
いろいろな〈破壊〉
そうしたライヴ活動と並行して、音源リリースの面では昨年の“STORY OF DUTY”を皮切りに配信シングルを連発。ハシヤスメ・アツコ主演ドラマ「ボクとツチノ娘の1ヶ月」主題歌だったハートフルな“STAR”、TVドラマ「レンアイ漫画家」OPテーマの“ZENSHiN ZENREi”、TVアニメ「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」のOPテーマ“in case...”と強力なタイアップ曲が続き、今回のニュー・アルバム『GOiNG TO DESTRUCTiON』にはそれらが網羅されている。前のフル・アルバム『CARROTS and STiCKS』が〈二面性〉を表現した作品だったのに対し、今回の新作が掲げるのは〈破壊〉だ。
チッチ「〈破壊〉にもいろんな捉え方があって、人によってまったく違うと思って。〈破壊〉から生まれる優しさもあれば、〈破壊〉から生まれる悲しみもあるし、怖いから〈破壊〉に向かえない気持ちもあるし……それが凄く人間味のある感じで描かれてて、メンバー作詞も凄いバラバラな感情の表し方で〈同じテーマなのに、こんなに違うんだ〉って思ったり、何か不思議な一枚というか。凄く意思のある曲たちばかりだし、とにかくサウンドがカッコ良くて、いまBiSHが聴いてほしい曲で詰まってるアルバムです」
なかでもリード曲という位置付けになるのが“STACKiNG”と“BE READY”の2曲。先頃MVが公開された“STACKiNG”は、アニメ「キングダム」第3シリーズの第2クールでオープニングを飾る強力なナンバー。竜宮寺育の作詞には“サラバかな”を想起するような言い回しも垣間見える。
アイナ「その人はちょっと難しい言葉が好きなのかなっていう印象があるんですけど(笑)、私は個人的にサビの歌詞が好きです。たくさんの声があるなかでも守りたいものが明確に本当はあって、何よりもそれを大切にしていく。ホント簡単なことを難しい言葉で言ってて、そこのジレンマみたいなとこが、私がいちばん好きなところなので、振付けも歌詞に沿ってわりと難しくしました。てんやわんやになりつつ、みんなでがんばってMVも撮ったので、トータルで力作になったなって思ってます」
チッチ「“BE READY”は“STACKiNG”とはまた全然違う世界観で。ちょっと前にアイナが振付けしてくれたので、この振付けも込みで早くライヴで観てほしいです」
アイナ「最近は有観客でもひとつ席を空けてライヴするじゃないですか。BiSHはみんなで踊れるようにサビの振付けを肩から上で作るんですけど、いまは横も使えると思って、サビで手を横に広げる振りなんで、〈みんなで手を広げましょう〉って思ってます(笑)」
チッチ「あと、これは妖怪、化け物をテーマにした歌詞で、私たちが最初に歌った“BiSH-星が瞬く夜に-”で自分たちのことを〈化け物〉って表現してるのとリンクしてる感じもします。こうして一緒に6人歩いてきて、強くなってきた化け物たちが歌うから届くんじゃないかなって思える曲ですね」
今回もサウンド・プロデュースはもちろん松隈ケンタ。総じて〈オープニングテーマ〉感の強いヒロイックで勇ましい直球のBiSH節が、アルバム全体の雰囲気をドラマティックに特徴づけている。一方で、さまざまな〈破壊〉に着想を得た新録曲もそれぞれ印象的で、オープニングの“CAN WE STiLL BE??”から獰猛な歌心が鮮やかな印象を残していくはずだ。
リンリン「“CAN WE STiLL BE??”は新曲のなかでいちばん最初に録った曲で。私の中で〈破壊〉は再生の周期の始まりなので、自分の歌の苦手意識も一回捨てて、壊して、挑戦してみようって思って。ライヴ感が出るように全部使い切ってレコーディングした、その1曲目がこれでした。ちゃんと松隈さんのディレクションもあったんですけど、〈好きに歌っていいよ〉って言ってもらえたので好きなように歌って、松隈さんが大爆笑しながら楽しく録ってくれたので(笑)、曲としても、自分が挑戦できたこととしても、気に入ってる一曲です」

さらに、メンバー各々の作詞曲ではそれぞれの角度から〈破壊〉が表現されている。
モモコ「『GOiNG TO DESTRUCTiON』には、いままでの振り返りも含め、〈完成しきったように見えるBiSHだからこそ一回破壊しろ〉みたいな意味合いもこもってるのかな?みたいなことを自分で考えて、作詞させていただいた“WiTH YOU”では、ちょっとBiSHを振り返って、また歩き出せるような、応援ソングみたいな感じのことを書きました。だから破壊したいけど、ホントに自分が守りたいものとか自分が持つべきものは何かというのを、グループを通して考えて、書かせていただきました。自分的には尖った歌詞を書いたつもりだったんですけど(笑)、出来上がって聴いてみたら、ちょっと切ない、可愛い感じの曲になって。ドカンッていう〈破壊〉の曲が続くなかで、パチッて泡が弾けるような曲になったなと思って」
アイナ「私が作詞した“NATURAL BORN LOVERS”は、ストリングスがいっぱい入ってて、アルバムの中でも耳触りが重めの曲ですね。作詞したのは最近なんですけど、いままで自分が見えてなかった苦しみとかを目の当たりにして周りのことをよく見るようになったし、もっと人に優しくならなきゃいけないって思って。明日もし地球が破壊されるとしたら、回りくどい言葉でいがみ合うよりかは、〈好き〉とか〈ありがとう〉〈大切だよ〉とか、わかりやすい言葉で伝えていけば優しい世界になるのかなと思って書きました。世界が終わる時に〈月が綺麗ですね〉とか言わないなと思って、直球な言葉を選びました」
チッチ「私は“狂う狂う”を作詞したんですけど、曲を聴いた時にBiSHにないサウンドでめっちゃおもろいなって印象があって。たぶんアルバムには良い曲がきっとたくさんあるって思ってたんで、これは自分なりの脱法ソングというか(笑)、気負いなく聴いてもらえる曲かなと思って書きました。真面目にやるのは当たり前なんですけど、そのなかで不真面目なことが正解になる時もあるじゃないですか。いま世の中にめっちゃいろんな情報とかがあって惑わされるけど、そういうのにコントロールされるくらいなら仲間とバカ笑いしたり、〈ダメなこととかしてみてもいいんじゃない?〉みたいなことを書いてます。〈狂う狂う〉って歌うところはスパイスみたいにいろんな声が混ざってて、アイナとかあっちゃん(ハシヤスメ)がおもしろい声で歌ってたりするんで、そこがスパイスカレーみたいで凄く好きなんですよ(笑)」
その他にもファニーな“I have no idea.”や壮大なスケールで迫る“MY WAY”、アユニ・D作詞のヘヴィーな“Beginning, End and Beginning”、エモーショナルな“BROKEN”など多彩な楽曲が充実の内容を約束してくれる。今後のBiSHは恒例のフリーライヴ〈TOKYO BiSH SHiNE 7〉開催も決定し、各地のフェス出演も含め、さまざまな予定が目白押しな模様。個々の活動も目覚ましい6人だが、グループとしての下半期にも期待してやまない。
リンリン「今年はフェスもありそうなので、暑さに負けず、夏が早く過ぎるように夢中になりたいです」
モモコ「去年の〈TBS6〉は無観客だったけど、今年はたぶん有観客になると思うので、やっとBiSHの風物詩がちゃんと戻ってくるんじゃないかなと思って楽しみです」
アイナ「新曲をできる機会も増えていくので、良かったらアルバムを聴いて楽しみに待っていてほしいです」
チッチ「『GOiNG TO DESTRUCTiON』を引っ提げて行ける場所が多くなると思うので、これを武器にして、いろんな場所でBiSHらしく戦っていきたいです。下半期もメンバーの一人一人が楽しんでやれればいいなと思うけど(笑)、でも本気でやっていくので、見ててほしいですね」
BiSHの近作。
左から、2020年作『LETTERS』、ベスト盤『FOR LiVE -BiSH BEST-』、2019年作『CARROTS and STiCKS』(すべてavex trax)
BiSHが参加した〈5G〉関連作品。
左から、2020年の9mm Parabellum Bulletのトリビュート盤『CHAOSMOLOGY』(コロムビア)、2020年作『サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ』(ビクター)、アイナ・ジ・エンドが客演した東京スカパラダイスオーケストラの2021年作『SKA=ALMIGHTY』(cutting edge)
左から、ニルヴァーナの94年作『MTV Unplugged In New York』(Geffen)、デヴィッド・ボウイの70年作『The Man Who Sold The World』(Philips)
BiSHのライヴ映像作品。
左から、「TOKYO BiSH SHiNE6」「REBOOT BiSH」(共にavex trax)
このたびリリースされたPEDROの映像作品。
左から、日本武道館ワンマンの模様を収めた「生活と記憶」、ドキュメンタリー作品「SKYFISH GIRL -THE MOVIE-」(共にユニバーサル)