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Pat Metheny

PAT METHENY 『Road To The Sun』 Modern Recordings(2021)

パット・メセニーが、Modern Recordingsで契約後初めて放った異色作『Road To Tthe Sun』。ここではメセニーはほぼ演奏せず、全員グラミー賞受賞歴を持つクラシック出身のギタリストたち、ジェイソン・ヴィオーと4人のギタリストからなるロサンゼルス・ギター・カルテットが、それぞれ組曲“Four Paths Of Light”、“Road To The Sun”を弾く。クラシックの印象派やフラメンコ、ショーロ、サンバ、ジャズを血肉化し、もはや彼の音楽としか形容できない〈作曲家〉メセニーの鮮烈なハーモニー感覚とリズム感覚が、最高峰のクラシックギタリストたちによって解釈される。細部の瞬間的きらめき、長尺に渡る交響楽とも言える構成感、つまり彼の音楽性の質量が、他人の演奏を介すことによって驚きをもって体感できる。

 

Craig Armstrong

CRAIG ARMSTRONG 『The Edge Of The Sea』 Modern Recordings(2020)

以前より交流のあった作曲家クレイグ・アームストロングと歌手カルム・マーティンによる『The Edge Of The Sea』は、古代性を有しながら絶滅の危機にある、スコットランド西岸に位置するアウター・ヘブリディーズ諸島の文化に焦点を当て、シャン・ノースと称されるゲール語の古代歌唱の現代的な蘇生に挑む。スコティッシュ・アンサンブルによる弦の絶妙なドローンと民族的詠唱法の有機的結合が、立体的音像感とともに島と岩礁からなる壮大な自然のスピリチュアルなランドスケープを喚起する。

 

Robot Koch

ROBOT KOCH 『The Next Billion Years』 Modern Recordings(2020)

生のオーケストラと電子音楽の融合。ありがちな表現だが、エレクトロニック的音色設計が巧みなロボット・コックと指揮者クリスチャン・ヤルヴィが恊働すると、その確度は俄然と深まる。電子音ビートのパルスに立ち上がりの遅い弦がどのように呼応していくか、IDMを想起させるようなポルタメントの効いた電子音にオーケストラはどう融合するか、可能性は無限に存在する。そこに大量生産的なハリウッド映画音楽にない細部の充実がある。

 

Meredi

メレディはアルメニア出身で映画音楽も学んだ作曲家/ピアニスト。ソロ・ピアノの世界こそシンプルな音型の組み合わせにセンスが問われるが、音色の精妙なコントロール、ちょっとした装飾音、音域の使い分けによるダイナミズム表現が巧みだ。エレクトロニックミュージックを経た、遠近感ある繊細なミックスやドローンの味付けがスパイスとなり、幸福な余韻を残す。