1. 出身地と音楽活動を始めたきっかけ(バンドであれば結成のいきさつ)について教えてください。
「宮崎出身です。
New oil dealsという愉快なHIPHOPバンドでMCをしつつ、BOATという愉快なコレクティブにも所属しささやかに制作しつつ、時折文章を書きながら暮らしています。
日本語ラップの文学性、韻文としての面白さに気づいてからというもの、歌詞を写経する十代を過ごしていましたが、ふとした拍子に自作し、披露し、いつからかラッパーになっていました」
2. 現在の音楽性に影響を与えたと思うアーティストや楽曲は?
THA BLUE HERB “路上”
「ストーリーテリングの楽曲として、これを駕するものを見つけ切れていないです。
伏線の回収も映像的であり、その情景描写の巧みさに衝撃を受けました」
路上 最後のシャッターが閉まる音
娼婦がレストランの窓を覗き込み
客にもらった
治らない風邪にせきこむ
ごほっ ごほっと重く 路上
小林大吾 “棘”
「言い回しのひとつひとつが回りくどく、それでいて詩的で、他では聞けない比喩。
彼が小説家やコラムニストだったとしても、きっと僕は彼に注目していたと思います」
営団地下鉄エドガー橋駅
A1出口で見掛けた生まれつき後足の片方がない猫は
すれ違う四本足を多すぎやしないかと不思議そうに眺める
3. 今回TOWER DOORSで紹介した曲はどんなふうに生まれた曲で、どんなことを表現していますか?
“ワラライフ”
「今回は人生のチャプター1のエンディング曲をイメージしています。
明確に、人生のチャプター1が終わる、その予感を感じたのが1年と数か月前。
〈ミュージカルの最後の曲っぽさ〉と“ワラライフ”というタイトルだけがイメージにあり、それを見事に具現化したビートをmots氏が生み出してくれました。
それから納得のいく歌詞が出来るまで半年ほど。
聞き心地よりもまず、第一に読み物として完成させたかった。
チャプター1の終了とほぼ同時にリリースできて感激もひとしお。
フランクシナトラの“ザッツライフ”や、デビーレイノルズの歌う“シンギングザレイン”にインスパイアされています。
トラジコメディな人生ですが、全てはいずれ回収される伏線だといいです」
4. 交流のあるアーティストでいま注目しているのは?
「BOATメンバーの創作物は毎回ユニークなので全員で注目される未来が来ると良いなと思います。
motsさんのビートは立体感がありどれを聞いてもラップ欲が掻き立てられます。今回の曲でコーラスを入れてくれたマコトコンドウ君の楽曲もセンス抜群で、あらゆる日常に普遍的に溶け込むような、そんなポテンシャルを感じます」
5. TOWER DOORSは新しい音楽との出会いを提供することをコンセプトとするメディアですが、あなたが最近出会った新しい音楽は?
「新しい、かどうかは微妙ですが去年末にリリースされた環ROY氏のアルバム『Anyways』は独創的で、聞いたことのないHIPHOPでした。キャッチーだけどHIPHOPが希釈されていない。
色んな人の耳に馴染むと思います」
6. ライブやリリースといった今後の活動や、やってみたいことなど、これからの展望について教えてください。
「文章を書くことが好きです。
少しずつ作詞のお仕事など頂いてますが、自分の制作と同様にそちらも忙しくなると嬉しいです」
toddy(185)のリリックのストーリー性や面白さ、温かみは、日本語ラップの歌詞を〈写経〉していたことやTHA BLUE HERBなどからの影響によるものなのでしょうね。サイプレス上野やPUNPEEのような自然体で愛嬌たっぷりのラッパーたちに通じるものをtoddy(185)には感じます。今後ラッパーとしてどんな活躍を見せてくれるのか、とても楽しみです。
また、質問の回答には“ワラライフ”のダンサンブルでドープなトラックを手掛けた福岡のビートメイカー・motsにも触れられていました。TOWER DOORSでは彼がflasstainと組んだ楽曲“HB”も聴けますので、 “ワラライフ”のビートを気に入ったリスナーはこちらもぜひチェックしてみてください。