ある日突然SoundCloudに現れ、その音のみならず、本人のTwitter芸人的な側面も相まって一部で話題になった、〈大学でバンドを組み損なったので宅録を始めた〉イエナガによるソロ・ユニットcolormal。その音楽性は、本人も影響を公言しているGRAPEVINEやMr.Childrenなどにどこか似ているような、それでいて圧倒的なオリジナリティーとキラキラした美しさと変態さが同居したものだった。当初はライブ活動をする予定はなかったはずが、今や自主企画ライブを開催するまでになり、その間には君島大空や笹川真生、パソコン音楽クラブ、ラブリーサマーちゃん、For Tracy Hydeといった今をときめくアーティストとも共演。そしてついには今年、ライブでのサポート・メンバーだった、やささく。(ギター)、マツヤマ(ベース)、田井中(ドラムス)を加えてバンドになることを発表したのは既報の通りだ。
そんな4人になったcolormalが、初音源『losstime EP』をサプライズ・リリース。ソロ時代の名曲“さまよう”の新ヴァージョンや、これまでライブで披露してきた曲たちが収録されているが、それらには新たなアレンジが施されており、4人の音が塊になって迫ってくる時の圧力はソロとは全く異なるものだ。特に、一見イエナガの歌声とマッチしなくてもおかしくはなさそうなマツヤマの荒れ狂う轟音歪みベースがバンドの肝になっていて、イエナガの声とギター、美しく技巧的な部分と感情爆発的な部分を巧みに使い分けるやささく。のギター、常に堅実なプレイでボトムを支える田井中のドラムスを、うまく包んで繋げるポリグリップ的存在になっているように感じる。
美しい幕開けの6/8拍子“1995”、ソロ時代から劇的な変貌を遂げたリード曲“さまよう”、イエナガらしい甘く切ない世界観に誘い込まれる“ジャンクパーツ”と名曲ぞろいだが、特に、様々な表情を見せるラストの組曲的ナンバー“延命”は必聴。腐った2021年に明かりを灯すアンセムだ。なるほど、だからイエナガはバンドを組んだのか? そんなことを考えずにはいられない、バンドに大きな期待を寄せるEPが誕生した。