カメラマン/音楽ライターとしてロック・ヒストリーにその名を残すクボケンこと久保憲司さんの連載〈クボケンの配信動画 千夜一夜〉。Netflixなど動画配信サーヴィスが普及した現在、寝る間を惜しんで映画やドラマを楽しんでいるというクボケンさんが、オススメ作品を解説してくれます。

今回採り上げるのは、ディズニーの定額制公式動画配信サーヴィス〈Disney+(ディズニープラス)〉にて配信されている、ピクサー製作のアニメ―ション映画「ソウルフル・ワールド」。第93回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞するなど、たいへん高い評価を受けている作品です。この映画では、ジャズ・ミュージシャンを夢見ながら音楽教師をしている主人公のソウル(魂)世界への旅路を通じて、魂とはなにか、人の心の動きとはどんなものかを考えていきます。クボケンさんは、本作を観て〈音楽を聴くと楽しくなる理由〉が少しわかったそう。いつになくソウルフルに紹介してくれました。 *Mikiki編集部

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『ソウルフル・ワールド』© 2021 Disney/Pixar ディズニープラスで配信中

 

音楽でトランスするのはどうしてか

〈魂なんてない〉と思っていた久保憲司です。

ピクサー最新作「ソウルフル・ワールド」は魂についてのお話です。

アカデミー長編アニメ映画賞を受賞したんですが、コロナ禍の影響で劇場公開ができずに配信だけの作品となってしまいましたので紹介したいと思います。

監督は「モンスターズ・インク」(2001年)のピート・ドクター。彼の前作「インサイド・ヘッド」(2015年)は脳の仕組みをとってもうまく解説してくれたんですが、今回は魂かよと思ってしまいました。

なぜかというと、初めに書いたように魂なんかないと思っていたからです。いや違います、タイトルが「ソウルフル・ワールド」なので、最初はディズニーが黒人音楽とはどんな音楽なのかを解説してくれる、ソウル・ミュージックを通して黒人の歴史を振り返るような映画だと勘違いしていたのです。観はじめて、なんかすごい話だな、あっこれ「インサイド・ヘッド」の続きみたいな映画なんだと気づいたのです。

〈なんだ、音楽の話じゃないのか〉と、観るのをやめようとしている人、ちょっと待ってください。音楽とすごく関係してます。主人公はジャズのピアニストを目指している人なんです。そして、彼が演奏中にトランスしたりするんですが、それがどういう現象なのか、なんとなくわかるように描かれているんです。

この映画で一番大事なことの一つは(劇中内で大事なことがいくつも語られます)、なぜ僕らは音楽を聴いて楽しむのだろう、そして音楽を聴いている時や演奏している時にトランスするのはなぜなんだろう、と教えてくれることなんです。

そして、そんなことに夢中になりすぎると、どうなってしまうかということも語られています。

 

『ソウルフル・ワールド』© 2021 Disney/Pixar ディズニープラスで配信中