先頃開催された記者会見の模様。
左より、神奈川芸術文化財団芸術総監督であり作曲家・ピアニストの一柳慧、笙演奏家の宮田まゆみ、
指揮者の現田茂夫、KAAT神奈川芸術劇場アーティスティック・スーパーバイザーの白井晃
撮影:西野正将

 

メモリアル・イヤーを飾る神奈川発、一大芸術フェスティバル

 神奈川県民ホール・KAAT神奈川芸術劇場・神奈川県立音楽堂の3館を主会場に開催される、神奈川発の一大芸術祭『神奈川国際芸術フェスティバル』。独自性ある芸術作品の創造・発信を目的に、国際色豊かなステージを繰り広げ注目を集めてきた。

 第21回目の開催を迎える今年は、神奈川県民ホール開館40周年、神奈川県立音楽堂開館60周年、そしてKAAT神奈川芸術劇場の白井晃アーティスティック・スーパーバイザー就任と、3館あげてのメモリアル・イヤー。この大きな節目を祝し、ラインナップも計13演目という例年を上回る力の入った展開に。フェスの期間は10月5日から12月6日までの2ヶ月間。秋の開幕を前に先頃開かれた記者会見には、芸術総監督の一柳慧、KAAT神奈川芸術劇場アーティスティック・スーパーバイザーの白井晃らが登壇。プログラムの詳細が発表された。

 

交響曲とバレエで祝う! 開館40周年・神奈川県民ホール

 フェスティバルの幕開けを飾るのは、10月5日に神奈川県民ホールで開催される『マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」』。1975年、全国屈指の大型文化施設として誕生し、以来15,000のステージと2,500万人の来場者を迎えてきた神奈川県民ホール。現在は10月のリニューアルオープンに向け改修工事が進められており、本作は開館40周年記念およびリニューアル後初のお披露目公演となる。ステージには神奈川フィル名誉指揮者の現田茂夫をはじめ、横山恵子菅英三子水口聡など日本を代表するソリスト8組まで、現在望みうる最高の布陣が集結。さらに500名以上に及ぶ県民参加の特別合唱団も加わり、かつてない壮大なスケールでフェスの開幕を祝う。

 続いて11月には、東京バレエ団プリンシパル・上野水香による初プロデュース公演『Jewels from MIZUKA ジュエルズ フロム ミズカ』を開催。本作の上演に際し、自身神奈川県出身であり、「かながわ観光親善大使」も務める上野自らダンサーにオファー。出演は今年8月に東京バレエ団アーティスティック・アドバイザーに就任するウラジーミル・マラーホフや、ルイジ・ボニーノといった国際的スター・ダンサーに、吉岡美佳木村和夫高木綾ら東京バレエ団のトップ・ダンサーが上野のもとに集い、煌めきのバレエ・ガラを繰り広げる。

 

豪華6作品を上演! KAAT神奈川芸術劇場

 KAAT神奈川芸術劇場では、演劇からダンス、古典芸能、アートサーカスまで、多彩なジャンルを網羅した6演目をラインナップ。

 トップバッターは、悪魔のしるし×KAAT『わが父、ジャコメッティ』。ジャコメッティのモデルを経験した哲学者・矢内原伊作の記したテキストをもとに、演劇的構築を試みる実験作だ。悪魔のしるし主宰・危口統之と、その実父である洋画家の木口敬三が舞台に立ち、父と子の関係性を通し物語を紡ぎ出す。

 ダンス作品『DEDICATED』は、世界的ダンサー・首藤康之がKAAT開館の2011年に立ち上げた人気シリーズ。第3弾となる今回は、“OTHERS(他者)”をテーマに2作品を発表する。まずは、J.P.サルトル戯曲をモチーフに白井晃が構成・演出を行う新作『出口なし』。出演は首藤とダンスパートナーの中村恩恵、女優のりょう。白井がダンス作品を手掛けるのは本作が初となり、3者とのコラボレーションに期待がかかる。同時上演は、2011年に大スタジオで初演を迎えた、小野寺修二構成・演出による首藤のソロ作品『ジキル&ハイド』。ホール用に再構成した新版で、さらなる魅力をみせつける。

 古典芸能からは、女流義太夫竹本駒之助が登場。KAAT竹本駒之助公演シリーズ第三弾として、『「恨鮫鞘」無筆書置の段』を披露する。上演機会の少ない稀少曲であり難曲に、人間国宝の竹本駒之助が取り組む本シリーズ。この機会にぜひ堪能したい。

 アートサーカス『TRACES』は、シルク・ド・ソレイユ出身の7人で結成されたカンパニー・7Fingersによる異色作。伝統のアクロバティックな技はもちろん、演劇やコンテンポラリー・ダンス、生演奏まで盛り込んだ圧巻のステージで観客を釘付けに。これまで世界25カ国・200都市で1600回に渡り上演を繰り返し、延べ900,000人を動員してきた超話題作が、いよいよ神奈川でその全貌をあらわにする。

【参考動画】7Fingers「TRACES」パフォーマンス映像

 

 演劇からはもう一作、『ジャンヌ・ダルク』を上演。主人公のジャンヌ・ダルクを演じるのは、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』でブレイクした新進女優の有村架純。本作は彼女の初舞台・初主演作品となり、注目が予想されるところ。また、ジャンヌ・ダルクの運命を左右するフランス王・シャルル7世には東山紀之を配役。演出は白井晃、脚本は劇団☆新感線中島かずきが手掛けている。

【参考動画】舞台「ジャンヌ・ダルク」PV

 

 さらに年末には、スペイン国立ダンスカンパニーが、元パリ・オペラ座エトワールのジョゼ・マルティネズを芸術監督に迎えて以来初の来日公演を実現。今回はイリ・キリアンオハッド・ナハリン、日本初紹介となるイジック・ガリーリ振付作など、コンテンポラリーの名作5作品の一挙上演を果たす。なかでも見逃せないのが、マルティネズの振付作『天井桟敷の人々』本公演用特別改訂バージョン。珠玉の演目がズラリと並び、ダンス・ファン垂涎のステージとなりそうだ。

 

“還暦”を迎えた名門ホール 神奈川県立音楽堂

 1954年、公立施設では日本初の本格的な音楽専用ホールとして誕生した神奈川県立音楽堂。戦後モダニズム建築の祖・前川國男が最高の音響効果を目指し作り上げたホールは、開館当時『東洋一の響き』といわれ世界中から称賛された。壁面は全て木で覆われ、そのアコースティックな響きと温もりは現在もなお内外の音楽ファンから高い支持を集めている。 “還暦”を迎える今年、フェスは仏教儀式で僧侶たちにより伝えられてきた声楽・聲明からスタート。演目の『四箇法要』は、唄、散華、梵音、錫杖の4曲からなる記録に残る日本最古の聲明曲。天台・真言両宗派の僧侶30名がその鍛え上げた声で、ホール中を荘厳かつ幻想の響きで満たしてゆく。

 クラシックの目玉は、気鋭の指揮者・篠崎靖男×神奈川フィルハーモニー管弦楽団による『60周年記念オーケストラ・コンサート』。楽曲には一柳慧の『マリンバ協奏曲』やストラヴィンスキーの『火の鳥』など、音楽堂が歴史を刻んできた20世紀の4作品をラインナップ。また笙演奏の第一人者・宮田まゆみにパーカッショニストの加藤訓子も加わり、神奈川フィルと協演を果たすのも見所のひとつ。

 しめくくりは、世界的コントラルト歌手であり現代を代表する音楽家のひとり、ナタリー・シュトゥッツマンを迎えリサイタルを開催。彼女の20年来のパートナー、インゲル・ゼーデルグレンのピアノと共に、絶妙のアンサンブルを奏で上げる。その他、世界のマエストロ・大野和士によるオペラ・レクチャーコンサートや、音楽堂建築見学会といった特別企画も用意。音楽堂の歴史と魅力を改めて紹介し、その可能性と展望を広く伝えてゆく。

 コンサートにダンス、演劇、古典芸能と、豪華プログラムで贈る一大フェス。芸術の街・神奈川の地で、この秋心震わす感動との出逢いを愉しみたい。

 


 

神奈川県民ホール開館40周年 神奈川県立音楽堂開館60周年 記念 
第21回神奈川国際芸術フェスティバル 祝祭 円熟の未来へ

10/5(日)~12/6(土)
www.kanagawa-arts.or.jp/21kiaf/

 

□神奈川県民ホール

現田茂夫 (C)三浦興一

 

マーラー:交響曲第8 番「千人の交響曲」
10 .5(日)  15:00
出演:現田茂夫(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)ほか

 

上野水香 (C)Shitomichi Ito

 

上野水香プロデュースバレエ
「Jewels from MIZUKA」
11.29(土)  15:00
出演:上野水香/ウラジーミル・マラーホフ/ルイジ・ボニーノ/吉岡美佳、柄本弾 ほか

 

 

□KAAT 神奈川芸術劇場

 

悪魔のしるし×KAAT
「わが父、ジャコメッティ」
10.11(土) 13:00/18:00 10.12(日)13:00/18:00 10.13(月・祝)13:00
作・演出:危口統之

 

 

 
 photo Tadashi Okochi

 

DEDICATED2014 OTHERS
10.24(金)19:30 10.25(土)15:00 10.26(日)15:00
【Jekyll & Hyde「ジキル&ハイド」】
構成・演出:小野寺修二  原作:R.L.スティーブンソン 出演:首藤 康之
【Huis clos 「出口なし」】
構成・演出:白井晃 原作:J.P.サルトル 出演:首藤 康之 中村恩恵 りょう

 

 

撮影:西野正将

 

KAAT 竹本駒之助公演

『恨鮫鞘』「無筆書置の段」
10 .26(日) 10.27(月) 15:00
出演:竹本駒之助(たけもと こまのすけ/女流義太夫 太夫) 鶴澤津賀寿(つるざわ つがじゅ/女流義太夫 三味線)ほか

 

 

Traces  PHOTOS BY JOHN GANUN, CYRUS McCRIMMON

 

7 Fingers「TRACES」
10.31(金) 19:00 11.1(土) 13:00/17:00
11.2(日) 13:00/17:00 11.3(月・休) 13:00
出演:7Fingers(セブンフィンガーズ)

 

 

 

ジャンヌ・ダルク
11.23(日) 13:00 11.24(月・休)13:00
演出:白井 晃 脚本:中島かずき
音楽:三宅 純 原案・監修:佐藤賢一
出演:有村架純 東山紀之 ほか

 

 

 

スペイン国立ダンスカンパニー
12.5(金)19:00 12.6(土)15:00
『堕ちた天使』振付:イリ・キリアン  『ヘルマン・シュメルマン』 振付:ウィリアム・フォーサイス
『マイナス16』 振付:オハッド・ナハリン  『天井桟敷の人々』より 振付:ジョゼ・マルティネズ
『Sub』振付:イジック・ガリーリ

 

 

□神奈川県立音楽堂

photo 青柳聡

 

音楽堂で聴く聲明
11 .3(月・祝) 15:00
出演 :声明の会千年の聲〈天台聲明:七聲会 真言聲明:迦陵頻伽聲明研究会

 

 

photo 青柳聡

 

大野和士のオペラ・レクチャーコンサート
11 .4(火)(月・祝) 18:30
出演 :大野和士(レクチャーとピアノ)林正子(ソプラノ)及川尚志(テノール)河野克典(バリトン)ほか

 

 

photo 青柳聡

 

音楽堂建築見学会-特別編
11 .5(水)14:00
出演 :藤森照信(建築史家)、内藤廣(建築家)、松隈洋(建築史家)、仲道郁代(ピアノ)、日向ひまわり(講談) ほか

 

 

(C)michiyuki ohba

 

60 周年記念オーケストラ・コンサート
11 .9(日)15:00
出演 :篠崎靖男(指揮)神奈川フィルハーモニー管弦楽団(管弦楽)宮田まゆみ(笙)加藤訓子(マリンバ) ※篠崎の崎は山へんに立と可

 

 

(C)Simon Fowler

 

ナタリー・シュトゥッツマン コントラルト・リサイタル
11 .22(土)15:00
出演 :ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト) インゲル・ゼーデルグレン(ピアノ)

 

●お申込み チケットかながわ www.kanagawa-arts.or.jp/tc/