴く、ソロ・ピアノ最新盤

ECM50周年に聴く、キース・ジャレットのソロ・ピアノ最新盤

 いまさら言うまでもないことだが、1972年のECM第1作『Facing You』に始まるキース・ジャレットのソロ・ピアノは、マイルス・デイヴィスの許を離れて本格的にソロ・アーティストとしての活動を開始してから現在に至る、彼の音楽の変遷をたどるのに最適なフォーマットのひとつである。本作は、ジャレットが2016年7月に行ったヨーロッパ・ツアーの最終公演地である、ミュンヘンのガスタイク・フィルハーモニーで行ったソロ・コンサートを収録したものだが、彼は2017年2月15日にニューヨークのカーネギー・ホールでソロ・コンサートを開いて以降、病気療養のために活動を休止しているので、現時点ではこれが彼のソロ・ピアノが聴ける最新の音源ということになる。

KEITH JARRETT Munich 2016 ECM/ユニバーサル(2019)

 これまでの最新音源は、東京のオーチャード・ホールでのものを含む2014年のコンサートでの演奏を集めた『Creation』で、プロコフィエフやベルク、スクリャービンなどに通じるものが感じられるのは、演奏時期がこの『Munich』と近いからかもしれない。そのいっぽうで、たとえばスタンダード・トリオの 『Standards Live』 (1986年)収録の《Stella By Starlight》の長いイントロに通じる部分があったり、ほとんどあらゆる時代を通じて彼が好んで演奏するカントリー風の曲があったりして、彼のピアノ音楽が必ずしも“年齢を重ねて経験を積んだことによる進化”という、時間軸に沿った視点で単純に語れないのがおもしろい。

 実際彼は、スタンダード・トリオ結成25周年に際して行われたインタヴューでも、作品を録音年代順に発表することにはこだわっていないという趣旨の発言をしていたので、この『Munich』も最新音源という話題性はともかく、このコンサートで彼が得たインスピレイションや意識の流れをリスナーとして“新たに”追体験できるというところに価値があるように思う。

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