連載

「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」SNSの怖さ、知ってるつもり?!(クボケンの配信動画 千夜一夜:第2回 )

【クボケンの配信動画 千夜一夜】第2回

カメラマン/音楽ライターとしてロック・ヒストリーにその名を残すクボケンこと久保憲司さんの連載〈久保憲司の音楽ライターもうやめます〉が、名前を〈クボケンの配信動画 千夜一夜〉と変えてリニューアルしました。Netflixなど配信動画サーヴィスが普及し、話題作をすべて観ることが不可能な現在、寝る間を惜しんで映画やドラマを楽しんでいるというクボケンさんが、オススメ作品を解説してくれます。

2回目となる今回は、「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」を紹介。SNSが人間に与える危険な影響を、SNSの設計に関与していた当事者たちのインタビューを交えながら炙り出していくNetflixのドキュメンタリー映画です。〈SNSもうやめます〉と日々思っているというクボケンさんは、この作品を観てアカウントを削除したのか、いなか。 *Mikiki編集部

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Netflix映画『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』独占配信中

 

SNSもうやめます

見ず知らずの人が色々言ってくるのが、めんどくさくってSNSをやめようかと思っている久保憲司です。見ず知らずの人と楽しく喋るのがSNSの魅力なんですけどね。

〈監視資本主義〉なんてタイトルがついているので、中国はヤバイぞという話かと思ってたら、SNSがどういう構造になっているかのお話でした。

原題は「The Social Dilemma」、意訳するとSNSジレンマ。そのタイトル通り、まさにSNSの光と影を作った人たちが警告する内容でした。

SNS疲れ、離れしている人も多いと思うのですが、この映画を観るとその理由はこれだったのかとアハ体験できます。

 

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ピザ屋の地下に人身売買の拠点?

どういうことかと言うと、有名人の方が差別的な発言で大炎上したりしますが、あれは起こるべくして起こったことなんですね。「右と左で揉めるように、リスナーの思想に合わせてアルゴリズムを調整してきたよ」とFacebook、TwitterなどのSNSを作ってきたプログラマーや社員たちが暴露しているんです。

「そうすることによって、クリック稼げて、広告料が上がるからね」と。

そして、この映画ではそんな彼ら自身が、「これを放置していると内戦にまでなりかねない」と警告しているんです。

マジで?と思いますが、ブラック・ライヴズ・マターやアメリカ大統領選に関して、アメリカが完全に二つに分かれてしまっているような現状を見れば、そうなのかもしれないと思ってしまいます。ブラック・ライヴズ・マターを煽っているのは、アメリカを分断しようとしている中国政府の策略という陰謀論を信じている人までいますからね。

こんななかで、日本じゃそんなに有名じゃないですけど、陰謀論にハマった人が起こした大事件があるんです。〈ピザゲート事件〉というやつなんですけど、トランプとヒラリーが大統領選挙をやっているとき、共和党の支持者がヒラリーを落とそうと、〈民主党の関係者が人身売買、児童性的虐待に関与していて、民主党を支持するピザ屋さんの地下が幼児売買の拠点になっている〉というデマを広げました。それを信じたバカが、ピザ屋に子供たちを助けに銃を持って乱入したら、ピザ屋には地下がなく、その男は逮捕されたという事件があったんです。これも、こういう信じられないようなウソを信じる奴にはそういう情報ばかりを送り込んでいたと語られているのです。

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みなさんのところにもたまにこういう陰謀論めいたクズ記事が流れてくると思いますが、それをクリックや拡散していると、その人のところにはそういう記事ばっかり送るようにしているそうなんです。そして、だんだんとその人のタイムラインと僕たちのタイムラインは違ったものになり、その人はネトウヨとかヘイターとか呼ばれるような人間になっていくんだそうです。

なんか友達が突然「ユダヤ人が世界を征服している」とか言い出してくることがあるじゃないですか。これこれこういう事実で世界を征服なんてできないよと説明しても、全然理解しないじゃないですか。そういう人たちはバカなのかなと思っていたのですが、SNSのアルゴリズムで僕たちとは違った現実を生かされてしまっているのかもしれないのです。

 

インターネットは夢の国じゃなかった

洗脳? いやまさかそんなね。でも大統領選挙の時にFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグが、ロシア疑惑に関わったんじゃないかと疑われて公聴会に呼ばれた際、ずっと不安そうな顔をしていたんです。それってこれが原因だったんだなと。

政治家の方たちはアルゴリズムのことを全くわかっていなかったので、「ビッグ・データをロシアに売ったり、渡したりしたのか?」という質問ばかりしていました。だから彼は別に嘘をつくこともなく「違います、違います」と言い続けていられたんです。

自分たちの商売のネタ、ビッグ・データを渡すはずなんかないんですよ。Facebookはユーザーごとのアルゴリズムを操作して、彼らがたくさんクリックするようにし、それで自分たちに広告料がたくさん入るようにしていただけです。Facebookはデマだとわかっていてもフェイク・ニュースを放置し、それをわかっているロシアは反ヒラリーのフェイク・ニュースを量産し、自分たちの有利になる大統領を当選させようとしたんです。他の国が、自国の大統領の選挙に影響を与えてしまっていたのです。ここに関して質問されると「アルゴリズムを操作してました」と答えるしかないので、あんなに不安そうだったのでしょう。アルゴリズムを操作することは違法じゃないですけど、Facebookの信用は地に落ちてしまいます。

今アメリカが中国のアプリを規制しようとしているのもこれなんですよね。他の国が自分たちの選挙や政治に影響を与える可能性があるからなんですよね。

じゃあどうすればいいかと言うと、オチを言ってしまいますが、「アルゴリズムを操作することを規制するしかない」と言ってます。

僕もそうだと思います。インターネットの世界は夢の国だと思ってたんですけど、やっぱり普通の世界と変わらないんです。いろいろルールを作って規制し、自分たちの理想の国を作っていかなければならないのです。そんなことを考えさせてくれるドキュメンタリーでした。

SNSをやめようと思っている前に、まずはこのドキュメンタリーを観ることをオススメします。SNSのなかでどういうことが行われているのかを理解できたら、またSNSを楽しめるようになるかもしれませんよ。