ヒップホップ・クルー〈KANDYTOWN〉のメンバーであり、近年再評価が進むズットズレテルズとしての活動や、あいみょん、Suchmos、Base Ball Bear、ペトロールズなどとの客演でも知られるラッパー、Ryohuがファースト・ソロ・アルバム『DEBUT』を11月25日(水)にリリース。冨田ラボ、TENDRE、荒田洸(WONK)など、Ryohuと親交の深い参加アーティストの面々も豪華なのだが、実はCDの初回限定盤に付属するEP『Collage』も豪華なのだ。

Ryohu 『DEBUT』 Victor Entertainment(2020)

『DEBUT』がSPEEDSTAR RECORDSからリリースされるということを受けて、付属EP『Collage』には“ばらの花”(くるり/2001年)、“LADY MADONNA 〜憂鬱なるスパイダー〜”(LOVE PSYCHEDELICO/2000年)、“幸せであるように”(FLYING KIDS/1990年)というSPEEDSTAR RECORDSが持つ名曲を、Ryohuが大胆にサンプリングした3曲を収録。その中から、“ばらの花”をサンプリングした楽曲“Flower”が11月4日(水)に先行配信リリースされている。

“ばらの花”と言えば、くるり7作目のシングル曲にして、後に多くの転換点を迎えるくるりの最初の転換点となったヒット・ソング。矢野顕子や奥田民生など著名アーティストが数多くカヴァーし、近年では〈相鉄都心直通記念ムービー〉の楽曲として、サカナクション“ネイティブダンサー”とのマッシュアップ曲をyui (FLOWER FLOWER)とミゾベリョウ (odol)が歌ったことでも大きな話題になった。

Ryohuはこの名曲を、『DEBUT』にもアレンジで参加しているGiorgio Blaise Givvnと共に解体して再構築。カチッとしたリズムに、あの有名なイントロを奏でるピコピコ音やギターが要所要所で顔を覗かせている。〈安心な僕らは旅に出ようぜ 思い切り泣いたり笑ったりしようぜ〉と揺れるようにサビを歌うゲスト・ヴォーカルは、これまたRyohuと親交の深いAAAMYYY。そしてRyohuのリリックは、印象的だった原曲の歌詞をところどころで引用しながらストーリーをなぞるように組み立てあり、名曲を新たな視点から描くことに成功している。

原曲がリリースされてからもうすぐ20年。〈安心な僕ら〉の距離感は近付いたかと思えば離れていくのも相変わらずで、いつまで経っても安心できる世の中は来ないけれど、この曲を聴けば、〈ああそういえば人間ってそういう生き物だったな〉とどこか甘酸っぱい気持ちを思い出すことだろう。